160.呼啼村怪異譚5
「ふぅ……」
一度真上を見上げ、目頭を軽く揉む。
ちょっと、疲れたのかな?
うん、もう一度確認しよう。
邪神霊? 全ての女を呪うモノ?
待って、ステータスがおかしい。
レベル150? 俺達の最大レベル50行ってないんですけど!?
レギオンの倍近いレベルあるんですけど!?
いくらなんでもヤバすぎだろ。
なんでテイムできた? あ、待て、神降ろしとジャイアントテイムのせいか。
「お、おいヒロキ、どうだったんだ?」
「えっと、コトリさんレベルだけでも教えていい?」
「まぁ、そのくらいでしたら。代わりに手を繋いでください旦那様」
なぜか恋人繋ぎすることになりました。
なぜこうなった?
「で、その娘のレベルは?」
「……150」
「ん? 50か、ハナコさんよりレベル高いん……え? 50、だよな? 50だって言ってくれ!?」
「150」
「意味不明過ぎる!? レベル高過ぎだろッ!?」
「あ、あぶねぇ、戦ってたら絶対全滅じゃん」
「ダイスケ、マジ焦らすなよ。踏み込んでた時マジヤバかったからな」
とりあえず民宿に戻るか?
と、思って皆で宿へと戻って来たんだけど。その民家の前にお婆さんが立っていた。
あの皺苦茶のお婆さんだ。
やっべ、見られた。
俺達が社から出て来た所ばっちり見られた。
お婆さんは怒り狂ったような顔をしていたが、俺のすぐ隣にいるコトリさんを見て目を見開く。
「あ、ひゃ、ひゃああああああああああああああああああああっ!? た、祟り、祟りじゃぁぁぁ、コトリ様の祟りじゃあぁぁぁ!? 終わる、世界が終わるぞぉぉぉ。滅びや、滅びが来るぞぉぉぉっ」
あまりにも恐怖したからか、腰砕けにその場に倒れ、後ずさりし始めるお婆さん。
やはりコトリさん見ただけで何者かは分かるのか。
「さ、去れ、立ち去れぇい愚かな者どもぉ、お前達が災厄を持ち帰るのだ。世界はお前達の手で終わる、愚か者、愚か者どもがぁーっ」
「こりゃダメそうだな」
「えっと、帰ろっかコトリさん」
「ん。私達の愛の巣へ」
積極的過ぎて困る。
未知なるモノさん。どうしよう?
「るせぇ、責任取って面倒見ろ。お前ンとこなら養えるだろ」
「まぁそうだけども……ま、いっか」
とりあえず、深く考える必要ないだろうし、帰るか。
深夜の森を帰るのはちょっと面倒そうだけど。
「まぁ、帰るまでが冒険だし」
「というかコトリさん居たら戦闘にならんだろ。さっさと帰ろうぜ」
「了解」
と、いう訳で、夜間抜けだしたら民宿に帰れなくなって村を出て行けと言われたので森の中通って家に帰ることになった件。である。
「はぁ、結局夜の森歩くのかよ」
「皆気を付けて、夜の敵はレベルが上がって……」
「邪魔」
近づく悪霊たちはコトリさんによる呪殺術の餌食となりすぐに死んでいく。
なんか悪霊なのに苦しんで消滅していくんだけど、絶望感しか無い顔で消えていくのはさすがに怖いなぁ。
野生生物は何かしら感じてるんだろう。近づいてくる気配すらなく遠巻きにコトリさんを見つめている。
一歩でも近づくと物凄い速さで逃げてくんだ。
熊さんですらも、である。
「やべぇ、夜の森とか普通に死亡フラグしかねぇはずなのに、無茶苦茶安全地帯じゃね?」
「近づいてくる敵はコトリさんが率先して潰してくからな」
「あはは、ヒロキさんとのデート邪魔するなってことだろ。僕らも邪魔しないようにしようね。マジで」
「なんっつーか、あいつばっか戦利品増やしたなぁ」
「ん? そんなことはなかろう。主らもかなりのレベルが上がっているはずだ」
「確かにパーティー組んでるから経験値は増えてくけども」
「実感わかねぇよ。でも、すげぇな、俺のレベルもう30だぞ」
「言われてみればっ!? え、こんな上がるの!?」
「そこらの悪霊の平均レベル帯だからな。こいつ等地味に30レベル越えてるぞ」
「うげ、マジだ。こんな場所、コトリさん居なかったら詰んでたじゃん!?」
ほんと、夜のステージってかなりレベル差があるよな。
とりあえず、コトリさんのレベルが突出してくれてる御蔭で俺達も強い場所でパワーレベリングすれば一気にレベルを上げられるな。
廃病院、行っちゃおうか。あそこのレベル帯は80とかそれくらいらしいし。
確かハナコさんのレベルが50行くか行かないかくらいだったはずだからコトリさんと一緒なら丁度良いくらいの高レベル帯ではなかろうか?
「うほっ!?」
「邪魔ッ」
ああっ!? なんか毛むくじゃらの生物が死んだ!?
コトリさんアレ生物。しかもこっち来る気配なかった奴だよ!?
どうしよう、何もしてない生物殺してしまった。
しかし、人型で毛深い生物なんて森にいるっけ? ゴリラか?




