表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/1109

113.インセクトコントラクター・2

「さぁさぁさぁ! 虫相撲をしようじゃないか! せっかくだから最初はこちらも手加減しよう。この、ミヤマさんでな!」


 稲荷さんがなんかすっごいキラキラした目で告げる。

 切り株の一つを中央に俺と稲荷さんが対峙する。

 これがこの虫相撲の始まりらしい。


 稲荷さん、ホント楽しそうだなぁ。

 相撲してる時のネネコさんみたいだ。

 本人は多分否定するだろうけど趣味に全力投球してる姿はそっくりだよ。


 切り株にミヤマクワガタを下ろし、近くに落ちてた木の枝を手に持つ。

 俺にも同様のことを強要してきたので、クワガタムシを切り株に置き、適当な木の枝を拾って準備を終えた。

 虫相撲は枝さえ持ってれば何処でもできるのか。


「では説明するぞ」


 それからしばし、稲荷さんから虫相撲のやり方を教わる。

 といっても簡単に言えば自分たちがやることは応援だけだ。

 目の前に居る二体の昆虫が切り株の中で戦うのを見るだけである。


 勝敗条件は、切り株から相手を落とす。あるいはどちらかの戦意喪失。

 相手の昆虫から逃げだすようなしぐさをし始めたらこの戦意喪失と見なされて負けになる。

 そしてもう一つ。それが、殺害だ。

 相手の昆虫を殺してしまえば勝利。特に危険なのはスズメバチなど毒持ち昆虫。あるいはカマキリ等の捕食特化型。


 昆虫なので指示しなかったとしても食糧を逃すことなく捕食してしまうのは仕方無いことなので、これも勝敗条件に入れられているのである。

 つまり、昆虫たちは死ぬ可能性もあるのだ。

 特殊な昆虫を捕まえても、一瞬で失う可能性があるのがこの虫相撲らしい。

 うん、なんと非道な遊びだろうか? 稲荷さんの感性を疑うよ。多分昆虫の生き死にに関しては全く気に止めてないんだろう。


 指揮者は木の棒を振るうことで指示をだす。

 最初こそ虫は命令に従うことはないが、インセクトコントラクターになると、虫が棒を振るだけで命令聞いてくれるようになるらしい。

 ちょっとそれは魅力的だよなぁ。


 今だと棒を振るってもクワガタ君は無反応だ。

 棒をどれだけ振って見せても動いてくれない。

 始めは棒をすぐ目の前で前に真っ直ぐ動かす位が良いらしい。

 こうか?


「そうじゃ。そうやって動かしておれば自然従ってくれるようになる。慣れれば初めて扱う虫でも技を出すことが可能になるぞ、このように、な!」


 と、稲荷さんがミヤマクワガタの真上で木の枝を複雑に動かして見せる。

 すると……ミヤマクワガタは歩きだし、そして、止まった。


「えぇ!?」


「ありゃ? あ、しもうた、この体にはインセクトコンストラクター入っとらんわ」


 ダメじゃん!?

 結局今回は素人同士での戦いになるらしい。

 振っても振っても反応してくれない虫たちに、半狂乱になる稲荷さん。

 なんかもう狐耳揺れまくり尻尾ぶんぶんで滅茶苦茶可愛かった。

 神様の地団太かわゆすです。


「ぬがーっ、なんで動かんのじゃーっ! ええいヒロキ、我が本体のある場所に来るが良い! 本当のインセクトコントラクターを見せてやるっ」


 そこまでしなくともいいのだが、まぁ稲荷さんが本体でやってくれるってことだし、お願いするかぁ。

 そこまでムキになってまでしたいなんて、ホント好きなんだなぁ。

 ま、そういうことなら相手致しましょう。


 皆をぞろぞろ引きつれて、俺達は自宅周辺の森から稲荷さんの神社へと場所を移す。

 相変わらず浮遊霊に集られてる神社へとやってくると、何処から用意したのか境内に切り株が存在しており、既に準備済みの神様が一匹お待ちでいらっしゃった。尻尾が高速でふりふりされている。モフりたい


「主殿、主殿、こっち、こっちじゃ! はよう参れ!」


 はいはい、急かさない急かさない。

 促されるまま定位置へと移動し、対戦開始。

 俺はさっきと同じクワガタ君だ。


「では、行くぞ! これがインセクトコントラクターの実力じゃーっ!!」


 稲荷さんが不規則に棒を振るってミヤマクワガタへと指示を送る。

 そして……

 ミヤマクワガタは少し前に移動した。


「なんでじゃーっ!?」


 両手で頭抱えて悶える稲荷さん。

 余程スキルとやらが使いたかったんだろう。

 残念ながらミヤマ君は使う気全く無いみたいだけど。

 ちょっと見てみたかったけど、残念だってことで諦めよう。


「ええい、三下だからか! 黄金カブト、君に決めたァ!」


 ミヤマクワガタを投げ捨て、黄金カブトを取りだす稲荷さん。

 地面に落とされたミヤマクワガタは俺がアイテムとして回収しておく。

 さすがにそのまま放置はミヤマ君が可哀想だし。


「えーっとこうか?」


 教わった通りに枝を前へと振るう。

 この時一度クワガタ君の頭を棒で軽く叩いてから棒を動かすのが良いらしい。

 お、前に移動始めた。

 これって俺の指揮に従ったとか?

 さすがにそれはないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ