188.蜘蛛は虫に入りますか?
「フルボッコタイムだーっ!!」
「ヒャッハーッ!!」
「え、えっとヒャッハァ?」
妖精さん真似しないでいいんだよ。
ユウ、アイネさんと俺の三人が一斉攻撃。
そしてツチノコさんが背中から飛び出し体当たり。
メリーさんもポッケから飛び出しハサミを使ってまだ動く足から伐採していく。
妖精さんは……風の魔法かな? 鎌鼬みたいなものを発生させるらしく、オニグモの身体に切り傷を付けて行く。
惜しむらくはその威力か。
妖精さんのレベル、結構低そうだな。
切り傷が出来てるけど、大したダメージにはなっていないっぽい。
それでも痛みで悲鳴は上げているので、ノックバック攻撃としてはそれなりに優秀だろう。
おかげで、金属バットで殴るユウの大振りも普通に当たってる。
っと、あぶね。突き攻撃だけには注意しねぇとな。即死入ったらここまで追い詰めた意味が無い。
「頑張れ皆ー」
スレイさん煩い。
ぐるぐる巻きになった面子は黙ってろぃ。
レーザー銃でヤバそうな足から潰して行く。
このオニグモ、足先が鋭いから全ての足が貫き攻撃出来るんだ。
よし、これで残ってる足は一つだな。
それもメリーさんが今、伐採した。
足全てを失ったオニグモが糸を吐いて来る。
口からも吐けるのか!?
あっぶね。すぐ避けられてよかった。
って、妖精さんが絡まった!?
「にぎゃー!? 取って取ってぇ」
粘着性のある糸なので下手に触ると俺までくっつく。
仕方ない。
「妖精さんは動かず待機。下手に動くと呼吸出来なくなるくらい絡まるぞ」
「それは嫌ぁーっ」
妖精さんは暴れるのを止めて邪魔にならなさそうな場所に退避する。
ギョリさんが手伝うことなく見学してるので妖精さんを見て貰うことにした。
なんなら糸、取っといてくれてもいいからね。
「口から吐く糸に気を付けて!」
「ンなもん言われなくても分かってんだよ! うらぁ!」
素手の戦闘が得意とか言ってなかったっけユウ。
なんかもう金属バットが似合う女になってるな。
「うっし、胴体と尻切り離すわよーっ」
メリーさんのハサミじゃ無理だろ。
「ん、そろそろ孵化しそう」
孵化? あ……ひぃぃ!?
オニグモの尻部分がぶにょぶにょ動きだした!?
気持悪っ!?
「グォォォォォォッ!?」
うっわ、HPが急激に消失し始めた!?
そして……え、えいりあぁんっ。
うわぁぁぁぁ!? なんでそうなるの!? ちょ、アイネさんさすがにこれはえげつないのでは!?
じ、自主規制、自主規制しなきゃ、ここは動画にもモザイク必須だぞ。
アイネさん、なんという映像クラッシャー。
ぐばぁしちゃったオニグモさんが消えていく。
アイテムは自動で俺とユウに振り込まれるらしい。
「お、あいつ倒したら糸消えだしたぞ」
「ぷはっ、あ、あっぶねぇぇぇ、窒息寸前だぁーどちくしょうっ」
妖精さん、言葉遣い……
「ちょ、落ちる、落ちるぅぅぅっ!?」
おっと。
拘束されていた糸が消えたので落下して来た稲荷さんをキャッチする。
うまい具合に御姫様抱っこになったな。これもラッキースケベのおか……ぶべっ?
上手く助けられた、と思ったのもつかの間。真上から降ってきた何かに視界を塞がれる。
ふにっとふくよかな何かが顔面を覆った。
「た、助かった。私、また死ぬかと思った……」
「ええい、退けぃっ」
稲荷さんを立たせて、顔部分に覆いかぶさってきたアカズさんを投げ捨てる。
クソ、俺はまだハナコさん殺した事許した訳じゃないんだからねッ! い、意外と柔らかかった……こやつ、やりおる。
「だ、だーりーんっ」
ん? あっ。
糸が無くなり落下して行くスレイさん。
俺の居る場所からはかなり遠かったのでそのまま地面にぶべっと激突した。
無事、っぽいな。さすが改造人間。
カルカさんは落下と同時に体を回転させて華麗に着地。思わずアイネさんとユウが拍手していた。
「済まないご主人、油断した」
「怪人化しても無理そうだった?」
「一番に捕まってしまったのでね。こうやって全身縛られてしまうと手も足もでない。元首領としてあまりにも体たらくだったと反省しているよ」
溜息を吐くカルカさん。実力、あげないとなぁ、と呟いていた。
まぁ後で廃病院でレベル上げするつもりだし、しっかり強くなって貰おう。
「さて、そろそろ虫採りも切り上げて帰ろうぜ」
「うー、あまり昆虫とれなかったのじゃ」
「こっちは取れたから欲しいのあったら言ってくれ稲荷さん」
「う、うむ。後で見させて貰おう」
「んー? 稲荷、顔赤くない?」
「赤いのは主の部屋だけで十分じゃ。さっさと行くぞアカズ」
「へ? あ、またぁ!?」
あーあ。照れ隠しでアカズさんが連れて行かれた。
多分、さっき御姫様抱っこしたからちょっと気恥ずかしかったんだろうなぁ稲荷さん。




