213.連戦
「ま、また来た!?」
「もう疲れたっすぅ」
正直に言えば、遊ばれていた。
この廃病院に住まうナニカは俺達で遊んでいる。
いつでも潰せるが数で押すことはせず、一対多数を連戦させることでこちらが崩れるのを待っているようだ。
恐らくアカズさんチームも似たようなものだろう。
コトリさんたちに賭けるしかないんだけど、この廃病院のラスボスって何者なんだろう?
とりあえず、性根が悪い事だけは分かる。
何しろさっきから俺達が一体倒すごとに次を補充して来るからだ。
とはいえ、助かってることは助かってる。
いっぺんに来られていれば死ぬのはこっちだ。
一体づつだからこそ、ぎりぎり全力で戦うことで撃破できている。
ついでに言えば、さっきの蜘蛛みたいな女とか、顔のデカい幽霊の場合は勝てない可能性がある。
ソレを考えれば、一体づつ敵を連れて来てくれてる現状はまだマシなのだ。
息つく暇もないというのは確定事項だけれども。
「はは、レベル60だってよ」
「ボクそろそろMP切れそうっす」
「ど、どないすんの、ルースさんの魔力切れたら勝ち目が……」
「ディーネも魔力切れ。魔法回復薬はーっ」
「余分はもうねぇ!」
「つまり、魔力が切れたら私達は終わりってこと!?」
「そうでもねぇよ。全員、魔力切れたら俺の傍で身を低くしててくれ。やれるだけやってやる!」
深淵系顔のナースを撃破し、壁から出てくる幽霊を成仏させ、必死に倒すことしばし、十体を越えた頃、ついにルースさんの魔力が途切れた。
魔力回復薬も多用して戦って貰ったので既に薬の在庫もない。
つまり、魔法はもう使えない。
妖精さんも俺の頭の上にひっ込み、ディーネさんも泉に戻る。
メリーさんが心配そうにポケットから見上げる中、俺はただ一人、二丁のレーザー銃を引き抜いた。
さぁ、覚悟を決めろ。
怪人共と戦った時の再演だ。
二つ名はゴーストハンター、死山血河、ジャイアントキラー。
クラスは退魔師、いや、除霊師にしておこう。
あとは……スキルは必要な物全部ONにしてあるから問題ないな。
「さぁ、幽霊1000体撃ちといこうじゃねぇか!!」
「おー、そういえばその技があったわね。頑張れヒロキーっ」
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SIDE:ハナコさんチーム
廃病院前で内部と分断されたコトリさん、テケテケさん、ハナコさん、稲荷さん、ツチノコさん、アイネさん、祢々子さんの七名は、すぐさま別の侵入経路を探していた。
しかし、搬入路も窓も全て閉まり切っており、内部の幽霊たちにより入れなくされていた。
おそらく自分たちよりレベルの高いコトリさんを牽制するため籠城する構えなのだろう。
「まいったのぅ」
「何処からなら入れるかな。屋上とか?」
「どうやって昇るんですかテケテケさん。ああもう、旦那様と私を分け隔てようなんて……呪ってやろうかしらっ」
「とりあえず頭の皿乾きそうだから水分補給するべさ。って、にょぁ!?」
皿の水分補給用に持って来ていたペットボトルのキャップを開けたその瞬間。ペットボトルからディーネが飛びだす。
「び、びっくったべ!? どっからでてくんだおまえさんは!?」
「あははごめんごめん。マネージャーさんとの伝言役になったからこっちとの連絡のために水確保しておいてほしいなって連絡しに来たのよ。まさかここしか水が無いとは思わなかったわ」
「なるほど水かぁ、その水使い終わったら廃病院の水道から出た水入れてみましょう」
『水、でるかなぁ?』
「んー、このあたり、侵入できそう」
「アイネさん、それ本当? んー、確かにこの辺り抵抗が少ないような?」
「ネネコさん、霊打使ってここ破壊できる?」
「おらに任せるだ。渾身の張り手で窓なんか粉砕だべ! だらぁっ!!」
張り手一つで窓が粉砕、というよりは窓枠ごとべごんっと院内にめり込んだというべきか。
どの道完全に進入口が生まれたのは確かだった。
「侵入開始!」
『コトリさん、貴女が頼りだから先行し過ぎないで!』
「あ、っとそうだったわね。貴女達は旦那様のパーティなのだから、放置して死なせました、は良妻として失態になるところだったわ」
ふぅーっと息を吐きだし気持を落ち着かせるコトリさん。
しかし、やはり怒りは収まらないようで、着物の裾から小さな箱を取り出した。
「一つ設置しておきましょう。ささやかながら私からのプレゼントです。うふふふふ」
「あれ、絶対コトリバコよね?」
『さ、さぁ、私知ぃらない。っと』
「んー。こっち行けば仲間いる? 感じがする」
アイネさんが困惑気味に告げる。
皆、それは本当だろうか? と困惑する中、コトリさんは迷わずアイネさんの告げた方向へと歩きだすのだった。




