1078.神の導き
「なるほど。アクニエルですか? 私の方にはそのような悪行の噂は来ておりませんね」
「マジすか。こんな感じなんすけど」
とりあえず天界来てから映していた映像をガブリエルに見せる。
あらあら、と困った顔で見終えたガブリエルは確かにこれはダメねぇ。とだけ告げる。
うん、この人裁定者とかじゃないからそういう感想なんだろうね。
「とりあえず、注意はしておくけれど、決定的な瞬間を現行犯で見つけないと、証明は難しいでしょうね。貴方方が上手く行くように、神へ祈りを捧げましょう」
あ、ここで祈れって? はいはい。拝み屋の本領発揮しますよ。
俺拝むのは得意っス。
ナムーっと。
―― ヒマワリの前で踊ってる者にもお聞きなさい。動画も見せるのです ――
ありゃ? いつもの天の声じゃない声が?
「どうです? お告げはありましたか?」
あれ、お告げなのか?
いやでも……うーん? まぁ言われたとおりのことをやってみるか。
そういえばあのお兄さんには何も聞いてなかったな。
ひまわり畑の前で変な踊りしてたから近づいちゃいけない人扱いしてたわ。
「ガブリエルさん、ありがとうございました」
「ええ。貴方方の未来に幸あらんことを」
ガブリエルさんにお礼を告げて神殿を後にする。
大して進展しなかったけど、神の声か何かよくわからないお言葉を聞いたので、なんかイベント進展したんだろう、と思っておこう。
あー、いたいた。まだ踊ってるよ。
俺は痛い踊りを続ている若い天使の元へと向かう。
「あのー、踊りながらでいいんでお聞きしてもいいですか?」
「ほいっ、ほいっ、ああ、いいぞー。そいやさ!」
凄い関わりたくないけど、とりあえずアクニエルに関して聞いてみる。
「いやー、そいつの黒い噂なんざ聞いたことねぇな。ほいよ、ほっ」
「あのー、交代の時間に成りましたよ」
っと、タイミングよく次の天使さんが来たようだ。
「おう、じゃあ任せる。えーっと人間君だったね。アクニエルが何かやらかしてるというのなら証拠でもあるのかい?」
汗だくで踊りを辞めた天使が場所を譲って俺の傍へ。
代わりの天使が彼の居た場所へとやってきて、踊りを始める。
おお、この人の踊りはワルツ系じゃん。踊りは個人個人で適当でいいのか。
じゃあやっぱりこの男の天使さんが変な踊り踊ってただけってことか。
「あ、これ証拠映像っす」
「ほーう、どれどれ? おいおい、マジかよ。人突き飛ばしておいてお前が訴えるのか……」
ね、悪人っしょ。
「とはいえ、これだけじゃ堕天にゃ程遠いぞ。せいぜい口頭注意だろ」
「今噂集めてんすけど、結構な天使からあくどい話聞いてますよ。どうやら前々から気に入らない天使を罪人にして堕天させたりしてるらしいっすわ」
「なに?」
お、おお? なんか一瞬背筋がゾクッとした。
この人、もしかしてヤバい系の天使?
鑑定しようか、いや、でも天使相手に勝手に鑑定したら不味いか?
「ふむ。私も一緒に聞かせて貰ってもいいかな?」
「え? まぁいいっすけど」
「ああ、ちょっと待ってくれ。隠遁」
「え。消えた!?」
すぐ真横に居た男が一瞬で消え去った。
驚く俺に声が聞こえてくる。
男天使の声だったので、姿こそ見えないがすぐ傍にいるんだろう。
「俺はすぐ傍に居る。アクニエルの話を聞くのに俺が居たら他の天使が警戒しそうだしな。ほら、情報収集続けてくれ。あと、証拠映像の類、元の奴こっちに預けてくれないかな? 悪いようにはしないから」
「うす。あ、じゃあコピーだけ取らせてください」
さて、どうすべきか、と思ったんだけど、まぁ普通の天使がアクニエルの悪行隠蔽なんかしないだろう、と思うのでコピーを残して元映像をお兄さん天使に渡しておく。
「ん、他にもあるのかい?」
「ついさっきまでの天使たちへ聞いて回ってた映像っす。どういう証言があったか、メモするだけより証拠能力になるっしょ」
「キミ、抜け目ないなぁ。お兄さん感心するよ」
まぁ男天使とかお兄さん天使、とか言っても性別的なものは天使にはないらしいけどね。
まぁ男性っぽい天使だから男天使でいいだろ。
「そんじゃ続きをしますかね」
情報収集を再開しながら天界を散策していく。
メリーさん、屋台で買うのはいいけどさ、この焼き鳥何の肉? あとお兄さん、なんで俺があんたの分まで買ってるんだ? 自分で払えや!?
「ふむ、こういった屋台で食べる機会はなかなかなかったのだが、意外と美味いな」
「食べないんすか?」
「踊りを踊りに来る以外この近辺には来ないんだ」
隠遁スキルで姿消してるからか、すぐ隣で宙に浮く串焼きが次々消えていく怪現象になってるんですが。本人、姿消えてること忘れてないよな?
 




