152.鍛冶で水着は作れるか?
「いや、お前さん、さすがに無茶振りが過ぎねぇか?」
裏鍛冶屋のおっちゃんに会いに行くと、さすがにダメだったようで水着は作ってくれなさそうだった。
「女用の水着作れ、しかもその人数分? さらに人形用も? 一部は幽霊用? 鍛冶屋だぞここは。洋服関連は余所行きな」
「そう言われてもなぁ、こっちは素人なんだよ。防具として作れないかなって期待してたんだけど、やっぱり作成場所は違うのか」
「いや、まぁ作れるこたぁ作れるんだ、俺も鍛冶屋の端くれだからよ。だが、それなりのモンしかできねぇ。あー、ちくしょう」
頭を乱暴に掻き、何かを書き始める。
手紙かな? 地図も添えているようだ。
「ウチの知り合いのアラクネがやってる服装店だ。本来専属契約結んでるお前さんの受注に関しては俺が全てやってやりたいが、適材適所だ。水着関連はこいつに一任する。衣類系もだ」
なるほど、専属契約結んでてもその鍛冶屋にとって出来ないモノは知り合いの場所を教えてくれるわけか。いいのかな、まぁ向こうが紹介してくれたんだし、専属契約切られる訳じゃないか。
「なぁ、そこに依頼しても専属契約は継続でいいのか?」
「まぁ俺が紹介したんだしな。だがそこは服専門だ。鎧や武具は俺の店で頼むぜ?」
「当然。あ、そうそう、杖どうなりました?」
「おぅ。ソレだよソレ、回収しにくるっつって全然来ないから忘れてんのかと思ったぜ」
「いやー、なんかイベント盛り沢山でさ」
「ほぉぅ、どんなことやらかしたんだ?」
今まで体験したことをざっと伝える。
娘さんともどもうわぁ、といった顔になっていた。
「お前さん、いろいろ体験し過ぎじゃねぇか?」
「俺もそう思う。でも日々冒険ってのも楽しいだろ?」
「はっ、そりゃ確かに楽しそうだ」
「あ、そうだ。鍛冶屋でオーダーメイド作って貰うとしたらなんか必要なのってあんの? 持ち込んだりとか?」
「使える素材は俺が吟味してやる。とりあえず鉱石系。あとは特殊な物だな」
「呪いの塊とか?」
「妖刀とか造るのか? やめとけ、呪物なんざ扱うより普通の剣のがよっぽど使える」
「あー、やっぱこの塊は使えそうにないか。アイテムボックスの肥やしだなぁ」
「持ってる事に驚きだ」
「レギオンのドロップ品だよ。あ、そーだ。せっかくだからコレ売るよ、なんか魔改造できない?」
「銃か? 初めて見るな」
「宇宙人の持ってたレーザー銃だ」
「何個かあるなら三つほどくれ。いろいろ試してみる」
「おっけー」
銃を三つ差し出す。
「ああ、それと、折角だ。ファイの水着も作ってやってくんねぇか? どうせプールか海に行くんだろ? コイツにも体験させてやってくれ」
おっと、娘さんが同行者に加わるのか。
なんか、このまま一緒に行動し出すような気がしてくるなぁ。
「えっと、よろしくお願いします」
メリーさんが芽里さんになったので、一番背が低いメンバーとなったファイさんと挨拶を交わし、俺達は教えられた場所に向う事に……
「ボーっ!」
「ボー!」
「ボー?」
おい、なんだこれ?
鍛冶屋へファイから出た瞬間、ネアンデールの戦闘員が街人を襲っている状況に遭遇した。
すぐに正義の味方達に連絡を入れておく。
「皆、戦闘態勢! ファイさんは……芽里さん、稲荷さんフォローお願い」
「まぁ、今回は慣らしも必要だしね」
「うむ。補助要員としてこちらの守りは任せよ」
戦闘員はドロップ落とさないからなぁ。
怪人がちょっと微妙なドロップするだけか。
確か前のネアンデール怪人は狼さんバッヂだっけ?
今回の怪人は……蝙蝠男か。
レーザーアタァック。
「ぎゃあぁ!?」
あ、一回じゃ死なねぇ!?
「なんだ今のは!? き、貴様か!!」
「ふはは、後ろがガラ空きだ馬鹿め!」
おっと思わず悪役っぽい台詞を言ってしまった。
「おのれ怪人殺しめ! ここであったが百年目! 貴様の首を手土産にしてくれる!!」
「おだまりやがれ蝙蝠野郎。てめぇのバッヂを貰ってやんぜ!」
戦闘が始まった。
やっぱり秘密結社が空白地帯に少しずつ進出してるみたいだな。
「私の庭を侵略しようとは、許さんぞネアンデール!」
「うらー、おらと相撲取るだーっ」
「アタシのなえどこー」
だからダメだってアイネさん!?
「ええい、なんだこいつらは。こいつらが出て来ただけで戦線が!?」
蝙蝠男が焦った顔をしている。
まぁ、そりゃそうか。
戦闘員が一気に消えてってるもんな。まだ正義の味方一人も来てないのに。
「ええい、おのれ怪人殺しッ! 貴様さえ、貴様さえいなければっ!」
「いや、俺が居なくてもあんた討伐されてるだろ」
「煩い、とにかく死ねぇ!!」
「会話、しようぜ!?」
急に語彙力が消えて突撃して来た蝙蝠男。
直線で迫って来たので迷わず額を打ち抜いた。
いや、弱っ!?
 




