1090.宋帝王と猫と蛇
「やぁ、よく来たな」
見るからにお偉いさんな宋帝王が審理場で出迎える。
亡者たちは俺たち待ちになったようで、凄く不満そうだけど、許せ。
俺たちの話が優先なんだよ。こっちは地獄に急いでいかないといけないみたいだし。
「えーっと、お偉いさんへの挨拶ってどうすりゃいいのかわからないので、丁寧口調ですいませんが、プレイヤーのヒロキです」
「ここでは邪淫の罪に関して審理を行っている。簡易ではあるが、君たちに関しても罪を問うてみよう」
なんでさ!?
「では、其方から行こう。案内人よ、嘘偽りなく申せ。汝は姦淫を犯せしか?」
と、宋帝王が尋ねた瞬間だった。彼の左右からわらわらと猫と蛇が現れる。
案内人君を威嚇する猫たちに、案内人君がびっくり。
「えぇ!? い、いいえ?」
「ふにゃーご!!」
威嚇されてる、と思ったら我先にと猫たちが案内人君へと突撃。
え、まさか、案内人君やっちゃってた!?
「う、うわあああああああ!?」
と、猫に殺到された案内人君。全身を舐められこすられもっふもふだ。
「あああ……あれ?」
「あーそういやウルタールでもあいつ猫塗れだったな」
「言われてみれば!」
未知なるモノさんの言葉に理解する。
あの猫たち、罪人として案内人君を処罰するわけではなく撫でられたくって殺到したらしい。
「うおっほん。あー、なのよ。其方に聞こう。汝は姦淫を犯せしか?」
「ヒロキさん、姦淫? ってなんなの?」
「あー。要するに無理矢理相手の許可なくエッチなことしてないかって。このゲーム内、だけでいいんかな? でも脳波測定してるなら現実世界での罪も把握されてるかも」
「どっちにしろ姦淫はしてないの。ヒロキさんオンリー純愛なの!」
「んー、俺の金への純愛だよね?」
「どっちでもヒロキさんと付き合えば手に入るの。当然結婚した後即離婚で慰謝料だけ貰ってくの」
やめてくださる!? そんな結婚詐欺みたいなことしないで!?
「罪、ありき!」
「なのぉ!? ば、馬鹿な!? この清廉潔白ななのが有罪になってしまったの!?」
どう考えてもどろっどろの暗黒色だろ。
結婚詐欺働く予定で姦淫じゃないも何もあったもんじゃねぇ。騙す気満々の大悪党だ。
「と、地獄に来た場合であれば其方を有罪にするところであるが、死んだ時に遺族から大切に思われるなど情状酌量の余地があれば十分天国に行けるだろう。生前の家族を大切にするがよい」
「ヒロキさん、しっかりなのを大切にするの!」
「なんでだよ!? 離婚確定してる相手大切にする馬鹿はいねぇだろ!?」
「熟年離婚狙うから大丈夫なの!」
極悪人が居ますよ宋帝王さん。これもう地獄行確定じゃないすか!?
「楽しそうで何より。本来女性で罪のある者はここにおる蛇たちが体に食いつき罰を与えるのだが、それに対して反省もしないようであれば地獄に行くこととなる」
ああなるほど、宋帝王さんは俺らに生前判決を行って悔い改めてほしいってことね。
この後、未知なるモノさんは当然白、かと思えば、無用な殺生を行いすぎだ、と注意された。
どうやら一時期自分の能力を増やすために片っ端から捕食吸収していたことが問題になったらしい。
本来なら別の部署で言われることだが、と前置きされて注意されていた。
「テイムキャラたちは……よいか。ネネコ殿、其方死ぬよりも神になる方が先のようだぞ?」
「おらが神だか? なんでだ?」
「たぶんタヂさんに勝ったからじゃね?」
「あれは勝ったとは言わんべや! 汗で滑っただけで勝利なんておかしかよ!」
いやー、それでもタヂさんに土付けたのは大金星。運も実力の内だぜ。特に相手は神なんだし。
「それからヤミコよ。そろそろハナコにこだわるのはやめた方が良いのではないか?」
「ふっ、愚問ね、ハナコの男を私が寝取る、これがハナコへの復讐になるのよ。つまりヒロキを手に入れれば私の勝ち!」
無理じゃねーかな、ハナコさんへの愛は不変だぜ?
「ヒロキよ、姦淫や邪淫はともかく、罪作りではないか? 言い寄る女性への答えはないのかね?」
「ハナコさん第一主義でもよければ、付き合おう。その宣言でコトリさんは内縁の妻になったっぽい」
誰も認めてはないが自称妻だしなコトリさん。
「ハーレム展開って奴ですかね?」
「ヒロキの場合ハーレムと言っていいのか? 寄って来るプレイヤーは金目当てだし、本人はハナコ一筋だし、妻いるらしいし」
「女の敵なの。やはり金毟り取るのが一番なの!」
「どっちもどっち、か。ヒロキよ、その精神性を悔い改めねばいつか刺されるのではないか?」
「ははは、まさかぁ」
蛇々利さん辺りには刺されそうなんだよなぁ。
しかも即死効果の一撃だからあの人と話す時はマジで気を遣うんだ。
宋帝王さんからいろいろ苦言を貰いながら、俺たちは紹介状を貰って次の五官庁へと向かうのだった。




