1074.天への階段
「ひぃろぉきぃぃ」
「いや、マイネさん。落ち着こうか。電話切り忘れたのはマイネさん、オレ、ワルクナイ。アト、ミンナ、キイテタ。オレダケ、チガウ。ミンナ、イッショイッショ」
「うんうん、とりあえず理由は聞こう、マンホールで殴った後で!」
「話聞く気がねぇ!? 落ち着けマイネさん、これ、天界の人見てるかもだぞ。ほら、ここで俺ら殺してたら裁判で不利になるかも!」
「ぬぐっ」
振りかぶったマンホールが俺の頭蓋に当たる数センチ前で止められる。
あ、あっぶねぇ。
「あとで殺すっ」
忘れてください、今すぐにでも。
「ほら、痴話げんかしてねぇでさっさと行こうぜ。パーティー組めよ、俺らが選択して案内すっからよ」
「なっ!? 痴話げんかなんかじゃないし!」
「へぇへぇ。ほらヒロキ、パーティー組もーぜ」
ユウとパーティーを組み、ささっと選択肢移動。
ヨシキとヒバリもマイネさんとパーティー組んで遅れてやってきた。
向かった場所は……どこよここ?
なんか岩場で出来た広い場所で、そこにぽつんと扉が一つ。
観音開きで質素なその扉は、裏側に回ってみても何もなかった。
つまり、本当に扉が一つあるだけなのだ。
謎過ぎる扉、開くと別の場所に行けるどこでも、なドアなのか、それとも開いた先には同じ岩場が見えるだけの何の変哲もないドアなのか。
「んじゃ、開くぞ」
ユウが率先して扉を開く。
そこにあったのは……階段だった。
透明な階段が空へと向けて広がっていた。
「これが……レンブラント光線!」
「おう、そうだぜヒロキ、これがれんぶら……なんて?」
「天への階段だぞ? 頭おかしいんじゃねぇのか?」
おいおい、レンブラント光線って言えば天から差す光とか天の階段とかの別名だろ。
このくらいのボケ、ツッコミ入れるくらいはしてほしかったね。
「まぁいいわ。それより皆。階段踏み外したら死ぬからちゃんと足元見ながら上がってね。結構長いから」
「ま、こういうのは真ん中歩いてりゃ基本落ちたりしねぇって」
「お前なぁ、前にここ進んだ時強風にあおられて落ち掛けたの忘れたかユウ?」
「うっ、ありゃ滅多に吹かない風だって言われただろ。そう何度も落とされかけてたまるか」
なるほど、風の強さによっては飛んでいくのか。
んじゃ悪いんだけどメリーさん。
「ええ。ポケット入ってるからしっかり守りなさいよ!」
へーい。
「ベーヒアル、その卵アイテムボックス入れよう、さすがに落として割れるのはダメだろ?」
「ギュー」
なんだその声、不満そうだな。でも差し出してきたのは本人も危ないと分かってたからだろう。
あとは、ツチノコさんだな。
「ルースさん、悪いけどツチノコさん体に巻きつけといて。ツチノコさんも飛ばされそうならしっかり捕まるんだぞ。ルースさんなら最悪飛ばされても戻って来れるだろうし」
一応本人天使だからなぁ。今どの辺りのランクなのかは知らんけど。
最近ステータス確認怠ってたからなぁ。正直怖いんだよ、どんな面倒なスキル覚えてるか見るのが。
特に俺の二つ名とか、絶対ヤバいのばっかついてるだろ。マジふざけんな。
皆で階段を上りだす。
安全を期すために一列で真ん中を登ることにした。
先頭はヨシキで、マイネさん、ユウ、俺、ベーヒアル、ローリィさん、ルルルルーアさん、ルースさん、ヒバリの順で上がっていく。
ベーヒアルだけ二足歩行じゃないけど、その分階段に近いから安定してる気はするな。
皆多少のスペースを開けて、誰かが落下しても巻き添え食らわないくらいの間隔作って上がっていく。
「おー、確かに上に来るほど風が強いわね」
「まだ天界に入ってねぇからな」
あー、なるほど、上の方に異世界への扉みたいなのが開いてるな。
つまり、扉を経て位相世界に向かい、階段上って天界という異世界に辿り着く、それが天界へ生身で向かう方法の一つってことだろう。
おそらくこの天界は彼岸とか極楽とかから地続きで向かえる場所だと思う。
つまり、この天界の切れ目を越えたら天国とか、極楽浄土とかなんか天界系世界に紛れ込めるはずだ。
ま、面倒だから行かんけど。
「あら? これから天界?」
「うっす。なんかこいつが裁判するらしいんで案内してます」
「そうなの、メタトロン様もウリエル様も公正な裁判をしてくださいますから、しっかりと正しき証言をするのですよ」
なんか綺麗なお姉さんともお兄さんともつかない翼生えた人と、ヨシキが会話する。
そして天使は階段を下りていった。
「この階段はよぉ、天使たちも使ってるらしいぜ。下界に降りるときに使ったり、下界から戻る時に使ってるらしい」
「時間帯や時期によっては行列作ってる時もあるらしいわよ」
マジかよ、天への扉開かれたまま行列待ちしてる天使たちとか、秘匿性なさすぎじゃね?




