171.皆が遊んでる間に確認確認4
さて、残ったアイテム問題児四つをどうするか。
「また使いどころの分からないもんが残ったなぁ」
「詳細を見てみてはどうです?」
それもそうか。
んじゃ、鑑定眼を使って……
名前:尻小玉
特性:ドロップアイテム人系 人系生物から特定方法でドロップする
説明:誰かのお尻から河童に抜かれた尻小玉。尻小玉を抜かれた存在のお尻に戻すことで正常に戻す事が出来る。
……のっけから問題の奴がいるぞ。
これ、他人の尻小玉でも戻せば正常に戻るってことか。ちょっと、嫌だなぁ。
「尻小玉って結局何処にあるんでしょうね?」
「どこだろうなぁ。俺も知らないよ」
とりあえず、これはイベントで使うだろうからやっぱり貴重品に入れておこう。
戻らないよりは戻った方がいいだろうし。
名前:覚のお詫び品
特性:EXアイテム 覚を論破した者に送られるお詫びの品
説明:開封用アイテム。中身は開封されるまでわからない。
あ、これ開けないとダメな奴なのか。
「ランダムボックスみたいなものですか? ふふ、私と一緒ですね。開くまで何が入っているか分からない。うふふふふふ」
コトリさんのコトリバコはどう考えても呪いが入ってそうなんだけど……
開けるにしても皆落ち着いてからの方がいいかな。皆の前で開けよう。
名前:毛羽毛現の毛
特性:??? 毛むくじゃら生物の毛
説明:それは毛むくじゃらな生物から零れた毛か。それとも毛という生物の死骸か。
なんだこの哲学的な説明は?
というか、コトリさんが呪殺した生物はこいつか。
森の中に居るなら猩猩とかビッグフッドとかだろ。なんでこの妖怪? 手水場で水飲むだけの存在じゃなかったのかよ。
たまに意味不明な場所に出現するよねこのゲームのエネミー。
名前:囚われの妖精
特性:囚われのNPC 手に入れたら開放してあげよう。
説明:闇のカードゲームに敗北し、瓶詰にされた妖精。まだ生きている。
「ぎゃああぁぁ!? なんかヤバいのだった!?」
「妖精? 見たいです旦那様」
俺の叫びで皆がこちらに注目している。
ここで取り出すのかよ。
ま、まぁいい、とりあえず死んじゃう前に開放だ。
「っと、これか。んじゃ、開封っと」
瓶の蓋を開いた瞬間、それは勢いよく飛び出した。
「あんたよくもやってくれたわね! こうなったらもう妖精拳法四十八手の奥義をお見舞いしてやるわッ、こなくそーっ!!」
「あいたっ?」
ぺちんっと額に突撃して来た何かに殴られた。
殴られたってほどでもないダメージだった。
「えっと、何してんの?」
「にゃーっ!? 効いてない!!? 馬鹿な、妖精なら一撃で倒せる程のダメージが入るはずなのにっ!!」
すっごい賑やかだ。芽里さんを二倍したくらいやかましい気がするなぁ。
「呪います?」
「え、いや、ダメージにもなってないから大丈夫だよコトリさん」
なんか俺への攻撃を見て敵認識してるっぽいけど、闇のゲームで捕まった妖精らしいから被害者だよ。これ以上酷い事しないであげようコトリさん。
あ、でもヤバい精神の持ち主だったから封印されたのかもしれないか。
「えっと、初めまして妖精さん」
「はぁ、何が初めましてよ! 私を妖精酒にしようなんて非道な事しておい……あんた誰?」
どうやら激情のまま俺に攻撃していたらしい。
これ、ダメージヤバい程の攻撃だったら勘違いで俺を殺しに掛かった訳なんだけど、謝罪、あるかなぁ?
「えっと成り行きで闇のゲーム引き継いだんだけど、おいユウキさん、お前何妖精捕まえてんの?」
「はぁ? 違ぇし、ウチが手に入れた時に爺さんが酒造ろうと思たけど不味そうやからやめたってくれたんやソレ」
「私ソレ扱い!?」
妖精さんがようやく落ち着いたようで、一所にホバリングし始めた。
ハエのように素早い動きで何処に居るかすら把握しにくかったけど、容姿は人間の女の子をチョウチョサイズにして触角とトンボの羽を取りつけた姿のようだ。触角は額のあたりからみょいんっと一対生えて、ワラビみたいにくるくる巻かれた状態になっている。
「まぁどうでもいいけど、とりあえず持ち主変わったんで開放しました。貴女は自由です」
「え? あ、そう? ありがと?」
出て来たばかりで現状を把握できてない妖精さんが戸惑いながら了承する。
そして周囲をしきりに見回し、困ったようにふわりと飛び、旋回しては元の場所へと戻る。
「あのさ、ここ、どこ?」
「俺の家ですね」
「家!? 家!? いえってあれでしょ、六畳一間お風呂付とか、そういうのでしょ!? なんなのこの遊戯室みたいな場所、めっちゃくちゃ広いじゃない、これで、家!? お風呂は? キッチンは? 畳はぁ!?」
ソレを知ってどうするというのだろうか?
多分まだ混乱してるなこの妖精さん。




