215.死線の先に
「う、おおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
ついに銃が使えなくなった。
無理すればまだ使えるだろう。でもこれで使い潰すと今後はもう二度とこの戦法が使えなくなる。
恐らくまだまだ必要になるはずだ。
ヘファイストスのおっさんが銃分解して作ってみるとか言ってたけど作れるかどうかも分からない。だからこの60個のレーザー銃は貴重な俺の戦力なのだ。
冷却させるしか無い。その間白兵戦をするしか手が無いのだ。
ルースさんに鎌を手渡し、後衛をお願いする。
神聖技が使えずとも天使が広範囲武器を持ったならそれなりに幽霊特攻できるだろ。
レベルも上がってるはずだから数撃で倒せるはず。
つまり、俺は三節棍使って戦うしかねぇ訳だ。
くっそ、もっと武器入手しとくんだった。
この先も必要になるだろうし、ここでいくつか買いこんでやるっ。
ぶんっと振り回す三節棍。ナースの頭に激突して盛大に揺らぐナース。顔部分が深淵になってるので痛がってるかどうかは分からないんだが、まァ効いてるっぽいので大丈夫。
そのまま返す一撃で胴を薙ぐ。
フォォォォォッ、アチャーっ、とかやりたくなるが、今はダメだ。
クソ、さっきまで一体づつだったのに、急に大量に来だしたぞ!?
このままじゃ……
「マネージャーさん、アカズさんチームと合流したわ!」
「私も見て来た。皆こっち向かってるわよヒロキ!」
ディーネさんとメリーさんが嬉しそうに告げる。
でも、彼女らが辿りつくまで持ちそうにない。
やはり接近戦になったからかたまに掠りダメージが入ってくる。
掠りっつても俺の体力五分の一くらい削ってくるけどなっ。
「仕方ない、ルースさん後ろを頼む、サユキさんと自分の警護優先だ!」
「りょ、了解っす」
「妖精さん、済まないけどもうひと踏ん張り、応援お願い」
「し、仕方ないわねヒロキったら。私の応援でも欲しいって、もう、ったくもう、私が居ないとダメなんだから」
「ちょっと、妖精、あんたの応援より私の応援の方が効果あるわよ、ヒロキ、そうよね!?」
「なんでメリーさんが張りあってるの!? 今そんな場合じゃないですよね!?」
「煩い、とにかく応援してあげるって言ってんのよ!」
「マネージャーさんがんばれーっ」
三人からのエールに押されるように、気合を入れて敵を撃破して行く。
徐々に部屋から押し出し、そのまま通路に躍り出る。
「ルースさんサユキさん大丈夫そう?」
「なんとかいけそうっす!」
「妖精さんたちはルースさん達の現状もたまに教えてくれ。とにかく血路を開く、ハナコさん達が来やすいように、こちらからも近づくぞ皆!!」
もはや待つ時間は終わりだ。
とにかく前へ。合流するために前にでる。
しかし、向こうも必死なのか、急に攻め寄せる幽霊の数が増えだした。
一対一でも十分過ぎる強さなのに、それが多方面から来るようになったら……
「やべっ」
「ヒロキッ!?」
油断したつもりは無かった。
三節棍を一体のナースに持たれ、攻撃が止められる。
咄嗟に殴り飛ばしたものの、隣から来たナースに腕を掴まれ引っ張られた。
後はもう、別のナースに腕を取られて攻撃が殺された。
正面のナースが襲いかかってくる。
ここ、までか……
「しゃがめ」
不意に綺麗な女性の声が聞こえた気がした。
咄嗟に両足を浮かせて体重をナース達にあずけるようにして体を沈める。
急に俺、という重石が生まれたことでナース達がバランスを崩す。そこへ……
銀閃が煌めいた。
ナース達の首が一瞬で消え失せ、その体も消失する。
地面に足がついたので顔を上げて周囲の危険を調べ……ひぃ!?
目の前に女性の顔があった。
ちょっときつめの顔立ちのクールビューティーな顔。
セミロングの髪に四つん這いになってる体。ハイレグなビキニと言えそうな服だけを来たほぼ全裸に近いその女性。両手両足が鋭い刃となっていた。
女は俺と視線が合うと、にぃぃっと笑みを浮かべる。
「ケヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」
彼女は楽しげに笑いながらどすどすどすっと床に穴開けて走り去って行った。
あまりにも衝撃過ぎて彼女が通り過ぎた後、俺はその場に尻もちを突く。
「い、今の……助けられた?」
「人外の女、なんかボスっぽいのって結構あんたを助けるわよね。変なフェロモンでも出てんじゃないの?」
「今のって結局なんなんだ……?」
「さぁ? それよりヒロキ、次が来てるわよ!」
「マジかよ!? 無理だって」
「それじゃ、ヒロちゃんは休んでなさい」
え?
無数に集まっていたナース達が胴体真っ二つで崩れ去って行く。
そんな彼女たちの背後から、鎌を咥えた下半身の無い女性が現れる。
「て、テケテケさん!?」
「手が速いからって理由で一番乗り貰っちゃった。それそれ行くわよー、ケケケケケッ!!」
た、助かった……




