186.これは虫じゃないと思う
「ギィィィ」
……これは、虫でいいのだろうか?
なんか深淵系のヤバそうな生物がうじゃっと生息していた。
「ぎょぁ」
「この村でよく見かけるイモムシだって」
それは確かにイモムシみたいな姿だった。
ただ、頭に耳のようなトンガリ角があり、体長六メートルほど。
どうやっても虫相撲に向ない巨大生物だ。
「ギィィィ」
いや、デカ過ぎだろ。つか多いな!?
名前:
種族:ベーヒアル クラス:UMA
二つ名:なし
Lv:3
HP:72/72
MP:12/12
TP:57/57
GP:5/5
状態:普通
技スキル:
たいあたりLv1: 体を使った肉弾特攻。
危険察知Lv1: 迫りくる危険に気付きやすくなる。
巻き付き: 体を使って相手を拘束する。
本気モード: HPが25%以下になった場合、全能力値が50%増加
状態異常無効: 毒等の状態異常に掛からない。
噛みつく: 相手に噛みつく攻撃。稀に麻痺付与。
深淵じゃなくてUMAだった。
レベル的にも雑魚だな。
というか昆虫だったらアイテム扱いだろうに、これ普通にモンスター扱いじゃん。
「稲荷さん、これ、虫相撲に使える?」
「無理じゃなー」
「ぎょぁ?」
「えっとね、虫相撲の場合、私と同じくらいの大きさの虫が望ましいって」
「ぎょぎょっ!? ぎょーぅ」
「ソレは失礼した、ならばこちらにどうぞ、だって。なんか危険な生物らしいけど多分昆虫らしいよ」
多分ってなんだろう?
案内された場所には、一本の木。
その幹に、確かに見慣れない、というか完全創作物っぽい昆虫が止まっていた。
チェンソーの歯みたいな形状の角持ったカブトムシとか。シザークワガタとか。
ガラス蝶とかもいた。
正直これは捕獲して良い虫なのかとすら思えてくる昆虫だ。
でもこういう昆虫も使えるんだろうな虫相撲。
いろんな種類捕獲して行くか。
そこからしばらく別行動することにする。
とりあえず迷子にならないように、二人組を形成する。
稲荷さんは……アカズさんに任せよう。
スレイさんはカルカさんと移動するらしい。
なので、ユウとアイネさんがペアを組み、俺は背中にツチノコさん、ポッケにメリーさん、肩に妖精さんを引きつれギョリさんと一緒に虫採りを行う。
ギョリさん意外と虫の居場所知ってるなぁ。
おっと、なんか変な虫見っけ。これは……ただのアリジゴクだった。
なんで地面歩いてんだよ。勘違いしたじゃん。まぁ回収しよう。
ついでにアリも一匹回収するか。
あれ? こっちのは一回り大きいな。
あ、種類違うのか。
こっちのは赤いアリ?
クロアリとグンタイアリとヒアリかぁ、まァ種類とかくわしくないけど一匹づつ採取しとこう。
「ぎょぁ」
「そこのはっぱにナナフシがいるって」
「了解」
それからしばらく、虫だけじゃなく変な生物を観察していく。
三本指の猿っぽい集団を見かけたり、羊頭の人っぽい生物が遠くを歩いていたり。
いずれもこちらには気付いていなかったものの、気付かれれば面倒なことになりそうなのでギョリさんに潜伏するように言われた。
なので、スキル使って完全隠蔽モードで動いていたのである。
採取を終えて合流時間になったので、俺達は合流場所へと戻ってくる。
うん、案の定戻って来やがらない奴らが居ますね。
スレイさんチームと稲荷さんチームである。
「おいおい、なんで集合時間に戻れねぇんだよあいつらは? ウチのチームだったらボコ確定だぞ?」
不良と一緒にしないでくださいます?
「しかし、何処行ったんだか」
「この近くのはずなのにねぇ。ちょっとそこのギョ人だっけ、この辺りで迷子になりそうな場所ってある?」
「ギョ? ギョギョ」
「んー、正直想定外だけど、一応可能性のある場所はあるって」
「じゃあとりあえずそこ行こうか。悪いんだけど、戻って来た時用にここに誰か残っておいて貰った方がいいかも?」
「ギョー」
「ギョ人の人が来てくれるって、あ、この人?」
今、連絡すらしてなかったのにどうやって連絡取った?
「もしかして、念話か何か使える?」
「ギョ」
「超音波による会話だって。あ、それなら超音波使って四人が何処居るか調べて貰ったら?」
「ぎょー」
うーむ、やっぱりニュアンスだけで理解するのは難しいな。全部おんなじ鳴き声にしか聞こえねぇ。
新しく来たギョ人さんがこの場に残り、俺達は稲荷さん達を探して歩きだす。
さて、一体どこに行っちまったのか。この近辺だけだっつったのに。
ただでさえこの辺変な生物多いんだから気を付けてほしいよホント。
稲荷さんの神社がある山とはいえ、本人の形代が迷子って神様としてどうなのよ?




