1097.等活地獄付随十六小地獄
「あーい、ここは屎泥処だよん。くっさいよねー」
初っ端の地獄がコレとか酷いな。
「えーっと、一応案内しますね。ここは等活地獄に付随する小地獄の一つで屎泥処といいます。罪科を償う亡者の対象者は、鳥や鹿などを殺した方ですね。沸騰した銅と糞尿が溜まった沼が沢山ありまして、これを亡者は食わされ、金剛の嘴をもつ鳥に体を食い破られるそうです」
「(V)o¥o(V)さん確実にここに連れてこられそうだな」
「鹿対象なのか。俺ゲーム中だと倒したかも」
「プレイヤーは罰受けないからいいんじゃね?」
「あら、地獄でやらかした場合は受けて貰うわよん? どよ未知なる君。ちょっち食ってく?」
「遠慮します。ってか臭いんで次行きましょう」
「うぃーっす」
俺たちは屎泥処を抜けて次の小地獄へ。
同じ階層のしかも隣り合った場所にあるからか、ココにも屎泥処の臭いが付いてきている。
「刀輪処ですね。刀を使った殺生を行うとここで罰を受けます。熱鉄の雨が空から襲ってきて地上はあのように燃えてます。森は火が来ませんけど刀の生えた木々があるらしいです。あと両刃の剣が雨になって降って来るそうです」
「それ、獄卒も死なね?」
「アタシらはほら、さっきの扉からこっち来ると結界が張られるのよぉ。おかげで無傷ってことね。だからあの嵐の中で踊り狂ってても一切斬られないのよ」
「よくそんなの分かりますね」
いや、案内人君、アレは分かるんじゃなくて実際に踊ったんだぜきっと。
ほら、曖昧に微笑んで目逸らしてんじゃん。
「はいはい、次行こう次!」
あまり追及されたくないらしい。ヤミーさんはさっさと次の場所へと向かう。
「はい、瓮熟処来ましたぁー」
やって来たのは鉄瓮が大量に存在し、亡者たちが投入されていく場所だった。
なんでも動物を殺して食べるとここに来るらしい。つまり現代人のほとんどが来る場所か。いや、食べるだけなら罪にならんのか?
でも動物食べて罪なら植物食べた罪もあるんじゃねぇの? そっちはないの? そっすか。
「次、多苦処ーっ、ほら駆け足駆け足」
拷問やらの罪を償う場所らしいけど、子供を怖がらせただけでもここで罪を償うらしい。
子供の方が顔見て勝手に怖がる場合もここに来るんだろうか? それだと生きてるだけで罪、と言われてるようなもんだ、さすがにそれは酷くない、どう思うヤミーさん
「ヤマ兄だし、その辺の裁量はちゃんとあるに決まってんじゃん。情に篤いんだよ。ほんともう、人良すぎ、だから大好き!」
「まさかのNPCに惚気られたの!?」
「亡者がバックグラウンドで縛られたりしてる場所で惚気とか……」
次にやって来たのは闇冥処。当然ながら突然の真っ暗闇でびっくりだ。
まぁ皆ドリームランドで夜目手に入れてるからプレイヤー組は問題なかったけど。
ちょっとネネコさんとヘンリエッタさんが迷子になりそうになってたので手を繋ぐことにした。
少し間違えてネネコさんの胸を掴んじゃったのは、真っ暗で見えなかったからなんだ。ワザとじゃないからね。
「ここは信仰などの為に羊や亀を殺した人が闇火や熱風で炙られる場所らしいです」
「昔は巫女さんとかが亀甲占いしたりしてたからなぁ」
「今でも悪魔崇拝とかでは羊殺してるんじゃね?」
そしてお次は不喜処。法螺貝を吹くなど大きな音で驚かせた後鳥獣を殺害した者が落ちるらしい。
肉食われたりするらしいけど屎泥処よりマシなのでは?
つか、これもう(V)o¥o(V)さん専用地獄めぐりじゃね?
次の極苦処はちょっとしたことで怒り、怒鳴り、暴れまわって殺しをした者が送られるらしい。
常に鉄火で焼かれて獄卒に断崖絶壁から落とされるのを繰り返すらしい。
これ、七不思議で落下する幽霊さんとか現世で同じ罰受けてるんだけど?
「そう言えばヤミーさん、この先の衆病処から十六番目までは名前しか伝わってないって聞いてますけど、どうなってます?」
ふと、案内人君が尋ねる。
ヤミーさんは一瞬言葉に詰まり、そして言った。
「さぁ、ここから先は一気に駆け抜けるわよ!!」
ああ、本当に用意されてないんだな。
あ、違う、一応用意はしてるけど運営側で適当に考えた地獄っぽい。
おそらく名前だけはあるからそれに準じた地獄にしてるんだろう。
でもどんな罪の人がここ来てるのか、分からないだろうに、なんで亡者いるんだろ?
「ちなみに、衆病処の次は、両鉄処、悪杖処、黒色鼠狼処、異異回転処、苦逼処、鉢頭麻鬢処、陂池処、空中受苦処、っていう地獄らしいです」
運営もいろいろ考えてみたんだろうけど、異異回転とかどう見てもクイズに答えて失敗したら回転する奴じゃね? これ地獄じゃないだろ運営さん。ただのクイズ番組設備じゃん。
運営さんの苦慮具合が分かる場所だなぁ、小地獄。




