1051.秘密結社クモリエル攻略作戦15
縄を切ってテルテルボーズを降ろしてみた。
うん、だめだこりゃ。確かに死んでるわ。
ついでに言えば、死んでからあまり時間は経ってないっぽい。
「ふむ、追い詰められての自害か。敵ながらあっぱれと言うべきか? 悪の首領としては抗わずに死ぬのは初めてかもしれんが……」
とかいうバイアスロンさんも腕組みしつつ小首をかしげている。
さすがにこの結末には彼も納得できていないようだ。
とはいえ、実際に死体がある以上は納得しない訳には行かない。
「ヒロキ君、この遺体に関してだが、ウチで預かっても?」
「構いませんよ。ドロップアイテムに良いのあるとも思えないし」
あったとしても、もうあいつが持ち去った後だろうし。
「そうか。では撤収するか」
「あ、カイセイジャーの皆さん、後でちょっと話あるんでもうちょい残っててください。他の正義の味方はバイアスロンさんにお任せします」
「ふむ……ならばそうするか。この部屋の後始末は任せるぞ」
俺の言葉に何かを察したバイアスロンさんが正義の味方たちと共に部屋から出ていく。
部屋に残ったのは俺と俺のテイムキャラたち、そしてマイネさん、格ゲー少女。
豚のレバーの炒め物君がバイアスロンさんに付いて帰ろうとしてたので格ゲー少女が首根っこひっつかんで確保していた。
「ヒロキさん、私たちも残ってよかった?」
「一応俺のテイムキャラでしょプリピュアは」
「って、なんでキカンダーたち居なくなってんの!?」
「ジェイクさんたちならバイアスロンさんに付いて行きましたよ、さっき」
「なんで普通に向こうについていくのよ!? 私のテイムキャラじゃない!!」
地団太踏みだしたマイネさん。ま、まぁ、今回は仕方なかったってことで。
まさかとは思うけど、あいつらマイネさんのフォローしたくないから逃げたとかじゃないだろうな?
部屋出る時グレートマンさんが俺に向かったサムズアップしてたのが凄い気になるんだけど。
さて、これでこの部屋に残っているのは俺たちプレイヤーチーム、それとスレイさん、カルカさん、フロッグガール、分福茶釜、シコメさん、ナギさん、鷹閖祝さん、ベーヒアル、チヨさん、クティーラさん、ピュアレッド、ピュアブルー、ピュアイエロー、ピュアグリーン、ピュアパープル。そして快晴レッド、雨雲ブルー、雷鳴イエロー、雪華ホワイトというメンツである。
「それで、俺たちが残った訳だけど、何か話があるんだろうヒロキ君」
「ええ。その前に、重要人物もう一人。そろそろ出て来いよ、暗雲ブラック! いや、ブラッククラウド将軍!」
「へ?」
「ほぅ、気付いたか」
俺の言葉に、そいつは反応した。
だろうとは思ってたけど、まさか本当に生存してたとは。
舞台袖、とでもいうべきか、首領が居た場所の奥まった場所に身を隠していたそいつが現れる。
「ブラッククラウド将軍!?」
「生きてたのブラック!」
「ホワイト、落ち着け! 奴は敵だ、味方じゃない!」
「分かってるけど……ブラックが私たちの為に頑張ってたのも事実よ! だから、聞かせて。ブラック、いえ、ブラッククラウド将軍、正義の味方として戦っていたのは、なぜなの!」
「ふん。それを私から語る理由は一切ない。語る口はもたん、レッドよ、やるべきは、これだろう?」
武器を取り出すブラッククラウド将軍。
最後の決戦がついに始まった。
っていうか、マジかよ!?
「おい、ブラッククラウド! テメェ、なんで劣化コピー出してんだよ! 本物どこ行った!」
「何!? ヒロキ君、どういうこと!?」
「どうもこうもねぇんだ快晴レッド! 目の前にいるのは暗雲ブラックの劣化コピー。ブラッククラウド将軍は複数いるんだ!」
「なん、だって!?」
「むぅ、かなり高い隠蔽能力を持っているのだがな、身バレしたのであれば仕方ない。いいだろうヒロキ! 地獄の扉を開きたいのならば、開くがいい!!」
ブラッククラウド将軍がマントをばさりと翻し、手を出した瞬間だった。
部屋の壁という壁が回転し、無数のブラッククラウド将軍が現れる。
「馬鹿な!? ブラッククラウド将軍がこんなに!?」
「ちょ、なんか一人暗雲ブラック居るんだけど!?」
「それも劣化コピーだから気にせず倒してマイネさん!」
「えぇ、アレだけちょっと動きが違うんだけど?」
「マイネがやらないなら私がやりまーす、そりゃー!」
茶釜さんが飛び上がっての茶釜プレス。おお、意外と効果的だ。
避け損ねた劣化コピーが数体倒されてる。
しかし、本物はどこだ?
こうなると分かってれば暗雲ブラックの時に鑑定しとくんだったな。ブラッククラウド将軍になってた時にはすでにコピー体だったし。
いつコピーと入れ替わってたのかが分かったはずなのに、いや、むしろ最初からコピーだった?
となると、本体は……




