1057.秘密結社クモリエル攻略作戦21
「とう、さん……」
両手は空を切っていた。
割れた仮面から見える瞳からは涙が流れ、快晴レッドはただ、虚空をひたすらに見つめていた。
大切なモノはもう、戻ってこない。
いくらブラッククラウド将軍が望んだこととはいえ、この結末は、あまりにも……
ただ、ドロップアイテムにブラッククラウド将軍の魂が出てるんだよなぁ。
つまり、復活テイムが可能なキャラだってことである。
しかもコピー体やコピー完全体と書かれてない。
おそらくマイネさんが本体を破壊したことでクモリエルのコピー製造機という楔から解かれたんだろう。
今ならきっと……
でも、今言っていいのかなぁ。
レッドさんもホワイトさんもしんみりしてるし、ここでブラッククラウド将軍復活できちゃいますよ。とか言うのはちょっと気が引ける。
「レッド……いつまでも、ここにいるべきじゃないわ。貴方の、その、お父さんも、貴方には笑顔をって、言っていたでしょ」
「……わかってる。頭では、わかってるんだ。涙を拭いて、立ち上がれって、皆で勝利を祝うべきだってでも、でもさホワイト……涙が、止まらない。止まらないんだ。ずっと、ずっと助けたかったのに、俺は、何も気づかず、ずっと近くにいてくれたのにっ。俺を助けてくれてたのに。俺は、まだ何一つ恩返し出来てねぇんだ……こんな親不孝って、あるかよ……」
やっべぇ、めっちゃ言い出しづらい。
誰かこの空気変えてくれねぇかな。ちょっとだけ、ほんのちょっとでいいからなんかこう……
「皆お疲れーっ。いやー、意外と硬くてびっくりだわ。これでブラッククラウド将軍のコピー生成おわったんだよね。帰って勝利の宴会しちゃおーぜー! って、あれ?」
お仕事終えましたって感じで戻って来たマイネさん。
こちらとの空気の違いに今更気付いて困惑している。
レッドもホワイトも、今のでマイネさん見てぽかん顔してるし。
「ちょ、ちょっとマイネ! 今そんなこと言ってる場合じゃないのよ、聞いてなかったの、レッドの「あのー」」
イエローさんがマイネさんを嗜めようとしたので、割り込む様にしてレッドに話しかける。
「ヒロキ君、その、すまない、もう少しだけ、待ってくれないか。気持ちを、切り替えるから、だから……」
「いや、実は、ですね。こちらがドロップしまして……」
「ん?」
「ブラッククラウド将軍の魂。テイム用のアイテムなんすよ。条件を整えたらブラッククラウド将軍を復活させてテイムできるっていう……」
俺の言葉に、目を見開く快晴レッド。
しばしホワイトさんともども呆然として、はっと我に返ると俺の手を握って来た。あの、野郎に握られても困るのですが。
「復活するのか! 父さんが!!」
「あ、はい。ほぼ確実に、必要素材も道中で手に入ってますし、最後に、そこにあるブラッククラウド将軍の大剣があれば」
「だ、だったら、今すぐに!」
「あー、そうしたいですが、一つ問題が」
「問題!? 何だ! 俺に出来ることならなんだってするぞ! テイムされればいいのか!」
「ちょっと、レッド、落ち着きなさい! まずは詳細を聞きましょう! はやる気持ちはわかるけど、復活できるなら急がなくてもいいのよ、ほら、深呼吸して落ち着いて」
「あ、ああ。そうだな」
よほど嬉しかったようで、深呼吸すらも手早く済ませる快晴レッド。
それでは落ち着かないだろ。
「そ、それで、ヒロキ君。何が問題なんだ?」
「いや、正直問題かどうかはわからないんすけど、ちょっと怪しいから一応伝えておかないとと思いまして。実はですね。俺のテイムキャラに関してです」
「うん?」
わからんよな。俺もまだ確証は出来てないんだけど。
「俺がテイムしたキャラの中で、男性は今のとこ三人いました」
「うん? いた?」
「最初の一人、ユウキさんは、闇のゲームの罰で自分が女体化することで俺にテイムされまして。二人目のナギさんは集合的意識の問題で男子校だから男性、だったのを顔が可愛すぎるので女性だろ。という認識に変わったんですよね。今は女性です。んで。パープル君がプリピュアごと仲間になったんですけど、今回怪人に改造されて女性になりました……つまり、男性キャラテイムすると今んとこ100%の確率で女性になります」
マジでなんだろうね、これ。
いや、俺だって偶然だとは思うんだ。思うんだけどさ、万が一、億が一テイムで蘇ったブラッククラウド将軍が女性として現れたら、俺もう快晴レッドに合わせる顔がねぇ。
お前の父さんテイムしたら女になったけど、問題ないよね。とか言えねぇよ。
「偶然だとは、偶然だとは思うんですけどね。出来れば別の奴にテイムして貰った方が、いいかな」
「はい、はいはいはーい! 私テイムしますよ!」
「「却下!!」」
のんきに告げたマイネさん。快晴レッドと雪華ホワイト、二人同時に叫ばれて仰け反っていた。




