125.ワールドイベント・アルセーヌ攻略戦10
「はぁ……はぁ……ラスト、いっぴ」
ああっ!? 最後の怪人がタツキ君に討たれた!?
どうやら他の場所からもここに繋がっていたらしく、途中から各所の秘密通路通ってやってきたプレイヤーたちがこぞってここに集結、正義の味方の助っ人さんたちもキカンダーと共闘して戦ってくれていたらしい。そしてその度に追加される怪人の群れ。こぞって俺に向って来る。
その中央で、何故か一身に怪人たちの注意を惹きつけていた俺はなんだったんですかね!?
「クソ、この私が、アルセーヌが、負ける、だと」
そして最後の一体が倒され一息付こうとした時には、既にスレイさんのおねーさんがキカンダーさんたちに負けていた。イベント、終了じゃん!?
って、待った待った。試す事があるんだよ、ここで死なれては困る。
二つ名をジャイアントテイムと秘密結社の主に変えて、ってまたスキルやら何やら増えてる。
まぁ確認は後だ。
スキルはテイム、幸運、ラッキースケベ、土下座、看破、シックスセンスに変える。
気配察知も加えたいけど、今回はこの六つだ。
「キカンダーさん待って!」
「ヒロキ君? もう後は彼女を倒すだけだ。まさか、彼女を逃すとか言わないだろうな? 彼女は秘密結社の首領だぞ」
ああ、なんか好感度下がっちゃった?
で、でも、とにかく待ってくれるようだ。
「いくつか質問したい事があるんです」
「質問?」
「ふん、もはやこれまで……聞きたい事があるなら好きにしろ、勝者はお前たちだ」
もはや抵抗も無駄と諦めたらしい首領さんがこちらに視線を向ける。
「まず、スレイさんに関して、あんたの妹である彼女を殺したりするつもりはあったの?」
「唯一の肉親だぞ。そんな訳あるか。むしろ他の奴等より丁寧に扱っていたぞ」
「えぇ!? あれで丁寧なつもりだったの!? 我だけ村八分だったじゃないか」
あー、丁重に扱おうとして特別扱いすることで周囲と溝産んじゃった感じかぁ。
そして他の奴らは容赦なく失敗したら処分してたんでしょ、そりゃ妹さんも罰を受けさせるってなったら処分されるって勘違いするよね。
「ふむ、悪人といえど姉妹愛はあったわけか」
キカンダーさんが顎に手をあて感心してる。
「ふん、質問はそれだけか?」
「いや、もう一つ。秘密結社アルセーヌの怪人はどう見ても昆虫を元にしてる。でもあんたとスレイさんだけは魚介系をモチーフとしてる。この違いはなんだ?」
「ああ、それか……」
少し虚空を見上げ、まぁ、いいか。と首領さんはため息を吐く。
「昔、私達は別の秘密結社で改造手術を受けた。丁度洗脳を行う直前で正義の味方により結社が滅んだのだ。残された私と妹は、既に怪人。社会復帰も不可能だと、自分たちで結社を立ち上げた。それだけの話だ」
「それってつまり、今からでも社会復帰出来るならやりたいってこと?」
「無理だろう? 私はすでに結社の首領、そして負けた者だ」
俺はキカンダーさんたちに視線を向ける。
言葉はいらなかった。
ただ、頷かれる。
「スレイさんは既に社会復帰を行い始めてる。あんたも、一緒に来いッ」
首領さん、いや、カルカさんの前に立ち、俺は手を差し伸べる。
それはまさに、運命の構図。
「私は、秘密結社の首領だぞ?」
「だからどうした? 来るか、来ないか、あんたの本心で考えろ。こちらからの提示は示した」
「……これが、秘密結社の主、か。怪人を殺し尽くしたその実力、傲慢にも結社の首領を降そうとするその性根。なれども正義の味方共と共闘するその貪欲。良かろう、我が命、我が人生、貴様にくれてやる」
―― カルカジーナ・アルセーヌが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
当然、YES!
―― カルカさんをテイムした! ならびに秘密結社アルセーヌが首領を失ったため崩壊しました ――
―― ワールドイベント・アルセーヌ攻略戦が終結しました。参加メンバーには経験値と報酬が与えられます。また、怪人最多撃墜者ツチミカドヒロキさんには特別報酬が与えられます。また上位10名、怪人最多撃墜チーム、上位10チーム、戦闘員最多撃墜者…… ――
……ん?
「おい、あの野郎やりやがった!? イベントボステイムとかどうなってんだよ!?」
「しかも最多撃墜者!?」
「ちょっといろいろ聞かせてくださいヒロキさん、検証にお付き合いくださいっ」
「ヒロキン、殺す、マジ殺す、ハナコさんを俺にくださ、げはっ!?」
そりゃそうか、あんだけ怪人共殺到して来たもんな。
個人撃墜数、そりゃ貰っちゃうか。
っと、まずは秘密結社の主を外して怪人殺しに変えとこう。これ以上正義の味方からの好感度減らす意味は無いし。
「ヒロキ君、彼女に関しては任せるよ。君を信頼することにする」
「すいません。こんなとこまで付き合って頂いたのに」
「構わないさ、正義の味方は悪を討つ、その悪が改心する可能性があるのなら、それもまたよし、だ。助っ人に来てくれた皆、私の独断で決めてしまったが、いいだろうか?」
近場から手伝いに来てくれたらしい正義の味方は合計六人だった。いや、二人組ユニットとかいるから六パーティーだったと言った方がいいか。
皆、構わない、とか無言でうなずくなど、一定の理解を示してくれていた。
マイネさんともども彼らとの繋がりを作った俺はスマホに連絡先を登録して貰い、ほくほく顔で彼らが帰って行くのを見送るのだった。




