1082.議会場の大天使
サンダルフォンさんに紹介いただいたのでサラカエルさんを尋ねて議会場へとやって来た。
ついでにルースさんのランクアップについてもサラカエルさんに聞けばいいらしい。
議会場へとやってくると、中央広場と壇上になった円形の広場を囲う壁、というか階段というか、むしろ椅子? 議会ってこの壁兼椅子に座って話し合いするのか。
「おや? 珍しい、こんな場所にヴレヴェイルが来ている」
「あは、ヴレちゃーんおはー」
「ヒロキ殿、中央に座っているのがサラカエル、隣のもこもこヘアのあーぱー娘がハニエルだ」
「あー、それ逆隣りにいる何か書いてる奴が記録係のヤアスリエルって奴だ。ヴレヴェイル、同じ記録の天使だろ。仲良くしろよ」
「あの方だけ神の真名を知っているのですよ、忙しそうですし我々木っ端天使など気にも留めてはいないでしょう。人間も相手にされませんし、覚えるだけ無駄かと」
「へぇへぇ。悪いねヒロキ殿、天使にも苦手な存在はいるんだ」
なるほど? まぁ別に誰が誰を嫌ってるとか覚えるほどじゃないと思うし、適当に聞き流そう。
「あれあれ? 誰もいないところから聞いたことある声聞こえてるー?」
「分かってもここはスルーすべきですよハニエル。それで、皆さん私たちに何か御用で?」
俺は早速聞きたいことを一つずつ尋ねていく。
まずはアクニエルについて。
「ふむ。今のところ私のところまでは上がって来てませんね」
「そうなの? 私はたまに聞くよ? アクニエル様が酷いから何とかしてーって。告げて来た天使は大抵しばらくしたら大罪犯して堕天しちゃってたけど」
「待ってくださいハニエル、それは、そこの人間が告げたアクニエルの悪行とほぼ同じではないですか!」
証人いたよ。でもこの人アクニエルが堕天させたと理解してなかったから報告してなかったようだ。
「一応、これ、俺とアクニエルの出会いと今まで天使たちから聞き取り調査した証拠映像っす」
「元映像は俺が預かっている。俺、失敬。私としては黒に近いと睨んでいるが、どう思う?」
お兄さん天使に言われ、サラカエルさんは唸る。
「信じたくない事実ですね。これが事実であれば他にもアクニエルに協力している存在が居ます、彼らは悪行を悪行だと理解して無実の天使たちを堕天させたということになるのですが、そんな存在が二人以上も!?」
「うあちゃー。神様激おこしちゃうんじゃない?」
「今のところそのようなお怒りの声は受け取っていませんが、我らが神にも何かしらの考えがあるのでしょう。ヤアスリエル、何か知りませんか?」
「私は神の間違った名を書き換えるのに忙しい。そのような些事はお前たちに任せる」
「でしょうね。はぁ。ラドゥエリエル様が動いているならば問題はないでしょう。私も準備しておきましょう。そこの隠遁天使、ちゃんと裁判には出てくるのですよ」
「当たり前だ。天界にこのような悪行が罷り通っているのなら叩き潰さねばならん」
バイアスロンさんが後方兄貴面でうんうん頷いているけど、彼らの方が地位的には上なんですよね?
なんでそんな若い者たちの熱き熱意にほだされた歴戦の英雄みたいな立ち位置なんですか。
「それと、ですね、話は変わるんですが……」
アクニエル以外の目的もサラカエルさんに伝えてみる。
「ふむ、そこのルースルスの天使昇格の儀か。今の階位からどれだけあげられるかはやってみないと分からないですよ、最悪上がらない可能性もあります。それでも受けますか?」
「彼女は十分すぎるほどに成長してます。きっと昇格できるでしょう」
「わかりました、見習い天使ルースルス、正式な天使昇格の儀を行い汝の階位を認定するか? 二度、失敗すれば汝の存在が消え去る、それでも受けるか?」
「やるっす!「ルースさぁん!?」あ、やります!」
未だに下っ端属性抜けないなぁルースさん。っすはいらないって言ってるんだが。あれで大天使になられたら部下の方が辛いだろ。
「それと、そちらのルルルルーアだったか。彼女の罪は神の名を騙った裁きを行ったことだな。メタトロンが怒っていたぞ」
「あら?」
おいおい、裁判長が激怒って相当じゃね。
ルルルルーアさんの言動そんなにヤバいっけ……うん、ヤバかったわ。
「神がお許しになったのです、つまり私がやることは全て天罰です。何が悪いのでしょう?」
「ああうん、なるほど……あとでガブリエルさんの居る神殿連れて行こう。あそこで聞こえた天の声、いつもの人じゃなかったし、もしかしたらアレが神の声かもしれんし」
「ところでこのルルルルーアさんが聞こえてるらしい神様の声って天界の神様の声と違うってことはあります?」
「ふむ? この世界に居る限り、神は我らが唯一神のみ、他の神を名乗る者たちは天使や精霊の類が自称しているに過ぎない、と思っていただければ」
ほほぅ。つまり、神の声が聞こえているということは必ずしも唯一神ではない可能性はあり得るわけか。なら、つけ入る隙はある。
あとは、マイネさんだな。




