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158.呼啼村怪異譚3

「どう思う?」


 村長さんの話を聞いた俺達は、一度民宿へと戻った。

 どうやら村人達がイケニエ求めて俺達を殺しに来る村、とかではないようだ。

 この村の役割は呪いを封じる村。

 この村の者は既に呪いを受けており、彼らが外に出ることで呪いもまた拡散されてしまうということらしい。呪われた村の内部であれば死ぬこともないのだとか。ご都合設定かな?


 そしてその呪いについてだけど、どうやら村の奥にある社に封印された箱を触ることで呪われるらしい。

 その呪いとは、子供が出来なくなる呪い。現実世界みたいに一族郎党根絶やし、って訳じゃないらしい。

 うん、このゲーム世界だけだとこの呪いなら男性は受けても問題はなさそうな気がする。

 とはいえ受けたいと思える呪いじゃない。

 幸い男性には呪いはないらしいけど、媒介している可能性がある以上、ソイツを元にして関わった女性に呪いが拡散する可能性がある。


 つまり、俺が媒介してしまうとハナコさんが子供を産めない体になってしまうのだ。

 そんなことは断じてすべきじゃない。え? 幽霊だから元々産めない? 分からないだろこのゲームなら子供出来たりしそうじゃないか! 幽霊と人のハーフとか!

 と言う訳で、触ることは絶対にしないが、折角ここまで来たのに何もせず帰るのはどうだろう、ということで、とりあえず触らない方向で、ご神体見て帰るか。ってことになった。


 だから、草木も眠る丑三つ時。

 俺達は起き上がって互いに確認する。

 この世界の携帯電話での撮影と、俺の動画撮影を行って帰ろうということである。


 民宿をそーっと抜けだし村の奥へと向う。

 普通だとこういう奴らは祟りに遭ってそのまま亡くなるのがB級ホラー映画なんだけど。一応ゲームだし、生還するつもりだからな。イベントを興すつもりはさらさらない。


 そう言って、彼らは禁忌の地へと足を踏み入れた。

 その後、彼らを見た者は、いない……

 なーんてことにならないようにしないとな。これ、フラグじゃないからな!


「げぇ、なんだこりゃ」


 めっちゃくちゃヤバそうな雰囲気の寂れた鳥居が目の前に。

 赤だったはずのソレは真っ黒にしか見えない。というか、光に照らしてみたけど黒い。

 まるで呪われた鳥居みたいだ。

 石畳が社まで続いており、禍々しい雰囲気を絶えず洩らし続けていた。


「こりゃ、ヤベェな。ここまで呪いの塊になったのは初めて見たわい」


「レギオンよりヤバそうです?」


「あんなもん比じゃねぇな。おそらくレベル100越えだぞこいつぁ。さすがにお前らの手に余る」


「やっぱり絶対に開放しちゃダメなタイプか。とりあえず拝もう」


 コトリバコ様コトリバコ様。ちょっとだけ写真取らせて下さいませ。写真を撮ったらすぐに帰ります。決して物珍しさで来たわけではありません。馬鹿な奴らがここに来ないために情報を流すために写真が欲しいのです。おんあびらーうんけんそわかー

 おっと、二つ名と役職も変えとこう。

 二つ名は神降しとか? なんか社あるし神っぽいし。お化けなんて怖くない、にするか。

 この二つで……あ、いや、お化けよりはジャイアントテイムにしとこう。上手くいくとは思えんが最悪でも交渉はできる。呪いを解いて貰うこともできるかもしれない。

 クラスは拝み屋……あ、フラグ建築士になっちまった。さっさと変え直さないと


「何を、してるの」


「「「うぎょぁ!?」」」


 真後ろから掛かった声に全員が飛び退いた。

 って、なんでお前ら俺の後ろに!?

 未知なるモノさんも、怖い訳じゃないだろう、何してんのさ!?

 タヂさんだけだぜ驚いてないの。


「ちょ、ちょっとコトリバコを見に来たんだ。危険って噂だし、他の奴らが誤って触れないようにするためにも写真撮っとこうかと」


「そう、でも感心しないわ。そういうの、呪う側には関係ないわよ?」


 誰か、と思ったんだけど初顔だ。

 真っ黒い和服を着た黒髪の少女だ。

 ただ、真っ白な肌に深淵のような黒い瞳が恐怖をそそる。

 オカッパ頭という訳ではないがもみあげは切りそろえられていて、前髪は長めだ。目の半分くらいが隠れている。

 でも、年頃の女の子がこんなところに?


「ちなみに君は、この村の子?」


「……ええ」


「君こそ危なくないか? ここに祭られてるのはコトリバコ。女の子は子供が出来なくなるんだろ?」


「そうね。水子と獣の血で染まった呪うためだけに造り出された悪意の箱。貴方達はその呪いを解き放ちに来たのかしら?」


「いや、むしろここには誰も来ないようにしたかったんだけど、まいったな。これ以上は近づかない方が良さそうだし。君、コトリバコのこと知ってるならお話聞かせて貰ってもいいかな?」


「……ええ。そうしてもいいけど……もう、遅いかも」


「遅い?」


 はっと俺は背後を見る。

 俺の背後に隠れた未知なるモノさん、タツキ、アパポテト、そして、その一番最後にいるダイスケ。

 その足が、社の階段部分に、触れていた。


「ダイスケ!?」


「え? やべっ」


 驚いた拍子に体勢を崩したダイスケ、そのまま社側の階段に倒れ込む。

 咄嗟に俺は少女に飛び付くように抱きあげ、この場から距離を取る。


「君、早く逃げろ。コトリバコとの戦闘が発生しちまう」


 少女を安全地帯かどうかは分からないけど一定距離離れた場所に逃し、開放する。

 さぁて、こりゃもうコトリバコ戦確定かな。負けたら恐らく呪われる。

 ハナコさんと会えない呪いを媒介してしまう前に、倒すしか、無いっ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 出会った少女が呪いの本体・・・・・・・・・・ 森の中にある小さな社とその中にある祭壇と封じられた7歳位の小柄で痩せ細った幼女・・・・・・・ 幼女の容姿は、立ち上がっても床に付くか付か…
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