145.ヒロイン危うし?
「め、メリーさーんッ!!」
「へ? ぎゃぁーっ!?」
俺は余りの感動に思わず抱きついた。
ぎゅぅっと力を入れると芽里さんが悲鳴を上げる。
「ちょ、ま、ギブギブ、生身の体から何か出ちゃうっ、出ちゃいけないの出ちゃうから」
「ちょ、ちょっとヒロキンさん落ち着いて。何かよくわからないけど異性に抱きつくのはマズいでしょっ」
あ!? 嬉し過ぎて思わず。
慌てて芽里さんから離れる。
セーフ。今のは下心がなかった御蔭でおとがめ無かったらしい。
というか、メッセージすらこなかったな。
「えーっと、ごめん芽里さん」
「い、いえ、まさかここまで歓迎されるとはこの私も想定外だったわ。ふぅ、改めて。メリーさんこと芽里よ。よろしくヒロキ」
「ああ、よろしく芽里さん。この場合メリーさんじゃなく芽里さんの方がいいんだよね?」
「ええ。この体の時は芽里でいいわ」
ん? この体?
「とにかく入口で立ち話もアレでしょ。居間まで向いましょ」
「ああ、そりゃいいけど、家族はいいのか?」
「あら、気付いてなかったの? 私はもう天涯孤独と言う奴よ。施設に入れとか言うから病院から逃げて来たわ」
なんてことを!? いや、でも、施設より俺達の元に戻りたいと思ってくれたんだ。
「芽里さん」
「何よ?」
「これからも、よろしく」
俺は左手を差し出す。
「私をテイムしたんだから最後まで面倒見なさいよヒロキ。その……よろしく」
その手を取って、芽里さんあらためメリーさんが正式に味方に加わったのだった。
……芽里さん、なんか顔、赤くない?
「ふむ。ハナコよ、なんか、ヒロインの座、危うくないかの?」
『な、ななななに言ってんの!? 私は別にヒロキの彼女とかじゃないし。ヒロインじゃないわよ』
「そうか? なんだか嫉妬のような目をしておった気がするが?」
『そ、そんなわけ無いじゃない』
「ならばいいが、ヒロキは意外とモテるようじゃしなぁ、気が付いたら他の娘に取られておるかも知れんぞー。ヒロインの座と共に」
『そ、そんなこと、無いわよっ』
そうだそうだ。俺がハナコさん大好きなのが変わるわけないだろーっ。断固抗議だよ稲荷さん。
「そんじゃ芽里さん、こちらにどうぞー」
「案内お願いねー。といっても自分の家みたいなもんだけど。あ、そだヒロキ、また後でいいから私の元の家から私物回収したいの、お願いできる?」
「えーっと、あそこって市役所に売られてるよな。回収できるのか?」
「え? あー、どうだろ?」
「まぁそれに関しても居間で相談しようか」
芽里さんを居間へと案内すると、結構な面子がそこに揃っていた。
なんでキカンダーさんとグレートマンさんもこっちにいるの? いや、別にいてもいいんだけどさ。
「あらためて、皆初めまして、元メリーさんこと芽里です」
とりあえず挨拶から行い、皆に状況を説明する。
マイネさんたちはメリーさんイベント知らなかったみたいだから、へー、そんなことあったんだ。程度ながら驚いていた。
「ふっふっふ、まさかの私も人型形態を手に入れたのよ!」
いや、人型というか、まんま人に戻ったというか。
「ちなみに幽体離脱したらメリーさんとして動けるわよ」
マジっすか。多分使いどころがないと思うけど?
「んで、皆揃って何してたの?」
「いやー、なんかヒロキたちがばたばたしてたから何があってもいいように待機?」
ああ、俺らの行動に気付いて皆ここに集まってたのか。
「それで、ヒロキ、今日は何すんの?」
「ああ、うん、何しようか考えてた時に芽里さんが戻ってきたからね。折角だし皆にも決取って貰おうかな。今予定されてるのはこんなところだよ」
ホワイトボードに書かれたままだった、これからやる事、を皆に見せる。
おっと終わったのは消してっと。芽里さんの予定も追加だ。
七不思議見ていく
遊園地チケット 皆で遊びに行く
虫相撲大会
芽里さんの私物回収 市役所で可能か聞く
都市伝説探し
改造希望者を募る 方法模索から
プール行く
ディーネさんのアイドルデビュー
幻想生物巡り
アイネさんの仲間、宇宙人を見付ける
「と、まぁこんな感じ?」
「なるほどねー。やりたいことリストかー。私もやろうかな。正義の味方とやりたい事リスト」
「んー、おねーさん的には都市伝説探しかなー、言った手前」
「終わったメンバー少ないからのぅ」
「姉上はどれがいい?」
「私か? ふむ……せっかくだし私物回収でいいのでは?」
「まぁ芽里さんが帰って来てくれたし、芽里さん優先でいいか」
「あれ? なんかおねーさん適当に流されてない?」
「気のせい気のせい。よし、そうと決まれば市役所へGoだ」
「あー、だったらおねーさんはぱーっす」
「おらもタヂさんと相撲予定だで」
「ふむ。ではワシも今日は虫相撲の練習をしようかの? アイネよ、行くぞ」
「あれ、ワタシの予定決まってた!?」
ちょ、なんか数人参加しない感じですか!?
別行動って何気に初なのでは?
まぁ、皆もやりたい事があるってことみたいだし、暇な人だけ手伝って貰うか。




