195.遊園地デスゲーム5
「御世話になりましたーっ」
「も、もう来ないで下さいっ!!」
ゴーカートの係員さんが泣きそうな顔で最後の100デスメダルを未知なるモノさんに支払う。
思い切り走りまわれたテケテケさんは気分爽快、楽しそうにステップ踏みながら……踏み締めてるの掌だけど、別に踏むでいいよな?
逆に妖精さんは俺の頭の上でぐでぇっと垂れるように生き倒れしている。
体が柔らかいからか、胸が当たる頭頂部が何とも言えない感触で役得です。
意外と、良い物をお持ちで。
「無理、もう無理、私は戦線離脱する……」
「はいはい、妖精さん良く頑張った。御蔭で未知なるモノさんチームも一緒に移動できるようになったよ」
「次は西側のチームと合流だったな」
「どのチームか分かります?」
「まぁ、それは行けばわかるだろ」
ごもっとも。
できればハナコさんチームがいいな。
ハナコさんに会いたいッ!!
西エリアへとやってくる。
この辺りは随分と大人しい感じだな。
ハウス系が多いのか。
「ミラーハウスにお化け屋敷。ゾンビハウスなんてのもあるぞ?」
絶対本物使ってるだろ。
ゾンビハウスとか死亡フラグしかないし、下手にウイルス貰ったら冗談じゃ済まなくなる。
いくらゾンビ関連を無効化したり出来る薬があっても噛まれたくは無い。
変な病気媒介してそうだし。
「エリアのどこかに居ると良いんだけど。って、あそこにいるのは」
「あーっ! ヒロキンだ!」
「ヒロキさん! 未知なるモノさん! よかったぁ、知り合いがいた」
皆、ではなくタツキ君チームだった。
残念だけど全員ではなくダイスケだっけ? あいつだけ居ない。
「人面犬さん……」
「おおお、お嬢ちゃーん。聞いておくれ、こいつ等ワシのことテイムしてくれへんねんっ、美少女がええんや、美少女じゃないとテイムせぇへんねや」
「ああ、可哀想に、私がテイム、するね」
アミノサンの元へぴゅーっと走って行った人面犬は、そのままアミノサンにテイムされた。
しゃがんで人面犬を受け入れたアミノサンが頭を撫でつつ背中まで撫でる。
おっさん犬は尻尾ぶんぶん。無表情娘とおっさんのコラボレーションにちょっと引いた。
「うえぇ、アミノサン、さすがにソイツテイムすんのは……」
「え? もうしたよ?」
アパポテトだっけ、指摘するのちょっと遅かったな。おっさん犬がアミノサンに辿りついた時には既にテイム寸前だったぞ。
しかし、これでおっさん犬のAIも消えることは無くなったってことか。遠慮なくイケニエにできるな。
あ、いや、うそうそ。冗談だぜおっちゃん。だからそんな怯えた眼でこっち見んな。
意味が分からずアミノサンが首傾げてるじゃん。
「タツキ君達もここ来てたのか」
「はい。意外と人気あるんですよこの遊園地。普段はほんとまともですし」
「正直、まさかデスゲーム始まるとは思ってもみなかったけどね。あーあ、これでもうここに来るヤツ激減するだろうな」
それは確かに、俺もたまに殺される遊園地とか普通に行きたくないし。
ここ、潰れんじゃね? まぁNPCは普通に来るから問題は無いのか。
問題としては一度デスゲームしたら終わりになるのか、それとも何度もデスゲームフラグが始まるのか、そこが問題だ。
とりあえず、デスゲーム運営部を残しているとまた次のデスゲーム始めるだろうからここで叩けるなら叩いてしまう方が無難だな。
じゃあとりあえず……ん? あ、アレはッ!!
「ハナコさん!」
「へ?」
驚くタツキ君達を無視して走りだす。
丁度幽霊屋敷から出て来たハナコさんとディーネさんに向けて全力疾走。
「ん? あー、マネージャーさんだ」
『え、まねーじゃー、ああ、ヒロキ、ってなんて顔で近づいてくるの!? い、陰火』
へぶっ!?
目の前に出現した炎に真正面から突っ込んだ。
熱くは無かったので視界塞がれるだけで済んだけど、ちょっと焦った。
今の、陰火覚えてなかったら鬼火が直撃してたんじゃないか?
「ちょっとハナコさぁんっ」
『も、もぅ、焦って鬼火当てるとこだったわよ。ちょっと落ち付きなさいっ』
「はいっ」
こらアミノサン、犬だ。とか言わない。
「ハナコー、そっちは全員無事?」
『あ、テケテケさん達も合流できたんだ。ええ、こっちは無事よ。もうすぐここに回ってくるわ』
「あ、来た」
ハナコさんチームはハナコさん、ディーネさん、芽里さん、サユキさん、ツチノコさんの五人チームだったようだ。
芽里さんがツチノコさんを抱きしめ、サユキさんと二人こっちに歩いて来た。
「ハナコ脱出オメデトー、って、ヒロキ!」
「おお、合流したんやぁ。死亡フラグだらけやのによくここまで……」
死亡フラグがなんぼのもんじゃい。ハナコさんと会うためならば、たとえ1%の可能性すら掴んでみせようじゃないか。




