1070.もう許して
結局、夜間の部は幽世から帰ってきた時には終わっていた。
仕方ないのでそのまま夢の中へ向かってドリームランド。
未知なるモノさんの方が先についていたようで、ノーデンス神殿で目覚めた俺たちは、目を覚ますと老人と未知なるモノさんに出迎えられた。
せめて美少女とは言わんから女の子であってほしかった。
目覚めたらジジイの顔だったとか絶望だわ。
んで、起きたら起きたで貴方たちに会いたい方がいらっしゃっているので全員揃ったら本殿に来てくれ、とか言われて全員が揃うまでここで待つことになった。
ヌグス=ユグさんの寝床でしばし待つことになったんだけど、ここはちょっと陰気臭いというか、ダニだらけの寝床っぽく見えるんだよなぁ。
さすがにここにマダにーさん系はいないとは思うけど。
というか居たらすでに俺らは死んでるか。
まぁくたびれた寝床ってだけで問題点は無いんだろうな。プレイヤーの寝床にもなってるからここでログアウトとかも出来るっぽいし。
よし、全員揃ったな。珍しくなのさんが遅れて来たのには驚いたけど。どうやら寝落ちしてたっぽい。
下手すりゃ今日全員揃わなかったかもしれないのか。危ないとこだったな。
全員揃ったのでノーデンス神殿の本殿部分へと向かう。
本殿へ向かうと、ヌグス=ユグさんの他に、中央部に厳つい爺さんが待っていた。
顎髭が触手で出来た爺さんは、俺たちを見るなり、豪奢な椅子から立ち上がり、その場で膝をついて頭を下げる。
つまり、土下座である。
「いや、いきなりどうした!?」
「もう許してくれっ、儂の眷属が済まんかった! 済まんかったからコトリバコなんとかしてくれぇっ」
ええぇ。
「あー、ヒロキ、こいつノーデンス本人っぽい」
ニャルさんがなんとも苦い顔で告げる。
ノーデンスとは仲が悪いようで見たくなかったという思いと、そのノーデンスが自分たち向け土下座してる姿にざまぁという思いが複雑に絡み合っているらしい。
えーっと、話を聞くに、どうやらナイトゴーントにムカついたのでそこら中に放り出したコトリバコにより、ナイトゴーントだけでなくドールまで一斉に呪殺されてしまい、ナスの谷から彼らの姿が消えてしまったのだとか。
さすがに、見過ごせないとやって来たノーデンスだったが、俺たちは既にいなくなった後、当たりに散らばるコトリバコは数千。
コトリさん、凄く楽しそうにばらまいてたからなぁ。もはや回収不可能となってしまっており、回収したモノも捨て場に困って結果的に手を付けられない状態になっているそうだ。
「頼む、このままでは我が眷属が極端に減ってしまう、どうか、どうかコトリバコを除去してはくれまいか!」
「そう言われてもなぁ。そもそも俺のキャンプ用UFOがナイトゴーントに拉致られてナスの谷に捨てられたのが理由だしさ」
「分かっておる。補償としてノーデンシスが使っている最新鋭UFOを渡す準備がある。ゆえに怒りを鎮め、コトリバコを除去してはくれぬか。仕返しにしても十分なはずだ。其方らの怒りでナイトゴーントの被害は数万匹に及んでいる。ドールを含めればさらに、だ」
そんなに!?
確かにそれだけ激減したら泣きついてくるのも仕方ないか。
コトリさん、アレ回収できる? え、無理?
「出したコトリバコは破壊してしまうのが一番ですね。戻せませんよ。私の裾にはあんなに入りませんし」
うん。アイテムボックスの肥やしにするしかなさそうだ。
「あー、皆、コトリバコ回収してアイテムボックスにしまっちゃおうか」
「まぁそれしかないか。つかヒロキ、言うべきか迷ったんだがよ。ウチの従兄妹に正義の味方譲ったんだって? 一応、ありがとな」
俺にお礼、言いたくなかったんだな……
「あー、格ゲー少女さんっすか。まぁなるべくしてってやつですね、なんか言ってました?」
「明日は彼らと冒険してみるそうだ。本人もNPCたちと冒険でわくわくして寝れないかも、とかいってたよ。次の瞬間寝てやがったけど」
すぐ寝れるタイプなのか。
「しかし、ナスの谷に放り投げたコトリバコもあんだろ、アレどーすんだ?」
「ノーデンス曰くナスの谷にはもう生きたドールはいないから降りても大丈夫だってさ。コトリさんが箱の場所は分かるから、後は回収するだけだね」
「いや、生きたドールいなくなったナスの谷って……俺らドール見に来たんだよな?」
そういやそうだな。え。いないの?
そんなの動物の居ない動物園に来たようなもんじゃん。
あるいは魚の居ない水族館とでもいうべきか。
ま、まぁさすがに全部いなくなってるわけはないよな。
ナスの谷と言えば無数の躯が積み重なって谷間に埋まってるとかいう噂でその地下をドールが出入りしてるんだよな。他に、そのドールを食べるドールアリジゴクが居たり、ドールの血を吸ってるダニ人間とか言うのが居たりする、はず。




