163.突発の特殊イベント
「と、言う訳で、追加発注お願いします」
今、俺はアラクネの装飾店にやって来ていた。
いやぁ、さすがに新規参入だからコトリさんの水着だけありません、じゃ可哀想だからね。
一度寝たら頭すっきりしたというか、忘れてた事を思い出したというか、コレやっとかないとってことが頭によぎった訳だ。
その一つがこれ、コトリさんの水着購入である。
幸い、森探索でいろいろ倒したおかげでお金はかなり溜まった。
アイテムもまた溜まってるけど、この前整理したばっかだし、また今度でいいだろう。
「まさか追加があるとは思わなかったわ。まぁ作るけど」
呆れた顔のアラクネさんに代金を前払いして発注する。
今回はこれだけのつもりなのでコトリさんと二人で出かけようと思ったんだけど、デートなんぞさせるか、っとスレイさんと芽里さんが同行してきた。
別にデートのつもりはなかったんだけど、コトリさんは明らかに舌打ちしてたよね。
で、結局恋人繋ぎを強要してきたコトリさんと渋々手を繋ぐと、逆の手をスレイさんが取って顔を真っ赤にしながら恋人繋ぎ。
芽里さんはまさかの後ろから飛び乗って来ておんぶ状態である。
垢BAN系の警告が来なかったのでそのままにしてるんだけど、この状態維持するのすっげぇ恥ずかしい。
いや、男として冥利に尽きるってくらいにモテてるんだけどさ、周囲からの突き刺さる視線が危険すぎるんだ。
たまに混じってる親衛隊が特にヤバい。三人が手繋ぎしてなかったらおそらく四面楚歌で同時に暗殺者が襲って来ていただろうことは想像に難くない。
用事を済ませた俺達は装飾店を出る。
そのまま亜人街を通り抜けて一般人が闊歩する商店街へと戻って来た時だった。
なんか、人垣ができている。
歓声が上がっていることから何か中心でやってるんだろう。
俺達には関係ないので通り過ぎよう、と思ったのだけど、中心から声が掛かった。
「そこのハーレム野郎、待ちぃ」
無視して行っても良かったんだけど、周囲の人々が一斉にこちらを向いて来たせいで、思わず止まらざるをえなかったのだ。
仕方ないので立ち止まって人垣の中心からやってくる人物を待つ。
「よぉ、兄ちゃん。次のタゲはあんたや!」
「はぁ?」
「この闇のゲームに選ばれた以上は逃げ場はないでぇ。恨むんならウチの前で三人も女従えて歩いとったジブンを恨みぃ」
エセ関西弁の少年がにやりと微笑む。
この少年、なんで髪が逆立ってるんだろう?
無視して行こう、と思ったのだけど、何故か体が動かない。
どうやらこの場から逃げだすことは出来なくなったらしい。
コトリさんが消す? とか言ってくるけど、消さない方向で。
「悪いが闇のゲームの指名は絶対だ。そして逃れる術もない。さぁ。観念してそこの台に向いな」
あーっもぅ、いきなり何なんだよ。
あえて俺を選ぶ理由ないだろ全く。
言われた中央にある台を見る。
どうやらカードゲーム用の台座のようだ。
わざわざ分かりやすいように枠線がいくつか描かれている。
補助カードとかはここに置けってことらしい。
「席に着いたな。では改めて説明しよう」
はぁ、なんでこんな事に……
スレイさんが台座に興味を覚えたようで、一人、前後左右から台座を調べ始める。
芽里さんはこの隙にっと空いた俺の隣に陣取る。
コトリさんは良く分かってないようで、俺の隣でにっこにっこしている。
「こいつぁ、闇のカードゲームさ。勝てば全てを手に入れ、負ければ全てを失う、テメェの女三人、ウチが勝ったら貰い受けるで!」
なるほど、こいつが俺に目を付けたのはこの三人を手に入れるため……か。
「俺が勝った時のメリットがないようだが? 当然見合うくらいのメリットがあるんだろうな?」
「当然や、闇のゲームである以上負ければ宣言した欲しいモノに見合ったモノをウチ自身が持つ物から自動で支払われる。くっくっく、だが、ウチは今まで負けた事がないんやでぇ!!」
ルールが説明されていく。
このゲームでは、カード50枚を使って相手と対戦する。
プレイヤーの持ちHPは7000で、カードの持つ攻撃力で直接攻撃を受けると、攻撃力分の体力が削られて行く、HPが無くなった時点でそのプレイヤーの負け。
カードは自分が今まで体験した過去に出会ったキャラクターが25体。そしてイベント用補助用が25種。基本強い順にカード化されるらしい。
って、それ滅茶苦茶俺のカード強くない? いいの?
「くっくっく。そう怯えんなや、浮遊霊しかないカードだろうとそれなりに闘えるんや。まぁウチのカードに勝てるデッキなんざまずでねぇーやろうけどなぁ!!」
おお、手元にカードが出現した。これはちょっと楽しいかも!?
ふむ、ふむ、ふむむ……いや、凄いな。ちゃんと今のレベルを体現してる。
しかもほほぅ、こんなコンボも使えるのかぁ。果たされなかった融合、か。
いいね。楽しそうだ。




