211.廃病院の怪異
さて、やって来ました廃病院。
見るからにおどろおどろしい雰囲気で、人の気配が一切ないのに誰かに見られている感じが凄い場所である。
なぜかこの辺りにくると天気が快晴から曇り空へと変化し、雷鳴まで鳴りだしたんだが、ここは天気まで変えられる何かがいるんだろうか?
さすがに皆、ちょっと不安そうだ。まぁコトリさん以外は、だけどな。
コトリさんだけレベルは倍近くある御蔭かいつも通り俺に抱きついたままなのである。
結局俺以外プレイヤー全員が都合が付かなかったので来たのは最近ハーレムメンバーと言われだしている俺のテイムメンバーである。
ハナコさん、テケテケさん、ツチノコさん、稲荷さん、ディーネさん、祢々子さん。
スレイさん、アイネさん、カルカさん、ルースルスさん、メリーさん人形持った芽里さん。
コトリさん、ユウキさん、サユキさん、妖精さん、アカズさん、俺。
以上17名。メリーさんと芽里さん別に数えたら18名だけどどっちで数えるべきだろうか?
「さて、とりあえず一番弱いメンバーは中央部に、基本最初の方はコトリさんにおんぶに抱っこでパワーレベリングを行うつもりだ。異論は?」
「まぁここの推奨レベルが80くらいだものねぇ」
「アカズさんでもぎりぎりだからコトリさんがしばらく独壇場になりそうね」
「その分忙しいんでしょ。分かってるわ」
「ごめんねコトリさん」
「旦那様がその分私を愛して下さるなら私は構いませんよ」
「ははは、デートスポット考えとかないとだなぁ」
「まぁ、素敵っ」
あ、やべぇ、なんかデートのレベルが強制的に上がった気がする。
これは、手が抜けねぇ!?
で、出来るのか、俺出来るのか、彼女いない歴年齢と共に更新中の俺が、デートなんて大事業、無事に終えられるのか!?
ハナコさんとデートしようとか言っときながらこれはマズいぞ、いきなりハードル上げ過ぎてないか?
廃病院の扉を潜る。
「あら? 背後?」
コトリさんが何かに気付いて背後を振り返る。
その間に皆も続々廃病院へと入って……
ズダンッ
物凄い勢いで正面玄関の自動ドアが閉じた。
丁度半数程が入ったところでまさかの……
ガシャンッ
さらに真上からシャッターまで降りてくる親切仕様。
完全にコトリさんと分断されました。
……いきなりピンチですやん!?
外との繋がりが立たれて薄暗がりの中、光が生まれる。
おお、まさかの人間ライト!? スレイさんが自身を発光させて辺りを照らしてくれた。
即座に俺はエントランスに入ってしまったメンバーを確認する。
スレイさん、ルースルスさん、アカズさん、ユウキさん、サユキさん、芽里さん、俺、ディーネさん、妖精さん、カルカさん……ヤバい、メインアタッカーになり得るテケテケさんやハナコさんがいない!? なんで稲荷さんとツチノコさんもいないの!?
『ヒロキ聞こえる!?』
「ハナコさん!?」
『どうも幽霊の私が通り抜け出来ない結界か何かが張られてるみたいなの、コトリさんたちと別の入り口が無いか探すから、合流するまで気を付けて!!』
コトリさんチームはテケテケさん、ハナコさん、稲荷さん、ツチノコさん、アイネさん、祢々子さん。彼女たちは別ルートが無いか調べてくれるらしい。
しかし、そこから俺達の元に合流するまで俺達がなんとか出来るかどうか。
とりあえず、アカズさんがいるなら個室に向うのが正解だろう。
「皆、一先ず個室に向おう」
「そう、ね。とりあえず攻撃参加はルースさんとアカズさんメインになりそうね」
芽里さんが周囲を警戒しながら告げる。
ここにレベリングしようと思って来たのは失敗だったんだろうか?
まさか初手からコトリさんと分断されるとは思わなかった。
「ちょ、ヒロキ、なんか来てる! 来てるって!!」
遠くからだけど、顔の見えないナース服の女性がゆらりと現れた。
「そこの個室に行こう。一先ず拠点を作った方がいいだろ。助けを待つにも、な」
総合受付窓口にはいくつかのオーブが飛び交っている。
姿は見えないのでNPCかもしれない。さすがに話しかける勇気は無いけども。
「よし、こ……」
ここにしよう、と開いた個室。なんかでっかい顔が目の前にあったので即座に閉めた。
「は、走れぇ!!」
俺が離れると同時に扉は自動で開き、うにょぉっと巨大な顔が廊下へと出てくる。
くっそ、やっちまった。コトリさんがいないと個室にすら籠れそうにないぞ!
ナースもこっち来てるし、後ろには巨大顔だけ男。
「ルースさん、ナースに神聖魔法!」
「り、了解っす!」
レベル差があるので一撃では倒せない。しかし、弱点属性を突いたおかげで相手がノックバックしてくれる。
つまり隙が生まれるのでその隙に素通りしてしまおうということである。
「はぁ、はぁっ、む、無理、これ以上走れない」
最初にサユキさんが根を上げた。
くぅぅ、なんか最近ツイてなさすぎじゃないか?




