164.闇のゲーム
「ほならウチから行くぜぇ?」
闇のゲームが始まった。
正直見た目はただのカードゲームなんだけど、内容は結構複雑だ。
自前のカードから手札となるのは5枚。
常に手札には5枚のカードが来るらしく、使ったカードの分次のターンで補充できる。
とはいえ、50枚全てのカードを使い切ってしまうと負けとなるので、多くのカードを使えばいいと言う訳でもない。
自分の持ち札は50枚。最初の5枚は手札となるから山札に残っているのは45枚。
先手の対戦相手は場にキャラクターとトラップ系を出すだけで一度終了。
俺のターンから攻撃が行えるようになるのである。
7000のHPを削るか山札が無くなるまで互いのターンを繰り返すのがこのゲームである。
「ウチはこの濁声の戦士を場に出すでぇ。そしてこのカード二枚を場に伏せてターンエンドや!」
おお、フィールドに小さな濁声のおっさんが現れた。
なぜか服装が古代の毛皮服だし、石の斧持ってるけど。
「次は俺のターンか……」
さて、俺の手札は……
キャラクターはコトリさんがいる。
でも他のカードは全てトラップや補助カードだ。
初手からコトリさんとかツイてるな。
んじゃ、これで勝ちじゃね?
「俺はコト……「トラップ発動」はい?」
「トラップ、冥界送り発動。このターンに相手がキャラクターを設置した時、そのキャラクターをカード墓場に送る! はは、テメーのキャラは場にすらでられねぇってなぁ!!」
嘘だろ!?
「ん? おっとなんだこの箱? おいおい戦利品までくれんのかよ?」
戦利品? あ、コトリさんのカード見るの忘れてた。
えーっと、このキャラクターが墓場に送られる時、相手にドロップ品としてコトリバコを入手させる。コトリバコの効能はコトリバコカードと同じである。
そのコトリバコカードの効能が見たいんだけど!?
「さー、どうするんや? このトラップは一回のみだからな、もう使えねぇぜ? キャラカードもう一回使うかぁ? ああいや、出せなさそうな面だなぁ、ひゃはは!!」
うっわ、あくどい顔してやがる。
だが、確かにキャラカードは出せない。
残ったカードは?
融合カードが一つ。イケニエ召喚カードが一つ。
増殖カードが一つ。最後の一つは……ユニコーンの角カードか。
融合はキャラ二体が居ないと無理。
イケニエもイケニエになるキャラが居ないと使えない。
増殖についてもキャラが居ないと使えない。
とりあえず場に全部伏せよう。
最後の一つは、プレイヤーのHPを完全回復できるカードか。即死以外のダメージなら一度喰らった方がいい、のか。
「場に四つのカードを伏せる。ターンエンド」
「おいおい、マジかよ。神引きだなァ? 唯一のキャラカード墓場行きしちゃった? かっわいそー。ウチはその間にキャラ増やしてぇ。格闘女子のかーぁど。ひゃはは、これで一気に4000ダメー……あ?」
場に格闘女子とやらが出た瞬間だった。
格闘女子は血を吐き散らしてその場に倒れ、カードは自動的に墓場へと送られる。
「あ? なんだ? おい、今のなんだよ!?」
これ、どう考えても、コトリバコの呪い発動してない?
まぁこっちの有利になるようだし、黙っとこう。
「クソ、魔法老女お初、こいつで3800ダメージを……なんでだっ!?」
老女なのに魔法少女服を着たお婆さん。場に出た瞬間血を吐いて死亡。
うん、これ、出会った人がカードキャラになるんだよな?
つまり、このゲーム内にお初さんが存在している……お、恐ろしい容姿だったぜ。
「クソ、生徒会長大蔵、攻撃力はかなり劣るがこれでどうだ!」
白いガクランの男が場に出てくる。
男だったからか即退場はなく、先に出ていた、戦士共々俺に3000のダイレクトアタック。
「何が起こったかわからんが、もうあと4000しか体力がねぇーぞ」
「うるせぇさっさとターンエンドしやがれ」
「はは、そう怒るなよ。場に一枚伏せて、ターンエンド」
こちらのターン。五枚引いて出て来たのは、芽里さんのキャラカード、ハナコさんのキャラカード、補助カードとして芽里さんの携帯電話、夜の学園肝試し、六角迷宮巣
「まずはハナコさんを場に「トラップ発動!」」
「ひゃはは、悪いなぁ、冥界送りのカード、これ、一枚じゃねーんだわ。本来なら一枚しか手に入らねーんだけどよ、闇のゲーム主になるとカード編成が可能でさぁ! 負けた相手のカードからいくつか貰えるからどんどん溜まってんだよ、冥界送りカードがよぉ!! つまり、毎回墓場送り確定ーっ」
ハナコさんが……墓場?
「ひゃははははは。悪いなー。また場にキャラ出せなかったな。ごっめーん」
ハナコさんを、墓場、送り?
「ほらどーする? もう一枚キャラだすー? でも残念。次も冥界送りでーっす。ぎゃはははははははっ。残念だったなぁ、お前は一生場にキャラ出せずに敗北決定ーっ。悔しい? 悔しい? でもざぁーんねん。お前は何も出来ずに負けんだよっ、しかも女三人奪われてなァ!!」
ハナコさんを、殺した……な?
ブチリ。
切れてはいけない何かが、盛大に切れた音が、脳内に響いた。
そんな……気がした。




