202.遊園地デスゲーム12
階段を上る。
三度目の開けた場所へと辿りつく。
いくつかロープの張られただけの通路、下は恐らく電流地帯。
おそらくゴム手袋長靴のセットを使うのだろうけど、こんな薄い奴で大丈夫なのか?
「ふーむ。とりあえず飛行可能組とテケテケさんはさっさと渡ってくれ」
「りょうかーい」
『ルースさんのピストン輸送はしないの?』
「なんとなく、嫌な予感がする。恐らく本人以外の面子を輸送すると別の即死フラグが入る」
「ヒロキ君の勘は様々なスキルの恩恵受けてるしな。ここは飛行組を先に向わせておこう。ヤバそうな人は?」
「ドン臭い組筆頭やねんけど」
サユキさんはなぁ……
「しゃぁねぇ。そこのぽっちゃりは俺が運んで行く。背負うのは大丈夫だよな?」
「不安な感じはしないんでおそらく」
俺の言葉にサユキさんを背負った未知なるモノさんがついでにユウキさんと芽里さんを小脇に抱えてロープを走り抜ける。
ソレを追うようにテケテケさんが二つのロープを掴みながら駆け抜けた。
ふむ、近場なら二つ使って移動するのもありか。落ちなきゃいいみたいだし。
飛行で移動したのが妖精さん、ハナコさん、ルースさん、アイネさん、グレートマンさん、マイネさん。
グレートマンさん飛べるのか。あとマイネさんはマンホール投げてそれに乗るという荒技披露してくれた。すげぇ、俺もマンホール乗りたいっ。
そして飛行じゃないけど手早く渡ったのが未知なるモノさんに連れて行かれた芽里さん、サユキさん、ユウキさん。腕を物凄く伸ばして悠々向こう岸に移動したネネコさん。
「綱渡りですか。あら、意外と行けますね」
そして舞いを踊ったりする関係かコトリさんが凄いバランス感覚見せて一本の綱を渡り切る。
スレイさんも続くように歩きだしたんだけど、ふっつうにバランス崩して落下した。
30センチほど下にある床に着地した瞬間、にゃあぁぁ!? と悲鳴を上げたのだが、鳴きそうな顔のままゆっくり歩いて向こう岸へ。
カルカさん曰く、スレイさんは雷撃系能力を自分の身体に造りだす器官があるので効かなかったようです。一人だけズルい。まぁゴム長靴が仕事してくれただけかもしれないけどな。
その後、カルカさんがロープ二つを使ってぶるぶる震えながらもなんとか向こう岸へと辿りついた。
後残っているのはアカズさんとディーネさん、ツチノコさん、キカンダーさん、稲荷さん、俺。
そんな俺の背にツチノコさんが乗り、ポッケに稲荷さんが入り込み、ディーネさんが腰に下げた水筒に逃げ込む。
ふふ、これでアカズさんと俺とキカンダーさんが渡ればクリアか。
しかし、これは怖いな。このままだと……待てよ。
「アカズさん、今から渡り方を教えよう」
「え? だ、大丈夫なの?」
「ああ、この渡り方なら絶対に落ちない。いいか、二つのロープの間隔が結構近い。ゆえに四つん這い状態で二つのロープを片足づつ引っかけ、両手で手繰るように移動すれば……時間はかかるし動きは恥ずかしいが、必ず辿りつける」
「あ、ワシ背中に回っておくぞ」
あ、稲荷さんが逃げた!?
まぁいい、行くぞ。
「アカズさん付いて来い。恥ずかしくとも、皆で渡れば怖くない」
「は、はいっ」
まるでイモムシや尺取り虫のような動きで、俺とアカズさんは向こう岸に辿りつく。
結構時間掛かったけど……って、キカンダーさんまだ渡って無かった!?
「おい、なんか聞こえてこないか?」
「なんかってなんです未知なるモノさ……うげ!?」
不意にキカンダーさんの背後の階段から何かうめき声が聞こえて来た。
なんだ? と思って注視していると、ゆらり。階段を上ってくる死者の群れ。
「ぞ、ゾンビーっ!?」
「き、キカンダーさん急いで!!」
「し、しかし電気効率のいい私ではここを通過するのは……ええい、やるしか、ないか!!」
ゴム手袋と長靴装備してるから多分大丈夫。
それでも覚悟が付かなかったキカンダーさんは、背後から迫るゾンビに追い付かれる直前、ロープへと飛び込むように走りだす。
「ぬ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
すっげ、一本のロープを激走して……あっ。
まさかの耐荷重オーバー。キカンダーさんの重さに耐えきれなかったロープが切れる。
「しまっ」
「走れキカンダーッ!!」
「ぬぐあああああああああああああああああああああああ!!?」
床に着地すると同時にキカンダーさんが走る。
背後のゾンビ達はすぐに床へと落下してバチバチと唸りを上げて黒焦げになっていく。
「はぁ、はぁ、ご、ゴム長靴ってこんなにすごいのか?」
なんとか電気の海を渡りきったキカンダーさんが床から這い上がってきて尋ねる。
「このイベントオンリーだと思います。それより急ぎましょう。ゾンビ共は感電に気にせず攻めてくる。ったく、なんで下からゾンビが溢れてんだよ!?」
俺達はすぐに階段を駆け上る。次に必要なのはコレだろう。
でも、最後の一つは……どうか床が抜けるだけのトラップがありませんように。
 




