1063.今日も行けない
「さて、そろそろ七不思議行くかー」
夜の部と言えば七不思議、ということでついに大学七不思議行こうか、と思った俺だったのだけど。
「ダーリン、今日はハナコたち居ないぞ?」
「なんでさ!?」
せっかくパープルちゃんについても今はどうしょうも出来ないっていう結論に達したというのに。どういうことだってばよ!?
「なんかアイドル事務所の方で打ち上げだって。ヒロキも誘おうと思ったらしいけど怪人関連で忙しそうだったからやめておいた、って連絡来てない?」
連絡? あ、メール来てる!?
丁度自己イデア行ってる時に来てたようだ。
確認し忘れてたとはいえ、ハナコさんとの飲み会ぶっちだと!? 今日は厄日か!?
「今日はもう、諦めたほうがいいんじゃない?」
「こっち残ってるメンツもあんまりいないよヒロキさん」
「そーそー、おとなしく僕を戻す方法を探してくれよヒロキさん」
そうは言われてもなぁ。
んー、確かにハナコさんたちが居ないと七不思議行っても意味ないんだよなぁ。
残ってるメンバーは誰がいるの?
「あれ? ヒロキなんでいんの?」
と、スレイさんに確認しようとした矢先、部屋に入って来た芽里さんに酷いことを言われた。
「何だよ、俺が居たらダメなのか芽里さん!?」
「そ、そうじゃないわよ。ほら、ハナコが打ち上げ行くって言ってたじゃない。ヒロキなら一緒に行ってるでしょって話よ」
「それがさぁ芽里さん。俺そん時自己イデアにいてさ。メール来たこと今気づいたんだ」
「へー、ヒロキの幸運スキルがあるのに、そんなミスすんのね」
言われてみれば。なんでハナコさんと一緒の最高な幸運を放置したんだ幸運スキル!?
「そう言われてみれば、ここにダーリン残ってるの謎だな。つまり本日はハナコさんとこ行くよりも大切なイベントが起こると?」
「おいおい、さすがにそりゃないだろ」
と、言いたいところだけど、否定しきれないのがなぁ。
「一応聞くけど、今回ここにいるメンバーって他に誰かいる?」
「んー。ヤミコとブキミが残ってたはずよ。あとはー蛇々利さんくらい?」
「呼んだ?」
芽里さんが名前を出した瞬間、蛇々利さんが部屋へと入って来た。
このメンツしか残ってないのか。このメンツで変なイベントに巻き込まれるとかあるかぁ?
そもそもUFOから出る気ないしなぁ、今日は。
「ホ~」
そうそう、ほーっと一息入れてドリームランドに備えよ、う?
「ホ~」
なんだ、この間抜けた音は?
「許すまじ、ホ~」
あ、これ、イベントっぽい。
なんで家の中に居るのにイベントが!?
「なんだなんだぁ?」
「皆警戒! いつでもプリピュアに変身できるようにして!」
「ダーリン!」
「お、おぅどうしたスレイさん。何か分かった?」
「これ、おそらくだがたたりもっけだ!」
たたりもっけ?
「クソ、コトリさんが居ない隙を狙われるとは。ヒロキがいるのはむしろ幸運か!? 全員ヒロキの傍によって絶対にはぐれるな!」
な、何が起こるんだ!?
戸惑う俺の元へと集まって来る女性陣。
「世界よ、変われ、ホ~ゥ!!」
その言葉と共に、俺を取り巻く周辺がぐにゃりと歪み、前後不覚へと陥ってしまう。
あー、クソ、まじかぁ。
また今日も七不思議攻略不可能じゃん。
結果、今日は濃密な濃霧の中に置き去りにされております。
なんすかここぉ?
「ダーリンおるか?」
濃霧のせいですぐ傍にいるはずのスレイさんすら見当たらない。
すっと手が伸びてきて俺の服を掴んでくる。
「スレイさん、今俺の服掴んでる?」
「うむ、おそらくそうだと思うぞ。少し近づくから動かないように」
「まぁ、そこにいるのねア・ナ・タ」
うひぃ!? 今背中触ったのだれぇ!?
って蛇々利さんかよ!?
「こ、この辺から声聞こえたわよね」
「えーっと、こ、ここ? わひゃ!?」
唐突に、右側の手に何かが触れる。
さらに遅れて左の腕が柔らかなにかにふにょんッと挟まれた。
「わ、わ!? ちょ、なんで僕の胸に腕が挟まってるの!?」
なんだパープルちゃんか。
「いたいた。これヒロキよね?」
「そっちは芽里さん、でいいかな」
「ええ。私と、メリーもいるわよ」
俺が動かず居ることで、皆が近くに寄って来てくれているらしい。
プリピュアの残ったメンバーもゆっくりと声のする方に近づいてきて、一人、二人、三人。
「あ、これダーリンだよね。あ、違った。パープルちゃんだ。じゃあこっち?」
四人。最後に、五人目っと。
ん? 俺の前にスレイさん、右に芽里さん、背後に蛇々利さんで左にパープルちゃん。
そこから五人の手が俺を掴んできてるわけで……
一人、多くね?
霧の奥に無数の手。
本当に彼らの腕で合っているのだろうか?
それとも別の?
俺の体に触れている手は皆女の子といった感じの手なのだが、一人分、多い。
な、何で多いんだ!?




