214.継戦
どれ程の時間が経っただろうか?
どれだけの敵を屠っただろうか?
一体一体がタフな幽霊たちの連続戦闘。
どうにもバイオなハザードみたいな銃撃戦が続いている気がする。
息つく暇も無い連闘、気を抜けば仲間共々殺される重圧。
クソ、手が抜けねぇだけじゃねぇ。全身が熱い、汗が噴き出る。
これ、本当にゲームだよな?
「っ……しまっ、クソッ」
汗で一つレーザー銃を滑らせた。
慌てて拾いそうになってすぐにアイテムボックスから次のを取り出す。
拾う時間も惜しい。とにかく敵を倒す。今はそれだけに集中しろ。
「こ、これ、使えるんか?」
「やめときなさいサユキ、あんた霊打とか霊撃とか持ってないでしょ。下手に動くとヒロキの集中が解けるし」
「そ、そやな。と、とりあえず拾うだけ拾って持っとくわ」
「しかし、このままだとヒロキのミス次第で全滅かぁ、こりゃまいったわね」
「妖精さん、なんかこういうときに良い方法とかないの?」
「私に言われてもねぇ。メリーさんはどう?」
「霊体相手じゃハサミでちょん切るくらいしか出来ないわよ。相手のレベルが高いから攻撃喰らったら即死だし。もう少しレベルが上がって耐久値が増えればなんとかなりそうなんだけど……」
「ま、今のとこ私たちじゃ打つ手がないし、皆が辿りつくまでヒロキに頑張ってもらうしかないわね」
いやもう、限界だって。
ああクソ、この銃はまだ冷却中だ。レーザー使ったら煙出し始めた。
クソ、こいつもか。
冷却時間が間に合ってねぇのか!?
まだ60個くらい残ってたはずだぞ!?
くそ、60でこれなら120個くらいないと冷却期間終わり切らないんじゃねぇのか?
「限界が、近いな……」
「マネージャーさんでもキツいの!?」
「既に大丈夫な銃が少なくなってる。取り出したレーザー銃の銃身が熱いのがいくつか。このままだと、全ての銃が壊れる方が速い」
とくに相手は無尽蔵だ。
このまま味方の援軍を待っていたいが、銃が使えなくなるとなればこのままにする訳には行かない。
最悪テケテケさんの鎌か三節棍で突撃するしか手が無いだろう。
しかも近いうちにソレが始まる事になる。
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SIDE:ハナコさんチーム
病院内に侵入した瞬間から物凄い数の幽霊が襲いかかって来ていた。
ハナコたちが全力でこれに相対したかといえば、全くそんなことは無い。
「呪殺結界」
コトリさんがチーム全体を包むように作りだした呪殺結界により敵の攻撃は完全シャットアウト。さらに突撃して来る敵は全て結界に触れた瞬間即死である。
また、病院内に設置されたコトリバコにより、スキル【一族郎党皆殺し♪】が発動し、廃病院内のエネミー全てが徐々に減りだしていた。
「うーん、なんか納得いかない」
『あはは、でもコトリさんの御蔭で戦うことなく探索できるのいいよね』
「しかも戦っとらんのにレベル上がっとるべよ。なんかこうやって強くなってるって言われても納得できんだべや」
彼らはまさにヒロキが理想としていたレベリングで着実にパーティーレベルを底上げしていた。
アイネさんが道案内をし、コトリさんが結界を張り他のメンバーが歩くだけで勝手にレベルが上がって行くのである。
「なんじゃ今の? でっかい顔が迫って来て消し飛んだんじゃが」
「なんでもいいでしょ、どうせコトリさんには勝てないんだしー」
テケテケが自分の活躍の場が無いのでやる気無い声をだしていると、ネネコさんの持っているペットボトルからディーネが現れる。
「って、ちょっと皆、早く早く、ディーネたち全員魔力尽きて今マネージャーさんが一人で幽霊と対峙してんの、このままじゃこっちのチーム全滅しちゃうっ!」
「旦那様が!?」
「ちょっとディーネ、アカズさんが居るでしょ! ルースさんも」
「え、言ってなかったっけ? アカズさん達とは別れて別々になってるの。このままじゃマネージャーさんたちが死んじゃうっ」
「アイネさん、急いで!」
「急げと言われても……とにかくこっち」
「皆さん急ぎますよ!」
コトリさんに促され、若干駆け足になるメンバー、案内された部屋に辿りつき、扉を思い切り開く。
がらり、開いたその刹那。内部から無数の赤い手が飛びだしコトリさんを拘束しようとする、が呪殺結界に阻まれ潰されていく。
「馬鹿な!? 私の個室結界が破られる!?」
「あら? 敵かと思ったら、アカズさん?」
「……え?」
赤く染まった室内から戸惑う声がする。
すぐに室内が普通の病室へと戻り、内部に居たスレイ、アカズ、ユウキ、芽里、カルカが姿を現す。芽里だけは気を失っているようで、カルカに担がれているものの、別れたチームの片割れの出現に、ハナコたちは少し安堵の息を洩らしていた。
「って、落ち付くのは後! 皆急いで、もうレーザー銃での対応もきつくなってるの!」
「匂いこっちにもあった」
「そっちよ、急いで!!」
アカズたちも合流し、離れたヒロキ達の元へと皆で向うのであった。




