1062.究極の二択
「ふあぁーっ」
あくびをしながら起き上がる。
ちょっと寝ただけだが、もう起きちまおう。
ディスマン放置して来たけど、すぐ隣にルルルルーアさんの認知存在が肩ポンしてたし、問題はあるまい。
どうやらルルルルーアさんとコトリさんの認知存在は俺のイデア内を徘徊しており、異変を見つけると自動で駆除してくれているそうだ。
基本二人が居ればイデアは安全が保障されてるので放置で良いらしい。
なのでさっさと起き上がって夜の冒険に向かうことにする。
さて、本日の夜間の部、どこ行こうかね。
七不思議行けちゃったりするのか。
それともまたイレギュラーが発生しちまうのか。
とりあえず皆が集まってる部屋に向かうかね。
「っと、ありゃ。プリピュアの皆帰って来てたのか」
「あ、ヒロキさん。ついさっき向こうが片付いたので戻ってきました」
「これからスレイさんの結果報告聞くんですけど、一緒に聞きます?」
「だーぁーりーんっ、こっちこっち。えへー」
イエローさんに誘われたので彼女の横に座ると、ぎゅっと腕にしがみついて来た。
これは、役得!?
「ホントイエローはヒロキさんにゾッコンだね」
ははは、だといいけどねー、イエローさんのは遊んでるだけじゃない?
ちょっとあからさま過ぎて逆に怪しく思えるんだけど。
コトリさんとかティリティさんみたいにじめっとした感じもないし。
スレイさんタイプっぽいんだよな。
惚れてるのか遊んでるのかわからない小悪魔系というか。
たまに寄ってきて好き好き言ったと思ったら自分の趣味に没頭するタイプ?
イエローさんの場合はその趣味が正義の味方って感じかな。スレイさんは改造関連。
「またせた!」
「スレイさん、どうだった!?」
「ぼ、僕は戻れるのか!」
スレイさんが手に入れたデータの話か。
結果はどうなったんだ? 俺の幸運スキルが仕事してた場合幸運にもデータ破損で見られなかった、女体化したまま諦めろ、になりそうなんだけど。
「結論を言えば、戻れる」
「ほんとか!」
ありゃ?
「ただし、現在の成功率は1%未満だ」
「……は?」
「私の技術だと性別変更の成功確率はあまりにも低い。何しろ手探りスタートだ。このデータも大事なところがバグってしまって見られなかった。だがある程度の方法と理論、想定を駆使した結果、可能性の段階だがこうすれば改造できるだろう、という状態が今だ」
「それ、実験せずにやると……」
「間違いなく、異形生物になるか、意識を無くしたバケモノになるか、最悪死ぬ」
「だめじゃん!?」
「つまり、究極の二択。にゃんこオアデッド、だな」
「死ぬこと確定じゃないか!?」
「仕方ないだろーっ。肝心な男性器再生方法がデータ破損してて半分以上のデータを入手できてないんだからぁ! あー、もうちょっとだけデータ吸えてれば手に入ったのにぃ」
「悪いなスレイさん。スレイさんの命には代えられなかったんだ」
いや、後から思えば死に戻りしてでもデータ吸った方が良かった気はしなくもないけど。
まぁあのままデータ入ったUSBメモリだって爆発に巻き込まれて使えなくなってたかもしれない、と考えれば少しでもデータ貰えた分幸運だったんじゃねぇか?
「う、うん。もう、ダーリンったら、仕方ないなぁ」
顔を赤らめたスレイさんは白衣で顔を隠しつつ、ぴしっと指を一本立てる。
「その代わり、だ。怪人の死亡時泡化する方法はわかったよ」
うん、一番いらんデータだな。
「他には何か手に入った? 女体化の仕方とか、男体化の仕方とか、コピー部隊とか」
「残念ながら全部触りだけだダーリン。仕方なかったとはいえ、後から見返すと後悔ばかりが押し寄せてくるよ。あー、せめて怪人たちの改造データだけでも手に入ってれば……」
それはスレイさんが喜ぶだけの奴だね。
まぁ残念だけど手に入らなかったのなら諦めようか。
「とりあえずスレイさん、申し訳ないけど、女性体から男性型怪人に変化する方法、模索して貰ってもいいかな?」
「いいけどダーリン。怪人の研究は正義の味方の許可いるぞ。バイアスロンに口酸っぱく怒られてるからな。あと改造できるのはプレイヤーの中で変化了承を貰った奴だけだ。それ以外の怪人化は許可されてない」
そういやそうだったな。
「あー、そういえばこの人秘密結社のドクターでしたっけ」
「ああ、ここは正義の味方たちの連絡所も兼ねてるから彼らに監視されて研究してるんだ。だから怪人改造系は彼らの許可がいるんだよね。たとえ正義の味方を助けるためでも秘密結社の元ドクターに怪人研究をさせる訳にはいかないだろ」
「それは、そうですね」
「じゃ、じゃあ僕は!?」
「とりあえずスレイさんが手に入れたデータをバイアスロンさんに渡そう。正義の味方機関の方で研究してくれることを祈ろうぜ」
「う、うぅ……そう、ですね」
人体実験をすればスレイさんなら数体後になんとか出来そうだが、さすがに正義に反するので処罰されかねない。
許可、されないだろうなー。




