1121.天界裁判10
「原告側、次の罪の詳細を」
「はっ、商店街を焼き討ちにした罪について詳細を述べる。マイネマイネの非道なる放火により「異議あり、その表現にはウリエル様の主観が入っています」「異議を認める。ウリエル訂正せよ」……マイネマイネの放った火が燃え広がったことにより、上部に存在していた商店街に燃え広がり、商店街にいた罪なき人々が逃げ遅れ多大な死者が出た。マイネマイネが炎を消火せず放置したことによる二次被害だ。これをどう弁護する弁護人」
「弁護人、反対弁論を」
「では、こちらは証人としてバイアスロンさんに状況説明の補完をお願いいたします。バイアスロンさん、お手数ですがもう一度証言台へお願いできますか?」
「ああ。任せてくれ」
バイアスロンさんが再び証言台へと立つ。
堂々とした佇まいに思わずメタトロンの方が居住まいを正していた。
「私からの証言は後に発覚したモノとクモリエル生き残りのブラッククラウド将軍の証言、そしてヒロキ君が発見した場所を踏まえたうえでの証拠だ」
一呼吸おいて、バイアスロンさんはマイネさんを見る。
一度瞑目し、覚悟を決めたように告げた。
「焼き討ちにされた商店街に住む住民、その全てがクモリエルに加担していた組織員である可能性が高い」
「なっ!?」
「それは! 調書には書かれてないぞ!」
「当然だ、警察が捜査したおざなりなモノではなく正義機関による徹底調査によるものだ。とはいえ証拠のほとんどが燃えてしまっているため証拠を出せと言われても、出せんのだが。ゆえに警察組織は証拠証明の必要なし、として書かなかったのだろう」
まぁ警察組織としてはマイネさんを犯罪者として捕まえたいみたいだからな。不利になり得る話は証拠としては書かないだろ。
正義機関が調べた証拠類は既にログジエルさんたちが精査したようで、こちらが資料になります、と今、メタトロンに差し出されていた。いや、事前に登録しておけば裁判長知らなくてもいいのかよ!?
「弁護人、後出しはダメだろう……」
「え、ちょっと裁判長、俺後出ししてないっすよ!? ちゃんと資料としてログジエルさんたちに渡してありましたし。ですよねバイアスロンさん」
「我々の証拠は事前に渡していたのでヒロキ君が彼らに渡した時とは別だったのではないか? 私としてもすでに資料は読み込まれているモノと思っていたが」
メタトロンがログジエルたちを睨む。
が、当のログジエルともう一人の天使はにこにこ笑顔だ。
「おかしいですねー、私たちはお使いの天使さんにこちらの資料を裁判長に持っていくように送り出したんですが」
「そういえばログジエル様、手渡した天使、私は初めて見た気がするのですが、この施設内の天使だったのでしょうか?」
「アクニエルの使いだと言ってましたし、安心して渡したのだけどねぇ」
「な、何を言ってるんだ君たちは。私はそんな指示をした覚えはないぞ?」
慌てたのはアクニエル。
んー、どうやらすでにやらかしていたようだが、まさか回収係にログジエルさんがいたとは想定していなかったんだろう。
相方の天使を口止めさせるつもりだったのだがログジエルさんがいたせいで出来ず、結果的に証拠品を持って消えるしかできなかったようだ。
青い顔に脂汗出てますよアクニエル君。これはもう自分の不利に気付いて慌てて言い訳探してる顔にしか見えないぜ。ただ、メタトロンもアクニエルの様子に気付いたはずなのだが、すぐに視線を逸らす。
「まぁいい。つまりログジエル。この証拠品は証拠能力があるのだな?」
「はい、しっかりと証拠能力があるものです。これを踏まえて精査をお願いします。ほら、ウリエルもどうぞ」
「この証拠が事実ならば原告側の条件もかなり変わってくるのだが。くっ、今回の告訴は波乱だらけか」
それ、俺のせいじゃないと思うんだけど。なんで俺睨まれたんだろ?
「なるほど、つまり、今回の告訴に関して、商店街に存在していた罪なき一般人が大量に虐殺された、という原告側の証言は覆った訳か」
頭を抱えてメタトロンが苛ついた声で告げる。
ウリエルさんも同様で眉間にしわが寄っていた。
「くっ、こんな重要証言がなぜ今まで……商店街にクモリエル直通の隠し通路があっただと!? 商店街の人員の内クモリエルに従わなかった一般市民は連れ去られて改造、さらに地下の燃やされた一般人たちがその成れの果て!? つまり地上にあった商店街に残っていたのはクモリエルに恭順した元一般人たちだけ……ぐぬぅっ、これでは、これでは証言が覆るっ」
そう、罪なき一般人ではなく、クモリエルに加担していた悪人たちを軒並み焼き討ちにした。まさに正義の行いだ。
さらに言えば一般人を弔うために放った炎が彼らを裏切って悪人に従った者たちを、そう、まるで悪人は許さないとでもいうように焼き払った、それはまさに聖人の奇跡。
「物は言いようだな弁護人。だがマイネマイネが大量虐殺を行った事実は事実だぞ!」
「天使法典を見てみれば、悪を討つという理由において、聖人、正義の味方、英雄などは罪に問われることはないようですね、大量虐殺を行った相手はクモリエルという悪の秘密結社の組織員、そしてその被害者たちの救済による大量殺害、つまりこれは英雄的所業。称賛こそされ、非難されるいわれはない」
よく言うだろう? 一人殺せば犯罪者。大量に殺せば英雄だ、って。




