1083.教会リターン
「マイネさんはどうかな?」
「ああ、そこの容疑者か。確か町を火あぶりしたんだっけ?」
「ち、違うわよ!? 町を燃やしたんじゃなくて、酷い有様の人たちに引導渡したら商店街まで引火したのよ! 私悪くない!」
「……ふむ、そちらの証拠なども映像はあるのかな?」
「えーっと、バイアスロンさん持ってますよね」
「うむ。君たちから預かっている。こちらが証拠映像だが?」
「元は俺が預かる。コピーして自分たちでも保管してくれ」
「了解」
コピーを終えて元画像をお兄さん天使に手渡す。
隠遁してるけどもう隠れる気ゼロだよねお兄さん。
「ふむ、なるほど、一番の悪は秘密結社クモリエルか」
映像を見た天使たちが唸る。
というか、ヤアスリエルさんだけ見ずに何か書きまくってるけどいいのかこれ。
「ああ、気にするなヒロキ君。彼は見ていないように見えるがちゃんと見ている」
「ヴレヴェイルの方が見てないくらいですよ」
「こちらは別に見る必要はありませんので。私の目的はヒロキ君たちの動向を記録すること、ですから」
なるほど、本当に記録するだけが彼の仕事なのか。
だから考えたりマイネさんの罪がどれほどかを告げる必要はないわけだ。
「どうです?」
「ふむ。天使風に言えば、姿は変わろうとも彼らは死を求めていないように見える。つまり虐殺ですね」
「っ!?」
「あら、でももう救われる可能性がない迷える羊たちを主の身元へ送る。正義の行動と呼べるのではないかしら? 私は賛同するよマイちゃん」
「こっちの判断はともかくとして、この炎が商店街を燃やし尽くしたのは問題だろう。火が消えるのを確認しておくべきではなかっただろうか? と思うのだが」
「お兄さん天使、一つ抜けている。商店街の面々はクモリエルに加担していた。それを加味すると無罪に持っていける」
お、おお。まさかのヤアスリエルさんが一番マイネさんよりの答えを出してくれたぞ。
「そういやそいつら加担してたんだったか。となるとこの業火はゴモラやソドムのようなもの、と捉えることもできるか。後は天使がやったか人間がやったかの違いだが」
「話し方次第では十分無罪も勝ち取れるようですね。このような結果でどうですヒロキ君?」
「十分です。後は俺らの弁舌次第、っすね。なんか裁判楽しみになってきました」
「ちょっとヒロキ!? 私の今後がかかってんだから遊び感覚とか止めてよ!?」
「はっはっは。まぁ落ち着けマイネさん。ってかさ。さすがに今から裁判となると時間的に夜間の部に入っちまうからさ。一旦別れようぜマイネさん。明日裁判でいいだろ?」
「嘘でしょ!? 夜間も手伝いなさいよ」
「そろそろ七不思議最後の学校行きたいんだよ。まだ何か足りないのか、あるいは天界行けたから問題ないのか、とりあえず試さないとさ」
「くぅ、仕方ない。宿ってどっかあるの?」
「おぅ。案内するぜ」
「マイネさんたちはもう宿? 俺らは一応教会で神の声もう一度聞いて、ルースさんの階位改定、やれそうならやってから夜間部隊と交代するつもりなんだ」
「そう? じゃあ先にログアウトしておくわ。ドリームランドに出なきゃいけないから大変なのよ。そろそろヒロキたちもカダテロン来なさいよ」
「いやー、俺ら地下世界に居るんで。この後は障壁山脈目指さないとだし。まだまだカダテロンには行けそうにないっすわ」
「くっそぅ。ドリームランド満喫しやがって。これで勝ったと思うなよ――――っ!!」
マイネさんが負け犬の遠吠えみたいなこと言って駆け去って行った。
ログアウト場所、まだ聞いてないだろうに。
「ったく、しゃーねぇな。案内してくるわ」
そういうことならマイネさんはヨシキにお任せしよう。
俺たちは一旦サラカエルさんたちと別れてもう一度教会へと向かうことにした。
この神殿、俺とメリーさん以外は入ってないらしい。
ルースさん一緒にいるしイベント起きたりするだろうか?
暇そうに神父役しているガブリエルさんが居たので軽く手を上げて挨拶。
「あら、また来られたのですか」
「うっす。せっかくなんでいろいろ祈ってみようかと。声が聞こえるかどうかは別として」
「そうですか。迷える子羊に幸あれ。ところで貴方は何をサボっているのですか?」
「おっと、待てガブリエル、お兄さん仕事中。ほら、ヴレヴェイルが記録中だろ?」
「む……まぁいいでしょう。あまりお戯れはしないようにしてください。貴方にしかできない仕事は多いのですよ。可能であれば花を前に踊ることすら貴方がする必要はないのですから」
「アレも立派な仕事だ。私の踊りは素晴らしいだろ? 切れも良くなったんだぞ」
「……アレ、が?」
眼を見開いて驚くガブリエルさん。
お兄さん天使の踊りがおかしいのは他の天使たちも認めることのようだ。
お兄さん、ダンス向いてないってよ。




