134.役者が違うんだよ
「嘘ッ!? 私の魔法が消された!?」
「テメェ、何をした!?」
「そもそもの話、何時から俺のテイムキャラがテケテケさんだけだと思ったんだ?」
「何? ッ!? まさか!」
「役者が違うんだよ悪徳大根役者ッ」
アイネさんが隠蔽を解き、スレイさん、カルカさん共々姿を現す。
ネネコさんも一緒にいたのか。全員やる気満々ですなぁ。
「ちょ、ちょっと何その数ッ!?」
「あんまこういうことやりたくないんだ。弱い者イジメっぽいから。でも……ハナコさんとゆかいな仲間達、やっておしまいなさいっ」
「誰が愉快な仲間達よ!? ツチノコ、行くわよッ」
背中から飛び出すツチノコさんとそれに飛び乗るメリーさん。
さらに稲荷さんが実体化して風が渦巻く。
『あら、この二人レッドネームじゃない。既にプレイヤーキラーだから遠慮はいらないわね』
「ケケケケ、それじゃあ、全力で呪いに行こうかァ」
「それはいい事聞いたわ。都市伝説の恐ろしさを教えてあげるっ」
「苗床、していい? いい? ダメ?」
アイネさんはホント止めて。それいろいろヤバそうだから。
そして、ここから先は、もはや蹂躙、否、リンチといってもおかしくない、圧倒的多数による容赦ないPKKであった。
後には二人が持っていたドロップアイテムが散乱する結果となったのである。
「というか、あの二人出てこないな。ちょっとマイネさー、あれ? どったのマイネさん」
二人が部屋に入ったまま出てこなかったので部屋のボタンを押すと、すぐ目の前にマイネさんとキカンダーが待っていた。
「外側から鍵掛けられて開かなくなってたのよ。あんたがそっちに居てくれてよかったわ」
「ところで、あの二人は?」
「あー。それが」
キカンダーさんに倒しちゃったこと言っていいんだろうか? と思いつつもしっかりと起こったことを告げる。
恐らく、この部屋はトラップ部屋なのだろう。
一度入ったら出てこられなくなる自動で鍵のかかる部屋。
解除するには外から開けなければ出られない。
つまり、俺も一緒に入っていれば、あの二人に放置されて一生この部屋の中で過ごすしかなくなる詰み状態にされるところだったようだ。
さすがにトレジャーハンターか。この辺りのトラップはしっかりと調べて自分に有利な行動が取れるようにしていたらしい。
とりあえず、アイテムボックスにドロップ品全部詰め込むか。
にしても、あいつ等バックパックに一杯荷物持ってたけど、プレイヤーならアイテムボックス使えばいいのでは?
「と、思ったんだけど?」
「レッドネームになるとアイテムボックスが使えなくなるのよ。だったわよねハナコ?」
『ええ。PKへのデメリットの一つだったはずよ。それでも悪役ロールするために、なんでかPKになるプレイヤーがいるみたいだけど』
「それでバックパックなんか持ってたのか」
「まぁ、しばらくは死亡によるデメリットのせいで動けないでしょ、今のうちにこの遺跡を攻略してしまいましょ」
「遺跡じゃなく元秘密結社のアジトだけどな」
それからしばらく、俺達は罠を解除し、時に受け止め、時にひっかかり、なんとか最深部と思しき場所までやってきた。
うっわ、深海って感じの何とも言えない空気だな。
「ここが終着点か?」
「あっちにまだ部屋があるわね。恐らくここで首領と正義の味方との決戦があったんでしょ」
「それで、倒した後のアイテム等があの部屋か。となると、何もない可能性も高そうだなぁ」
せっかくなので中央にあった黒皮の玉座も頂いておく。
何かに使えるでしょ。
キカンダーさんが呆れていた。
そんなモノまで頂いて行くのか、という何ともがめつい相手に対する目をしている気がする。
ち、違うんだ。だってこの椅子カルカさんがモノ欲しそうな顔してたからッ。
扉を開き、最後と思しき部屋へと入る。
あ、宝箱が六つある。
しかも開けた形跡が無いぞ?
「恐らく正義の味方だけで倒したのだろう。君達のようにここまで探索することはなくさっさと帰ったのだろうな」
「ということは、放置してたらあのトレジャーハンターたちが発見してたわけか」
「犯罪者に見付かる前で良かったわね。さっさと回収しましょうか。三つずつ行きましょ」
「了解」
俺とマイネさんで三つづつ宝箱を開く。
お、なんか武器見っけた。
こっちは服装かな?
それからこいつは……書物? あ、召喚の書だ!
「おー、武器発見。こっちは巻物? それから……お、おお、なんか可愛い。星のピアスかな?」
宝箱の意匠もいいな。マイネさん。宝箱はいる? いらないの? じゃあ回収しとこう。
「そ、外側まで回収するのかい?」
「この宝箱、意外と凝った意匠じゃないですか、なんか蒐集してる人が買いそうなので」
実際結構いい値段で売れそうな気がするんだよ。
最悪ハナコさんに入って貰ってハナコさん使用済み宝箱としてハナコさんファンクラブに売りつけようと思う。




