1091.五官王と天秤使い
つーわけで、やってきました五官庁。
いやー、結構長い道のりだったわ。
つか道が長いだけでなーんも変化がなかった。
ああ。宋帝庁出たところでちゃんとブキミちゃんと合流できたよ。
かなり満足そうに獄卒さんとやって来たブキミちゃんだったけど、宋帝王に会えないと分かるとちょっとモヤッとしていた。
でももう一度、何の理由もなく向かう訳にもいかないしな。
獄卒さんに見送られ、全員で五官庁へと向かった。
ブキミちゃんが道中盗賊さんでてこーいとか言ってたけど、結局でてこなかった。
ああいうのは道を外れた山の中とかに居を構えてるんだろう。
そうして道を外れた阿呆を見つけると寄ってたかって身ぐるみを剥いでいくんだと思われる。
でも、今回道を外れたりはしなかったからな。ショートカットするような場所がなかったので道なりに向かった方が速かったんだ。ごめんなブキミちゃん。
すでに首引っこ抜き祭り終わった後だからそこまで気落ちはしてなかったけど、ストレス溜まったら地獄に来て盗賊の首引っこ抜き祭りというストレス発散方法がブキミちゃんに追加されてしまったかもしれないな。
五官庁へと辿り着いた俺たちは、早速獄卒さんにお願いして御目通りを願う。
連絡が来ていたおかげかすぐさま通され、五官王のいる審理場へと連れてこられた。
どうでもいいんだけど、この王庁全部作り一緒っぽいな。手抜きかい、運営さん?
「来ましたねヒロキ一行」
「初めまして五官王。一応説明させていただきますが、俺たちが来た理由は……」
「良いのです。すでに話は理解しております。閻魔庁に向かう前にここで五官による罪科をお聞きしましょう。五官とは眼・耳・鼻・舌・身が元となる悪業や罪を審理対象とし、特に妄言(嘘)に関する詮議を行うのです。本来ならば本人を乗せる秤に乗っていただきたかったのですが、今ちょっと秤が壊れておりまして」
マジで!? イベントですか!
「ああいえ、プレイヤーの一部がはっちゃけて壊しましたので今使えないのですよ。反省の色がなかったので纏めて餓鬼道送りにしてやりました」
意外と酷い扱い受けてたようだ。
誰だよやらかしたプレイヤーは。
「そして別のプレイヤーたちに秤の修理依頼をしておりまして、今はその吉報待ちの状態です。とはいえ、秤が使えなければ亡者の罪を測れません。よって助っ人をお願いしました」
と、紹介されたように掌を向けた五官王、その先にいたのは……
「むぅ。貴様の心臓は重過ぎる」
ぎゃあぁぁぁぁ、アヌビスさぁん!?
冥界神、エジプトに居るはずのアヌビスさんと思しき獣顔の人が亡者の心臓抜き去って天秤に乗せていた。
測り方もエジプト式になってんじゃん!?
「いろいろおかしくありません!?」
「派遣願いしたら暇だからってアヌビス殿が来たのですよ。向こうはマアトさんという方が居れば問題はないらしいので」
そうなんだ? そう、なんだ……
どうでもいいけど、違和感が半端ねぇな。
「ではあなた方の心臓を取り出して罪を……」
「死んでしまいますが!?」
「冗談に決まってるじゃないですか。ふふ。咄嗟の判断力はとても良いですね。これならば安心して依頼を任せられそうです」
「依頼内容、どんな感じです? やっぱりにっちもさっちもいかない状態ですか?」
「今のところは動きはないようですね。どうやら立て籠もりを行っているようで、獄卒だけでは突破できずに罪を償わせられなくなっているようです」
罪人たちが地獄で好き勝手してるってことか。そりゃ確かに何とかしたいよね。
弥勒菩薩も俺らにお願いするって……もんでもねぇよな。
絶対まだ何かあるだろ。
「ふぅ。いい加減疲れたぞ五官王殿。まだ秤は治りそうにないのかね?」
「そう言われても霊子などが足らなくてな」
「ん? 霊子がいるんですか?」
「うむ。霊子が大体1000は欲しい。あと呪物があれば直せるのですが」
「俺持ってますよ霊子1000個、あと呪物はどんなのでもいいんですか? ならコトリバコとか」
「さすがに特級はいらないかな。小さな呪いとか黒い闇などその程度の呪物を50程あれば」
「じゃあ両方を25づつくらいでどうです」
全部持ってるからこの際放出してしまおう。
「なんと! これは素晴らしい」
「ほー。さすがだなヒロキよ、我が感謝状を贈っただけのことはある。もう一つ送らせて貰おう」
感謝状とか貰っても困るんだけど。
まぁアヌビスさんからの賞状二枚目ってことで飾っておくか。
「なんとか治りそうですね」
「それはよかった、この地は我々が治める場所より死者の訪礼数が多いのでな、辛くなってきたところだったのだ。ありがたい限りだヒロキ。エジプトの地獄に来た時は必ず我が便宜を図ろう」
そんな場所で死ぬことは無いと思うんですが!?




