1129.天界裁判18
さて、ここで放置しておけばメタトロンのAIがどんな判断するのか、見てみたい気はするけども。
それじゃあこの問題は解決しねぇ。
「では、メタトロン。そこで俺から提案だ」
「……てい、あん? と、取引などには応じんぞ!?」
たとえ正義を否定されようともあくどいことに加担はしない、とかそういう意味か?
今の俺にとっちゃ的外れだけど。
「何、簡単なことですよ、今からメタトロンさん自身がメタトロンさんの罪科を審判すればいい。そうすれば自身がやらかしてたこと理解できるでしょ」
あ、なんか皆ぽかんとした顔してやがる。
え、意味理解できなかった?
「要するに、一旦メタトロンを裁判長としてメタトロンという同姓同名の別人を審判して貰う。罪状はさっき告訴した審判不適格の罪。メタトロン自身、その罪状の天使に対し、どういう判断をするのか、要するにシミュレーションって奴さ」
「なるほど。メタトロンが審判をすると仮定し、裁判長不適格と告発された天使をどう審判するか、やらせてみよう、そういうことか? え、さすがに外道過ぎんか?」
何でだよミカエルさん!?
自分の罪を客観的に理解するまたとないチャンスだろ。
どうするメタトロン?
「私が審判長として、審判長不適格と判断された天使の審判……」
しばし、メタトロンは瞑目する。
しかし、すぐに覚悟を決めたように目を開いた。
「今回告発された天使に対する告訴に関して原告側、告訴内容を」
「おーけー。あ。そうそうアクニエル。とりあえずあんたが弁護側の弁護してくれや」
「はぁ!?」
もう精神的にいっぱいいっぱいっぽいけど今回のことで思考する余裕は出来ただろ。せいぜい小悪党並みの考えで弁護してくれ。
「告発内容は審判長をしていたメタトロンが弁護側に対して不利になるよう原告側に肩入れしていたことだ。本来原告側が行うべき主張を審判長が誘導していた。いや、むしろ率先して弁護側不利となるような言動が多々見受けられたと主張する」
「弁護側、反論は?」
「え? え。それは、その、し、審判長として法廷を侮辱している者に対し許せないと思うのは当然、であろうっ」
「異議あり。侮辱はなかったと原告側は主張します。むしろ審判長は自ら弁護側の瑕疵を探し、指摘し、弁護自体が出来なくなるよう告発しようとしていた。しかし弁護側には無罪を証明する証拠があったにもかかわらずその提出をあろうことか裁判長自身が拒み被告から弁護士を取り上げようとした。これが法廷侮辱罪以外、なんだというのか」
「い、意義あり! え、ええと、その。あー……告発されそうになっていた弁護側にも瑕疵があったと……「異議あり、告発はされておらず、される前に審判長を告発した。さらに新たな証拠により無罪であることの証明もなされている」うぐ……」
アクニエル、あんた弁護士の才能ねぇわ。
「審判長。弁護士からの反論はなさそう、というか出来なさそうですが、判決は?」
「……」
尋ねたメタトロンはといえば、目を閉じて眉根を寄せ、難しい顔で立っていた。
「そう、か……私は、正義に目がくらんでいたか」
ようやく冷静に考えてくれるようになったか。
荒療治だったが、正義という形のないものに盲目になっていると正義のためなら何をしてもいい、と思えるようになる。
つまり、審判長をやっていたメタトロン自身が自分が正義であると突き詰めるあまり、正義は我にあり、何をやっても俺が正義だ。状態になっていたわけだ。うん、ルルルルーアさんと同じ状況じゃねぇか。
「神がお許しになられたのですから、私とアレは違います」
はいはい、そうですね。
「私が審判長として、メタトロンの罪科に対する罰を与えるとするならば……己の罪を認める気がない害悪である、と判断し、堕天相当の罪である、と判断していた。ああ、そうだ。自分が行った行為はこうして客観的に考えれば、ああ。何という愚かなことを……」
いかつい顔を涙に濡らし、気付いてしまった罪に涙する。
「彼らもまた、主張をしていただけだったのだな。自分たちの行いは正しいのだと。それを、私は改心の心なしと……なんたる、愚かなっ! これでは神と同じではないか。愚かな相手であれば改心不能と全て水に流すように、ああ。私は、私はあの時言ったのに。我らは貴方たちのやり方を学ぼうとは思わんと。これでは、同じではないか。気に入らぬものを全て堕天させて消してしまうなど……」
すっげぇ効果あるじゃん。
ちょっとした思い付きでやらせてみただけなんだけど、マジで自覚しちゃったよ。
「メタトロン……」
「済まないですむ話ではない……ラドゥエリエル、サラカエル。罰を受け入れる。その方らの主張を全面に認め、服しよう」
って、あまりにも物分かり良すぎるせいでラドゥエリエルとサラカエルの方が困惑しだしてるじゃん。
ほ、ほら、四大天使長も、まずはメタトロンの罰を発表しよう。ね、そうしよう!




