182.結局仲間になりました
―― 開かずの間の怪が仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
「じゃあ、ほんとにしますよハナコさん」
『ええ、お願いヒロキ』
正直、やっぱり俺はハナコさんを倒した開かずの間をテイムするのはちょっと嫌なんだよなぁ。
でもハナコさんが問題無い、許しますって言うんだからテイムするしかないのである。
すっかりハナコさんの背後に隠れてこちらを怯えた眼で見る開かずの間の怪……もうアカズさんでいいか。
―― アカズさんをテイムした! ――
「うぅ、アカズさんにされたぁ」
『ああもう、ごめんねヒロキネームセンスないから。はいよしよし』
なんで? ねぇ、なんで? 俺が悪者にされてない?
「なんか、思ってたのと違う……」
「俺は実際会ったけど性格が180度くらい違うんだけど」
「多分ヒロキのせいだと思う」
ひどいよマイネさん!?
「とりあえず、アカズさんに関してはハナコにお任せしましょ。目的も終わったし、さっさと水着買いに行きましょヒロちゃん」
「それもそうだった。って言うかあいつら連れて来るの忘れた!?」
「言われてみれば、昨日の面子で来たからユウキとサユキ着いて来てないわね」
芽里さんの言葉に自分で自分を殴りたくなった。
俺ってばほんと忘れ物多いな。まさか人を連れて行くこと忘れるなんて。
仕方ないので一旦自宅に戻って嫌がるユウキさんと外に出たくないサユキさんを無理矢理引っ張ってくる。っつか奴隷の癖になんでご主人様に反発してんの!? 奴隷って身分だけかよ!?
妖精さんはどうする? 着いてく?
何処行くか分かってないね。まぁいいけども。
そしてその足で水着を買いにアラクネさんのお店にやってきた。
「あら居らっしゃい。最初に頼んであった分の水着は出来たわよ? もうそろそろ連絡入れようかと思ってたのに、タイミングいい……うそ、まさかまた、女が増えた!?」
「すいません、追加お願いしていいっすか」
「いいけど、いいんだけどね。何なのアンタ? ハーレムでも作る気なの?」
「その気はないんですけど、なんか増えてくんです。えっとこちらの面子です」
嫌そうなユウキと諦めの境地に達したサユキ。それと小さすぎて計測に苦労している妖精さん。
さらにマイネさんとアカズさんの計測が始まり……ってユウさんや? なんで普通に計測してんの? 水着、買うの? 女の子のだよ?
「あん? 今は女だろ?」
「そうだけど、そうなんだけど……いいのか? いい、のか?」
ああ、ダメだ考え出したらなんかもうゲシュタルト崩壊しそうだから考えるの止めよう。
「あ、そうだアラクネさん」
「何? ウチの子はハーレムにあげないわよ」
「そんなこと聞いてないでしょ!? いや、迷惑掛けてますから差し入れでもと思ったんすけど、ここの従業員って何人いるんです?」
「ああ、皆にくれるつもりなの? それならやめときなさい。今何万人いるか私も把握してないから」
万!? どんだけ居るのアラクネさん!?
しかもここの従業員だけ?
全員分買おうとか思ったら、いくらの金額になるんだろうか……うん、やめよう。気持ちだけ送らせていただこう。
「ふふ、まぁ気を使ってくれようってことは理解したから気持ちだけ貰っておくわね」
「そ、そうっすね。争奪戦になりそうなんで贈り物はしないでおきます」
「ええ。ソレがいいわ。あくまで私達はビジネスの繋がり、アラクネと人間じゃいろいろと難しいのよ下手に関わり合いになる前に一定の距離で留まっておきなさい」
「そうします。ただ、こんだけ水着作って貰ってなんか申し訳ない気がしてまして」
「追加追加でどんどん増えるものね。でも、むしろ感謝してるのよ。売り上げが上がるもの」
そりゃ服屋だからなぁ。追加注文された方が嬉しいに決まってる。
「うぅ、ウチほんとは男やっちゅーの。こんなん恥ずかしゅうて着れへんてぇ」
「ウチの体型でこんなん拷問とちゃうん? ヒロキさん、やっぱ買うのやめない?」
「大丈夫サユキさんの水着姿可愛いよ」
「ひゃひっ!?」
「ねーちゃん顔真っ赤になってんじゃん」
「う、ううう煩い馬鹿っ」
でもサユキさんはデブじゃなくぽっちゃり系だからなんか可愛いんだよなぁ。姿見てるとほっこりするというか。もうちょっと目元の隈をなんとかするだけでも十分美人さんだと思うな。お腹は、まぁなんだぽっこりとだけ言っておくか。
「ヒロキー。私まで水着にするとかどんな変態だーっ!? 妖精とえっちぃこと考えてるのかチミは! このえっち、変態。妖精好きぃーっ」
そして妖精が煩い。テイムこそしてないのに何故かウチに居候しているこの妖精さん、ぶんぶん俺の周り飛ぶからなんかもう蚊とか蝿の亜種じゃないかとすら思うようになってきた。
あと、妖精好きーのところで顔を赤らめるのは何かのサインか? 私を好きになれとかそういうサインだろうか? ハナコさんが居るから断っていいかな?
「いやー、水着っていろんなパターンあるから迷ったわー」
「見るだけでもおもしれーよな」
めっちゃフレンドリーなユウとマイネさんは個人でメル友になったようだ。
そいつ、男……ゲフンゲフン。ま、まぁこれも出会いってことで二人がくっつく事もあるかもしれんし、温かく見守っておくか。




