1058.秘密結社クモリエル攻略作戦22
「な、なんでよぉ!?」
レッドさんとホワイトさんに却下されたマイネさんが食い下がる。
いや、あんた理解してないのか。
「マイネさん。あのなぁ。ブラッククラウド将軍を復活させてテイムすんだよ」
「だから?」
「レッドとの一騎打ち邪魔してブラッククラウド将軍闇討ちした非道な女なうえに、本来脳だけでも生かせていればUFOの蘇生ポッドで復活できたかもしれないブラッククラウド将軍のトドメ刺したのもマイネさんだ」
「……あれ? それって、私ってもしかしてカイセイジャーに恨まれてます?」
「少なくとも、君と共に悪と戦いたい、とは思えなくなっている」
「もっといい結末があったと思うの。貴女がもう少し考えてくれていれば……」
つまりまぁカイセイジャーがマイネさんにテイムされる未来はなくなったのさ。
自分の行いを思い返し、頭を抱えて蹲るマイネさん。
しかし、そうなると誰がテイムするか、だよな。俺だとオッサンテイムは不安だし、マイネさんはアウト。
とはいえ豚のレバーの炒め物君に頼むのはなぁ、ちょっと仲間としては新人過ぎるし。となると消去法でここは……
「格ゲー少女、君に決めた!」
「はい?」
「ブラッククラウド将軍のテイム、多分カイセイジャーのテイムも、よろしく頼んだ」
「えええ!? わ、私ですか!?」
「ぐぅ……悔しいけど、格ゲー少女ちゃんなら、まぁまだ、赦せるわ」
マイネさんに赦しを請う必要はないと思うんだ。
むしろマイネさんが謝って。マジで。俺、快晴レッドの一騎打ち潰したこと許さないかんな。
ことあるごとにマイネさんに告げて何とも言えない空気にさせてやる。
「で、でもですね。プレイヤーで言うならほら、豚のレバーの炒め物君もいるし」
「いやー、僕はダメですよ。戦闘こそしてますけど、基本エンジョイ派ですし、今度のドール襲撃イベントもちょっとだけ参加してあとは一般的に過ごそう、って思ってるんで。そういう奴のテイムキャラになるよりはイベントとかに積極参加される方にテイムしていただいた方がいいと思います」
「ほー、豚のレバーの炒め物君はエンジョイ勢だったか」
「はい。結構な時間道路工事とかのアルバイトとかしてるんですよ。土木系のお仕事、現実じゃ体が付いて行かないですからね。こっちでしか体験できないんですよ、仕事のオジサンたち気さくでいい人たちだし、たまに缶コーヒー差し入れてくれると凄く嬉しいです」
子供姿でガテン系アルバイトかよ。まぁ本人がそれでいいなら好きにしたらいいんだけどさ。
このオンラインゲーム、ほんと変わった人が多いよな。
まぁだからこそ趣味全開で楽しめるゲームってことか。
ドール襲撃イベントでサービス終了にならないようにしないと、下手したらエンジョイ勢から総攻撃で俺のチューブが大炎上しかねないし。
必要アイテムを格ゲー少女に手渡し、テイム条件を整える。
んじゃ。やってくれ格ゲー少女。
「は、はい!」
魂を使ってブラッククラウド将軍を復活させる。
格ゲー少女の前で光が発生し、人型へと変わっていく。
こうしてみると、ダンジョンやらの雑魚的などが退去する時の逆エフェクトっぽく見えるな。
やがて光が人へと変化していき、格ゲー少女の眼の前に、黒いスーツの戦隊ヒーローが蘇る。
おお、まさかの暗雲ブラック状態で復活かよ!?
「ぬ、これは!? 私は死んだはず……?」
即座に鑑定。おお、コピーじゃない。ちゃんと暗雲ブラックって表示されてる!
「父さん!」
「ブラック!」
「む、晴斗、それに、ホワイト……」
困惑するブラックへと飛び込む様に抱き着く快晴レッド。そんな二人を遅れてやって来たホワイトが包み込むように抱きしめる。
「良かった。本当に復活できたのね」
「ふ、っかつ? ああ、そうか。私は、テイムされたのか」
自分の状況を理解し、暗雲ブラックは俺を見る。が、小首をかしげ、自分をテイムした存在を探す。
「む、私のテイム主はヒロキではなく貴様なのか?」
「あ、はい、そのなんかすいません」
「いや、問題はない。そうか、せっかく退去したというのに、なんとも締まらんな」
「馬鹿言うなよブラック。あんな死に方納得できるか。せっかくの親子再会なんだからさ、バッドエンドはやめてくれよ」
「そうだよ、ああ、レッドよかったねぇ、ずびぃっ」
レッドとホワイトに抱きしめられてきまり悪そうなブラックの肩に、ブルーが手を置き、イエローが傍に来て鼻をすする。
やっぱり、カイセイジャーは五人いねぇとな。
「さて、これでクモリエル完全攻略、かな」
「ヒロキ君、今回はありがとね。おかげでパープルを救えたよ。ま、まぁ性別変わっちゃったけど」
「そうそれ! 僕はこの先戻れるのかヒロキ! 戻れるよな!?」
「あー、どうだろ。スレイさんが手に入れた情報次第かなぁ」
他の変更方法は今のところ確証があるものがないし。
ほら、それよりここでずっといる訳にもいかないだろ。
地上に出た皆も待ってるし、さっさと帰ろうぜ!




