194.遊園地デスゲーム4
まずやってきたのはすぐ近くの南西側のエリアである。
確かこっちの方にハナコさんが向ってた気がするのだ。
西側だったはずだからここを突っ切ればハナコさんの居るエリアに辿りつくだろう。
「相変わらず、殺伐としてるわね」
「そういえば妖精さん、テイムしてないけど大丈夫?」
「ん? あー、言われてみれば。今更な気もするけどどうしよっかなぁー。あーでもここだと即死もあるのか。仕方ない」
―― 妖精さんが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
―― 妖精さんをテイムした! ――
今までを考えると結構危険なことしてたんだな妖精さん。
うーむ、確かにこうして考えてみるとAI持ちのキャラが死ぬの、ちょっと怖くなるなぁ。
元に戻ってもそこに俺と出会った記憶とかはない別の存在になる、ってことだよな。
俺は思わず足元を見る。
「なんや?」
「なんでもねっす」
「えーっと、ここはジェットコースターとかがあるっすね」
絶叫乗り物系がここのエリアかな。
ジェットコースターにスプラッシュコースターに……むしろコースター系か。
さすがにこんな即死フラグしかないコースターには乗りたくないな。
「うっわ、途中で逆さ状態で止まってる」
「アレで最後の一人になるまで耐えろってか。一人しか生還できないじゃん。絶対に乗りたくねぇ」
他にも宇宙へ向けて、スペースアタッカーとかいう上昇系コースターは最高時速がジェット機を越えて真っ直ぐ真上に打ち出される。
で、そのままコースターごと空中で重力に引かれて落下する、と。
どうやって生存しろと?
なんかここは確定死亡系が多いな。
他に多少なりと安全なのはないのかね?
元手になりそうなメダル稼ぐにも殺伐し過ぎてる。
「あー、おった! 皆おったでぇ!!」
ん? なんだ騒がし……ユウキさんじゃん。
「ヒロキ、よかった、無事だったか!」
「未知なるモノさんも無事そうで何よりです」
やってきたのはテケテケさん、ユウキ、未知なるモノ、キカンダーの四人だ。
一応ユウキさんが幸運持ちだから今のところは誰も欠けることなく行動で来ていたらしい。
「まぁ、その御蔭でまだ一枚もゲットしてないけどね」
「そっすか。まぁ無難なの選ぶ方がいいですもんね。で、何か良さそうなのありました?」
「それがなぁ、ここコースター系ばっかじゃん? 何やっても即死が付いて回るっつーか。どうしたもんかね?」
この面子だと確かに万が一が起こりそうだよな。
とはいえ、何もしないで居るって訳にも行かないよな。
結局他の場所に行くには数百枚単位でメダル稼がないとだし。
ん? あれは……
ふむ。ルール的にもそこまで変なことは書いてないな。
「未知なるモノさん、こいつは?」
「あー、ゴーカートか。だが時間内ゴールだぞ。見た感じだとかなりシビアみたいだし」
「いや、そうじゃなくてですね。ルール見てください」
「うん? えーと、乗り物に乗って時間内にゴールしてください、だよな?」
「ええ。んじゃまそこの係員さーん。ちょっとご質問いいですか?」
「はい、なんでしょう?」
ピエロのお面被ったお兄さんに尋ねる。
「このゴーカート。乗り物とは書いてありますけど、カートじゃないといけない、わけじゃないですよね?」
「え? は、はぁ、まぁ確かに書かれてはいませんが、他に有りますか、乗り物?」
「テケテケさん、妖精さん、出番ですよ!」
「ほえ?」
「おねーさん? あー、了解♪」
全てを察したテケテケさんが配置に付く。
妖精さんは良く分かっていない様子だが、テケテケさんに胸元に入るよう言われてすっぽり収まる。
羽、大丈夫かな?
「え? 人力!?」
「スタート合図お願いします」
「あ、ハイ」
まだ理解が及んでいない係員がゴーカートを開始する。
三つのランプが時間経過で点灯しはじめ、全てが付いた瞬間、テケテケさんが走りだす。
「ケケケケケケケケケケケッ!!」
そう、テケテケさん、なんと上半身だけのくせに80kmくらいのスピードで追って来るのだ。
つまり、そのスピードで走る術を持っているのである。
「ぎにょぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――っ」
当然、その風圧により掛かるGも相当だけど。彼女に捕まる場合は首を持って負ぶさる位しか方法が無い、つまり、俺達人間ではテケテケさんに捕まっての移動は難しいのである。
その点、妖精さんならテケテケさんの胸に守られ吹っ飛んで行く可能性は無い。
「はい、ゴール」
「す、凄い、ベストレコードの大幅更新……」
「おお、ここのメダルは100も貰えるのか」
「そ、そうですが……」
「あ、妖精さんお疲れ。はい回復薬」
「んはっ、ありがと」
ごきゅっと一滴飲むだけで回復する妖精さん。回復薬複数回使えるからこれは嬉しい誤算だね。
「じゃ、行こっか?」
「ふぇ?」
「ふふ、ベストレコードもっかい更新してやるわ!」
「え? 待って、に、にょあぁぁぁぁぁぁぁぁ――――っ」
それから、3000メダルになるまでテケテケさんは存分に走ったのであった。




