118.ワールドイベント・アルセーヌ攻略戦4
SIDE:タツキ
畜生、ジャンケンで負けたーっ!
一番槍貰いたかったのに失敗だ。
仕方ないのでアスファルト上に集まった僕たちはチームのメンバーを確認した後、何かしら異変が起こるまでひたすら待機していた。
すると、全体チャットがいきなり流れ出す。
どうやら出て来たらしい。
「ここより北西方向で戦闘員120!」
「南東より戦闘員60」
「西に30!」
「北200、北からの戦闘員多くね!?」
「南から30か、よし俺らはこっちだ!」
「東側80、観測班よく人数わかるよな」
「多分こいつ等適当に数言ってるぞ。北東より戦闘員一杯。一杯ってなんだよっ!?」
「北が数が多い、恐らくこちら側に本拠地があるはずだ」
「っしゃ、行くぞタツキ!」
僕らは即座に北側に溢れる戦闘員の撃滅に向う。
「凄い数だ」
「参加人数も凄いから軽く戦争ね」
レベルは14前後。結構高めだ。
けど僕らのレベル帯なら難なく倒せるくらいだろう。
他の奴らも10くらいのレベルにはなってるみたいだし、結構拮抗した戦いになるかもしれない。
「アミノサン、補助頼む!」
「お任せあれ」
アミノサンが特技を使い皆の能力を底上げする。
怪しい薬みたいだけどれっきとしたマイトポーションという攻撃力を上げる薬を配りだす。
「他の薬は逐一頭にぶつけていくから、攻撃のタイミング間違えないように」
「変なとこ狙うなよアミノサン、アパポテトならともかく俺にやらかしたら拳骨だからな」
「パワハラ反対」
「はいはい、私にやらかした場合はお尻ペンペンだかんね」
「あはは、おかーさんこわーい」
キョウカのすごむ声にヒナギが茶化す。
いつも通り余裕のあるメンバーだ。
よし、いつも通り、いつも通りに連携して戦うぞ。
戦闘自体はかなり楽に進んだ。
物凄い数とはいってもこちらもそれ相応の数プレイヤーが参加している。
御蔭で自分が受け持つのは一対一とか二体一、多くても三人くらいだし、少しでも押される気配を見せればフォローが入ってくる。
魔法使いや弓使い、結構重宝するなぁ。メンバーに誰か引き込もうかな?
というか、そもそもアタッカー四人と回復役と補助役の僕のパーティーってすごくバランス悪いのでは?
まぁエンジョイ勢だしなぁ、そこまで逼迫してないし、新人募集は別にいいか。
余程遠距離攻撃系が必要になったら誰かにお願いしよう。
「意外となんとかなるな」
戦闘員を叩きつけ、ダイスケが告げる。
確かに一人一人はレベルよりもかなり実力が低い感じだ。
戦闘員といえば強化された人間だと思うだけど、失敗作なのかな?
「ええい、調子に乗るなよ人間共が!」
なんだ?
戦闘員達の背後から、野太い声と共に何かがやってきた。
戦闘員達が道を空け、ソイツが僕らの前へと現れる。
「俺の名はスカラベ男! 貴様等全員特製団子にしてくれるわ!」
スカラベって……フンコロガシじゃねぇか!?
「全員、あいつがスキル使って来る前にぶっ倒すぞ!」
「気持悪いもん転がそうとしてんじゃないわよ!」
「はぁ!? いきなり何を訳のわから……ちょ、多い、多過ぎだろお前ら、一斉攻撃は卑怯……ぎゃああああああああああああああああああ!?」
おお、なんか他のチームもほぼ全員がスカラベ男に殺到した。
御蔭で敵のHPは一気にレッドゾーンへと突入する。
「く、こうなれば、タマコロだい……」
「くぅたぁばぁれぇぇぇっ!!」
遅れ、遠距離部隊の一斉射がスカラベ男へと襲いかかった。
もはや周辺一帯を焼け野原に変える程の連射に、彼はそれ以上何かを告げることすらできなかった。
「悪は……滅びた」
「皆、あそこに入口発見したぞ!」
「侵入だ、一気に行くぞ皆!」
僕らは先陣切って入口へと突入する。
ここが秘密結社アルセーヌの内部か?
僕らの他にも数チームが侵入を行う。
ただ、その場に居たチームのほとんどはその場に残ったようだ。
恐らく別のルートから地上に溢れる戦闘員討伐を行うのだろう。
たまに怪人も紛れているようだし、結構身入りはいいのかもしれない。
「ま、露払いもいいかもしれんが、やっぱやるからにはボスを撃破したいよな?」
「当然! 駆け抜けるわよ皆!」
「ひーん、もう疲れたよぉ」
ヒナギはほんと体力ないなぁ。
ほらヒナギ。背中乗って。
「あ、ありがと」
さぁ、一気に攻略を進めよう。
ヒナギを背負いながらさらに奥へ。
どうやら戦闘には支障なさそうだ。
「やっぱ内部も戦闘員多いな」
あそこ、怪人ぽいのが居るぞ!
あ、結構弱い、他のチームに瞬殺されてる。
怪人の成り損ないだったのかな?
「難易度はそこまでじゃねぇみてぇだな。数は多いが経験値稼ぎにちょうどいいぜ!」
ダイスケはちょっとはしゃぎ過ぎな気がするぞ、足元掬われるんじゃないぞー。




