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140.彼女が向った場所

「ここよ」


 メリーさんに案内されて、俺達は主の居なくなったらしい家の前へとやって来ていた。

 一応、理由を話して市役所の管理AIさんにご同行頂いた。

 彼、空き家とかの管理もしてるらしいし、下手に不法侵入して警察に捕まったりするよりは役所監視のもとで調べた方がいいと思って連絡したのだが、意外と適した方法だったようだ。


「なかなかの判断です。私が居れば確かに自由に空き家に入れますよ」


「空き家じゃなかったら犯罪っすか?」


 スーツ姿のグラサン眼鏡と化したどっかのシークレットサービスか何かにしか見えないおっさんAIに尋ねる。


「当然でしょう? 人の家に無断で侵入するのは犯罪です。とはいえ、ここならば大丈夫ですね」


 あ、そっすか。

 大丈夫ってことは空き家でいいらしい。


「では鍵を空けますので少々お待ち下さい」


「鍵を空けるってことは既に管理は市役所側ってことですね」


「ええ。すでに家主から売りに出されている物件です」


「売りに?」


「ええ。なんでも借金が膨れ上がったせいで夜逃げ同然だったようで、ここもなんとか売りにだすことで資金調達を行おう、としたんだとか?」


「なんでそこで疑問形なんすか」


「情報が途切れてるんですよ。本来新天地に着いてからここの売値を告げてくれる手はずだったんですが、こちら売り値を付ける前に連絡が途切れ、放置状態の物件なんですよね」


 おそらく移動途中にレギオンに遭遇した事で呪いを受けたかその場で殺されたとみて間違いなさそうだ。

 扉を開き、家の中を調べてく。

 しばらく誰も住んでいなかったことで埃が沈殿している。


 せっかくなので、室内を捜索。

 皆で手分けすることで手早くすませる。


「だいぶ慌ててたみたいだな。生活臭が抜けてないぐらいには残ってる」


「おそらく借金取りから逃れたかったんだろうな」


 しかし、借金取りから脱げて新天地を目指した結果、レギオンのいるトンネルに突っ込み帰らぬ人となった。


「ヒロキ……そこ、私の主人の部屋」


 女の子らしい子供部屋。

 置き去りにされた熊のぬいぐるみや他のヌイグルミたちが埃を被ったまま、主の帰りを待っていた。


「……ただいま皆。それから、ごめんね、主人はまだ見付からないの」


 懐かしい思い出を紡ぐように、メリーさんはいとおしげにヌイグルミ達に挨拶を交わす。

 きっと、彼らにも主人の発見報告を届けたかったのだろう。

 残念ながら未だにソレは叶わないようだが。


『ヒロキ、こっち来てくれる?』


「ハナコさん?」


「これ、不自然に落ちてる地図見付けたんだけど」


 ハナコさんに案内されて見に行った場所には、カルカさんとスレイさんが待っていた。

 二人して地図を見ながらうんうん唸っている。

 イベント用の地図かな?


「その地図がどうしたの?」


「おお、ダーリン。ここを見てくれ」


「ここ?」


 そこは田舎町の一か所だった。

 赤ペンで丸された場所は、どう考えてもこれから向かう新天地だろう。

 しかし、こんなあからさまな物残して良かったんだろうか?

 絶対すぐバレて追ってこられるよなぁ。


「次の目的地は決まったな」


「ここも空き地だったりするんだろうか? あの、市役所のAIさん、ここも行って大丈夫ですか?」


「まぁ問題はないですが、恐らく空き地のままですよ。まだ連絡受けてません」


 つまり、向こうの土地を買ったという連絡はまだってことか。

 となると、やっぱりトンネル通ってそっちの目的地に向う途中で……

 いや、まだ決まった訳じゃないからな。


 それからもうしばらく空き家となったメリーさんのご主人の家を探索したものの、大したものは見付からなかった。

 あとは目的地に居るかどうか。

 幽霊でも居てくれるなら出会えるはずなんだけど……


 市役所のAIさんを引きつれて、俺は田舎の街へと向う。

 目的地は空き地、ではなく空き家だった。

 一応家は建っていたようだ。

 ただ、築何十年のボロ家だったのでいつ崩れてもおかしくない状態。

 

 ちょっと覗いて見れば、どうも幽霊屋敷になっているようで、内部に幽霊さんが闊歩していらっしゃった。

 とりあえずハナコさんが彼等に話しかけてくれたことで友好的に情報を集められたんだけど……やっぱ来てないって。


「こうなると、やっぱりあのトンネルで死んだ……ってことなのかしら?」


「それはわからないけど、あそこの幽霊たちに聞いてみるのは手かもしれないな」


「ああ、そっか、ハナコみたいに浮遊霊から情報集めればいいのか」


「そういうこと、あのトンネル付近にいたんならメリーさんのご主人さんが通ったかどうかも覚えてるかもだし、聞くだけ聞いてみようか」


 と、いうわけで、市役所のAIさんとは別れを告げて、俺達は峠にとんぼ返りするのであった。

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