156.呼啼村怪異譚1
「と、いうわけで、本日のメンバーです」
「あー、マジか、騙された」
「はっはっは。ワシを誘ったから何かと思えば、そういうことか。まぁ男気は見せて貰った。今回は手伝ってやろうかいな」
「あのー、なんで僕等も参加してるんでしょう?」
「うぅ……アミノサンのいないパーティーなんて嫌だぁ……」
「まぁ男だけっていうパーティー戦も初めてだし、たまにはいいんじゃないかタツキ」
都市伝説コトリバコを見に行くために、男性メンバーを募りました。
知り合いに片っぱしから連絡、といっても殆ど知り合いがいなかったのでこんな面子になりました。
未知なるモノさん、タヂさん、タツキ君、ダイスケ君、アパポテト君の五人と俺で六人パーティーである。
万一があると怖いので女性陣はUFOに置いて来た。
あそこならマイネさんが居るし、ヒナギさんたちも放置されても問題はないでしょ。
なんか皆でショッピング行こうとか話上がってたし。
森の中を移動するのが結構大変だ。
何しろ幽霊に熊、イノシシ、蛇、スネコスリといろんな生物が襲ってくるのだ。
アパポテトが途中で急にその場に倒れた時は焦ったが、タヂさんが居てくれて助かった。
どうやら森の中にはヒダル神とかいうのが居るらしく、急に力が入らなくなったらお腹に何かを入れればいいらしい。
要するに何かを飲むとか食べるとかすれば動けるようになるんだとか。
ただ、自力では動けないので他の誰かにやって貰わないといけないらしいけど。
「はは、密林だよここ……」
「森しかねぇ」
辺りは木々とその合間から覗く木漏れ日しかない鬱蒼とした森。
たまに遠くに熊さんが歩いていたり、鹿がこちらを澄んだ瞳で見つめていたり、兎さんが目の前に飛び込んできて見つめ合ったり。
高低差のあるでこぼこ道なうえに枯れ葉が降り積もっているせいで平坦に見えるという最悪の道である。
正直山道それた道はもう歩きたくないなぁって思いました、まる。
どれくらい歩いただろうか?
たまに熊じゃない毛むくじゃらな生物が遠くに見えたり、タツキくんの好きな人がバケモノに暴露されてたけど……ああうん、俺もお前の好きな相手、覚ったぞーとか言われてハナコさんと暴露されたけど、周知の事実なので全く問題なかったよ。むしろ如何にハナコさんが素晴らしいかを教えてやったらバケモノが土下座で謝って来たくらいさ。
「アレが噂の村か?」
「えーっと村の名前は、【呼啼村】ああうん。それっぽい」
呼啼……子無き、子供が居なくなる村。そりゃコトリバコもありますわな。
というか、なんかコナキっていうと子泣き爺とか思い浮かぶんだけど、さすがに居ないよな?
「人が、居ないな?」
「カラスが鳴いてるのが滅茶苦茶雰囲気あるな……」
寂れた廃村のような村には、けっこうなカラスが鳴いている。
無駄に怖いなぁコレ。
人、住んでるのかコレ?
最悪怨霊の村とか、妖怪村なんて可能性もありうるぞ?
「よぉ来たねぇ」
村の敷地に一歩入った瞬間だった。
今まで何処に居たのかと思えるほどに老婆の声が響く。
思わず声のした方向を見れば、入り口側からは丁度柵や村の名前のプレートに阻まれて見えない位置に老婆が立っていたらしい。
村の敷地側に入ると、老婆がようやく見えるようになる状況で、腰が90度ほど曲がった皺苦茶で白髪の老婆が、片目だけ見える顔でこちらを見上げていた。
顔だけで軽くホラーだわ。
「ヒィッヒィッヒィ、よぉ来んさったここは呼啼村じゃぁ」
ひぃっ!? 目玉が飛び出るかと思うほどに見開かれた!?
顔だけでマジホラーだったこの婆さん!?
「しかし、男ばっがでこんな村に来るなんてなぁ、女子はおらんだか?」
「残念ながら俺らのパーティーには今いねぇなぁ」
「なんじゃぁつまらん。まぁええ。着いてきんしゃい」
老婆が率先して歩き出す。
腰が曲がり過ぎているのに無駄に素早く、なんというか歩き方がきしょい。
まるで無理して老婆を演じているような動きに、俺達は思わず警戒せずには居られなかった。
「ここじゃぁ、好きに使ってええぞぉ」
と、一つの民家の前で止まった老婆。
どうやら宿屋は無いらしいが民泊は可能らしい。
促されるまま扉を開く。
埃っぽい空気が鼻に来る。
これは、ここしばらく無人の廃屋だったのではなかろうか?
「ヒィッヒィッヒィ。なーんもねぇ村だけんどよぉ、好きなだけ滞在してくれりゃぁええぞ」
この婆さん、笑い声も怖いよなぁ。しかもカラスの声と相まってなんか余計にホラー感が混じってる。
「ああ。だけんど……コトリ様の社にだけぁ、近づくでねぇぞ? ありゃ男に意味はねぇがご神体だぁで、なぁ」
ひぃっ!? 最後に老婆が目を見開いた瞬間カラスが一斉に飛び立った!?




