1125.天界裁判14
『あーしらだけだからじゃん。ヒロキが居たら起こるかもだぜ? こいつほんとトラブルに愛されてっからな』
映像が流れだす。
手慣れたもので、天使たちは映像を見ながら意見を言い出し始めている。
俺の粗がないか探し始めている者もいるのは、俺の熱弁が詐欺師っぽいと思われたからだろう。
まぁそこは詐欺師スキルのせいだから仕方ないんだけど。
とりあえず頑張ってくれたまえ。多分何もないだろうけども。
『おいおい、俺だって進んでトラブルに首突っ込んだりしねぇって。そんな直ぐイベントが向こうからやってくる訳な『邪魔だ!』っとぉ、何すんだテメェ!』
アクニエルの証言では俺が悪辣にもぶつかって来た、と言っていたわけだが、映像を見るに、まずぶつかって来たのはアクニエル。
背後から俺を押しのけるように激突し、俺は倒れながらもアクニエルの足をひっかけていた。
ま、当然の反撃だよな。
「見たか! あの人間はこの私に足かけをして転ばしたぞ!!」
「アクニエル……」
唾を飛ばしながら歓喜するように叫ぶアクニエル。
それを隣で見ていたメタトロンが呆れた顔で額に手を当てて項垂れる。
「えー、結果は語るまでもありませんが、このままもうしばらくご覧ください」
『ぐ、くっそ、テメェ誰に喧嘩売ったか分かってんのか! エロアだぞ! エロヒムの一人だぞ!』
アクニエルが倒れたまま叫ぶ。
俺がぶつかって来たのはそっちだと叫ぶが、アクニエルは俺を敵認定して立ち上がる。
『うるせぇ! 裁判に遅れたらテメェのせいだからな! 訴えてやる、地獄送りにしてやるからな!!』
そう告げて足早に立ち去って行った。
これを見ていた天使たちが何とも言えない顔をしている。
おそらく同じ天使として恥ずかしいとか思ってるのかもしれない。
『き、君大丈夫かい? 大変なことになってしまったね』
さすがに個人特定させる訳にはいかないのでログジエルさんがモザイクかけたようで、声をかけて来てくれた天使の顔が見えなくなっていた。
『あの天使は裁判官の一人なんだ。下手に逆らうと犯罪者扱いされて堕天させられてしまうんだ』
まさかの言葉に天使たちからざわめきが上がった。
それはそうだろう。アクニエルに対する天使の生の声が聞こえたのだ。
黙っていた天使たちが、自分たち以外にもそう思っていた天使が居たのかと。
事情を知らない天使はアクニエルにそんな非道な疑惑が? と。
そして俺はぶつかって来た相手の名を、その天使に尋ねた。
帰って来た答えは、『アクニエルだよ』である。
つまり、アクニエルが逆らった相手を犯罪者として堕天させている、そんな疑惑が生まれた訳である。
『そのアクニエルはなんでそんな非道なことしてて天使のままなんだ? 堕天するんじゃないのか?』
『彼が判決を下す側だからね。よほど悪行の証拠がない限りは彼が堕天することはないよ』
諦めたような口調の天使。
それは上司に告げたところで意味がないと理解した部下の言葉であった。
映像が終り、俺は改めて証言台で皆を見回す。
「さて、俺はメタトロンの裁判長としての資質告発と共に、アクニエルの資質もまた告発しました。俺の弁護士としての資質はどうです? 無罪であるならば、まずはアクニエルから行きましょう。告発内容は今、映像にあったように、逆らった相手を裁判で有罪に仕立て上げ堕天させた疑惑だ」
「な……な……」
口をぱくぱくさせているアクニエル。
まさか自分が告発されるとは思ってもみなかったのだろうな。しかもこの罪で。
んで、俺の審判は?
ミカエルさんたちが四人で会議を行う。
と言ってもミカエルさんとガブリエルさんはこちらの味方みたいなものだ。
ウリエルが若干俺を睨みつけているが、犯罪者として立件するつもりはないらしい。まぁ犯罪犯してないからね今回の審議に限っては。
「審議の結果、確かにツチミカドヒロキに罪はないと思われる。ぶつかった拍子に足を引っかけているところが気にかかるといえば気にかかるが、ぶつかったのはどう見てもアクニエル側だ。足を引っかける行為も、ぶつかった拍子にたまたま引っかかった、と言えなくもないタイミングだ。ウリエル、ラファエルからも異見がなかったので今回の疑惑に対し、ツチミカドヒロキは無罪とする。このまま弁護人を続けて構わないというのが天使長四人の総意だ」
「ふん。気に入らないが、裁判の原告と弁護で敵対してるだけだから、非常に気に入らないが私はフェアに行く。メタトロンと違ってな」
ウリエルさんには後でお詫びの品送っておこう。
なんかこのままだと後々敵対しそうだし。
俺たちは審議で争ってるだけで別に敵対してるわけじゃないからね。
うーん。ウリエルさんって何が好物だろうか? お詫びの品、何送るべきか迷うな。油揚げじゃだめだろうか?




