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1087.端折られし秦広王

「……という訳で、秦広王は三途の川のどこを渡ったらいいかを亡者に告げる役割を……役割を……」


 と、得意げに説明していた案内人君が押し黙る。

 うん。俺も理解した。

 つまり、秦広王さんは俺たちからすると川の向こう側にいらっしゃるってことな。


「衝撃の事実なの!」


「あー、俺も十王がいるってのは知ってたけど、どこにいるかとかは知らんかったな。そうか、川向うにいたのか」


「んじゃ、とりあえず次のえーっとなんだっけ、なんとか王」


「初江王ですヒロキさん。どっかのマンガだと動物好きの変人扱いされてましたけど、泰広王の審理結果や三途の川の亡者である懸衣翁などからの報告を元にして盗みなどの罪を裁く王になります。ちなみにこれ以後の王たちは亡者に改心の可能性があったりすると次の審理に回すそうで、よほど凶悪犯罪者でなければ即地獄行なんてことにはならないかと。まぁそういうのは三途の川に流れて即地獄送りなんですけど」


「ほーぅ?」


 よくわかってないけど、まぁ案内人君に聞けば都度教えて貰えるだろうから、王様たちの不敬にならない程度に挨拶して目的終わらしてしまおう。

 

「そろそろ施設が見えるはず……ああ、あれですね」


「初江王のいる審理場か。っていうか、この辺りから亡者が並んでるみたいだけど?」


「亡者が三途の川渡ってここに来て、死んでから十四日目に審理を受けるんです。その分待ち時間がありますから、そのせいじゃないですかね?」


「マジか!? じゃあここにいる亡者たちは数日並びっぱなし!?」


「死んでるわけだし食事もいらんから問題ねぇんだろ。俺らは並ばないぞ。その紹介状もあるし」


 馬鹿正直に並んだら弥勒菩薩の依頼を完了させるのに何日かかるかわからんしな。


「そういや案内人君、確かおのののの? なんとかっていう人がどっかの王の秘書してたよな」


「未知なるモノさん、それ篁さんですよね。小野篁さんです。確か、夜毎井戸を通って地獄の閻魔庁に赴き、閻魔大王の下で裁判の補佐官を務めていたという話があるらしいですけど、その後に愛欲に満ちた『源氏物語』を書いて地獄に落された紫式部をとりなしたり、『今昔物語集』には病死して閻魔庁に来た藤原良相を篁のとりなしで蘇生した、なんて話がありますが、藤原さんが病死後に閻魔庁に至るには三十五日もかかります。おそらく秦広王のところにいたんじゃないですかね。死んで直ぐ生還させたとかそういう感じで。つまりこのゲームに彼がいたとして、ですよ、三途の川渡った後なので彼と会うことは出来ないと思います」


「あー……」


 なんてこった。絶対いろいろイベント起こるはずだった最初の王様である秦広庁を端折ったせいでなんか損した気分だよ。


「まぁまぁ、今回はヒロキさんの受けた依頼を行うのが優先ですし、さっさと行って帰りましょう」


「それもそうだな」


「案内人、暇。なんか話して」


 ブキミちゃぁーん!?

 なのさんともども俺の腕に絡まってるだけじゃ暇だというのかい!?

 っていうかヤミコさん、体重無いからいいんだけど、背中から抱き着いておぶさってる状態はそろそろやめません、へっぴり腰で歩かなきゃいけなくなりそうなんだよ。


「ヒロキ、楽しそう」


 どう見たらそう見えるんだアイネさん。

 っていうか蜂型少女と骸骨と蛸娘が隣り合って歩いてるとなんというか、シュールですね。

 そういやヘンリエッタさん、今回ホムンクルスの骸骨は連れてこなかったの?


「ええ。今はメンテナンス中ですわ。あら? 普通に声出せますわね喉ないのに」


「ああ。ここが地獄だからかな? 亡者扱いになってんじゃないか?」


 これ、ヘンリエッタさん連れて戻れなくなってたりしないよな? 今から戻す訳にもいかないからもう遅いんだけど。


「……でね、無悪善という落書きしたのが小野篁だと怒って告げたんだ。子子子子子子子子子子子子、これを読んでみろって。そしたら小野篁は」


 え、話聞きそびれたけど案内人君、ソレ何の話?


「なの! ブキミちゃん、答え聞く前に読み方考えるの!」


「あ、そうね。よく言ってくれたわなの! 案内人、答えはまだ! 考えるから待って!」


「そうだね。その方が楽しそう。いいよ、頑張って考えてみて」


 あー、あれだよな。子の読み方が確かこ、の、ね、し、といった感じにいくつも読めるから一応文章に出来たって話だろ。


「えーっと、こが十二個あるんだよな。小姑? 違うな。分かった十二支だ!」


「未知なるモノさん、ぶーっ」


「なんでだよ、十二の子だろ、子はし、とも呼ぶし」


「し? 子ってこ、じゃないの?」


「なの。子はこ、ね、し、ご、と結構読み方があるの」


「えーっとじゃあ……こねこのしごねこのこしね」


 子猫の死後ね、この子死ね!? 読めはするけどそれ酷すぎるよ!?


「あー、はは。答えはね。猫の子の子猫、獅子の子の子獅子だよ。昔の話だから余分に【の】が入って来るんだよ」


「えぇーっ! いじわる問題!」


 もともと王様だか帝が怒り狂って出したらしい奴だからな。読めない前提だったんだろ。

 でも各天皇の号はその天皇の死後に送られるらしいから帝が生前行ったこの話嘘って噂だけどな。実際はどうなんだろうね。

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― 新着の感想 ―
この後の展開は悔い改めるならとかなんとか王さんから言われるんだね 全く関係ないヒロキであっても… そしてあれやこれに巻き込まれて閻魔さんを連れ帰る(お持ち帰り)までがストーリーに入ると
地獄系列の某漫画… 未知「地獄最凶の補佐官のマンガを見てたな…」 ヒロキ「それに遭遇する前に逃げるぞ 絶対に勝てる気がしない」
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