159.呼啼村怪異譚4
「全員警戒しろッ!」
不穏な空気が漂い出した。
恐らくボス戦だと思ったのだが、ダイスケが体勢を立て直した後も変化は無い。
不安に思って互いにステータスを確認し合うが、呪いは媒介していないように思う。
「なんで?」
「ん?」
「どうして私を庇ったの?」
「ここにあるコトリバコ、知らない訳じゃないだろ。女の子には子供が出来なくなる呪いが付与される。だったら不用意に君を近づける訳にはいかないじゃないか。折角こんなに可愛い女の子なのに、子供を持つことができなくなるなんて可哀想過ぎる」
「……私が、可愛い?」
「ん? そうだけど……」
「こんな骨ばった体なのに?」
「華奢なだけだろ?」
「こんなに黒い目をしているのニ?」
「日本人らしくていいじゃないか」
「髪だって、コンナニ漆黒で……」
「艶やかな大和撫子だよね」
「ん? 待て、ヒロキ、今お前は何と話して……」
え? 何ってこの女の子だろタヂさん?
「なら、ならっ、貴方は、私と付き合えるの!? こんな女と子作りできるの!」
「それは……俺にはハナコさんがいる」
「ほら、みなさい、やっぱり男ナンテ、オトコナンテ……」
「ただ、それでも君と子作りは、出来る」
俺は迷いなく抱き締める。
男性陣からゲスかよとかツッコミが飛んでくるが、今は待て。タヂさんの言葉で理解した。
「確かに俺にはハナコさんがいる。ハナコさんの為にこの世界に来たんだ。でも君を忌避する気は全く無いし、ハナコさんに出会っていなければ、君が最初に出会った女の子であれば、俺は君との結婚だって考えるよ」
「な、な……」
「あれが、ジゴロという生物か……」
「な、なんであんなことナチュラルに出来るんだあいつ!?」
「じゃ、じゃあ、そのハナコが許可するなら。私と子作りも、してくれるの?」
「え? ああ。それはハナコさんが許可するなら?」
「そう、約束できる? 約束できるなら、テイムして?」
―― ■■■■■さんが側室になりたそうにしている、テイムしますか? ――
ちょ、側室!? ええい、男は度胸ッ!
―― コトリバコのコトリさんをテイムした! ――
やっぱりかーいっ!?
「ふふ、コンゴトモ、ヨロシク、旦那様」
ニタァと深淵の覗く瞳で微笑むコトリさん。
呪い生物テイムしちゃった。ど、どうしよう。これ、ヤバいだろうか?
「えっと、コトリさん、知り合いの女の子たちに呪いを振り撒くのはやめてね?」
「貴方が旦那様であるうちは」
あ、コレ絶対ヤバいフラグだ。
少し、待ってて、とコトリさんはすたすた社へと歩いて行き、黒いパズルチックな小さな箱を持って戻ってくる。
「あ、アレが、コトリバコ?」
黒いと思ったらアレ全部お札だ。呪いで真っ黒に染まってるだけだった。
たまにカタカタチャプチャプ鳴ってるのが怖い。中に何が入ってるんだ……
「私の場合こちらが本体なの。旦那様。私の部屋に、連れて行ってください」
そ、それ大丈夫なのか? 設置すると呪われるんじゃないの? 大丈夫?
「じゃあ、アイテムボックスに入れるけど、いい?」
「はいっ。あ、旦那様に抱きしめられてる」
え、そこで頬染めるの!?
「あー、その、嬢ちゃん。その坊主、思いのほかライバル多いが、本気でいいのか?」
「私の事を理解してなお妻としてお傍においてくださるというのだもの。まさか出来た子を取り上げるような男でもなし、ならば、誠心誠意尽くしますわ。私、貞淑な妻なので」
「ヒロキ、考え直した方がいいんじゃね? あいつからすっげぇ闇っぽいオーラがでてるんだが?」
「あ、アレがコトリバコ。女の子だったのか、アレなら俺も……」
「やめとけダイスケ、お前だと死亡フラグしか無いぞ」
「あ、そうだ。コトリさん、ステータス見せて貰っても大丈夫?」
「はい、私の全てをご覧ください、あ、でも他の方への公開はちょっと。はしたない女と思われたくは無いです」
多分誰も思わないと思うんだけど、嫌がることはやめとこう。
どれどれ。
名前:子取箱
種族:邪神霊 クラス:都市伝説ボス
二つ名:全ての女を呪うモノ、呪いの子取箱(イッポウ)
Lv:150
HP:21666/21666
MP:8793/8793
TP:5277/5277
GP:18330/18330
状態:普通
技スキル:
コトリの呪い: 女性特攻&赤子特攻を得る。任意の敵女性キャラにコトリの呪い(永続)を付与する
神視Lv80: この世ならざるモノを見ることが出来る。
呪殺術Lv80: 呪殺属性の遠距離攻撃。呪い、恐怖、即死付与
神聖浸食: 聖属性への攻撃特化。この属性攻撃を受け過ぎると堕天する。
呪殺結界Lv75: 自分周辺からLvmの結界を張る。結界に触れた敵に呪い、恐怖、即死を付与。
コトリバコ: その箱が開かれる時。■■■■■が■■■■■■となり、■■■が終わる。
物理無効: 物理攻撃が効かなくなる。
スキル拡張Lv4: スキル枠を五つ増やす。
精神汚染B: 見る者に精神汚染を与える。任意調節可能。
料理上手C: 料理が上手くなる。ランクにより上昇値が変化、Cで一般調理師の美味しさ
一族郎党皆殺し♪: 呪いたい対象の家に設置すると勝手に死滅します。ただし、コトリさんの気分次第
お、おお、おおお?
え? れ、レベル150? え?
ちょ、ちょっと待とう。一旦落ち付こう。
何が起こったのかちょっと理解出来ない。




