1050.秘密結社クモリエル攻略作戦14
せっかくの改造施設だったけど、さすが大型結社のドクターだ。
俺たちが侵入した瞬間から証拠隠滅に走っていたようだ。
おかげでほとんどの資料は見ること叶わず爆炎に消え去った。
唯一手に入れられたのはスレイさんが手に入れたデータだけど、さて、これどこまでのデータが手に入ってるのかな? 転送途中で引き抜いたせいでデータが壊れてる可能性もあるんだが。
「仕方ないさ、こうなってしまうと入手は絶望的だ」
ですよねー。はぁ。データ回収済みのに良いのが入ってることを祈ろう。
後の残りは首領の撃破だけだな。
よし、気を取り直してクモリエル完全攻略だ!
もう、残る場所はあと少し、正義の味方たちが人海戦術で部屋を調べているので、俺たちは中央の一番デカい扉に向かうだけでよさそうである。
あそこにボスがいるんだろう。
「しかし、カイセイジャー諸君、君たちは五人揃っての戦隊だっただろう、一人居ないがいいのかね?」
「キャプテンバイアスロン、お恥ずかしい話だが、ブラックはブラッククラウド将軍だったんだ。敵である以上俺たちは四人で戦うしかないんだ」
「なんと! それはすまない、そんな事情があったとは」
そういえばバイアスロンさんたちはブラッククラウド将軍が正体現した時にはまだ到着してなかったんだっけ。
といっても、すでにブラッククラウド将軍は死んじまった後なんだが。
ある程度のメンバーが揃うのを待って、俺たちはボス部屋への扉を開く。
お、ここは謁見の間だな。
玉座が一つ、珍しいくらいに透明な玉座だな。
多分クモリエルだし気象関連、おそらくだが大気を表してるから透明なんだろう。
丁度いいのでアイテムボックスに回収してやろう。
「む、玉座が消えた!? 全員警戒しろ!」
「あ、バイアスロンさんごめん。玉座消したの俺っす。珍しい玉座だったんで回収しました」
「む、そうなのか? まぁ、それならば……」
「ってかヒロキ、玉座なんて集めてどーすんのよ?」
「別にいいだろ、ちゃんと居間の座椅子として使ってるし」
「あ、それで無駄に豪華だったのねあの部屋の椅子」
さすがにまだ人数分はないので一部の椅子だけ玉座だけどな。
上座の方から順々に入れ替えてるんだぜ。
「玉座の無駄遣いですね……なんかもったいない」
「豚のレバーの炒め物君なら大量の玉座、どう使う?」
「え。えーっと……さすがに思いつきません。円卓会議用に並べるくらいですかね」
だから俺の家の居間、皆が集まるから椅子を玉座にしてんだよ。
発想一緒だね。ナカーマ。
「なんかヒロキが仲間見つけたみたいな顔してるわよ」
「え? いや、ちょっと……」
はぁぁ!? ちょっと豚のレバーの炒め物君、それはなんだい、俺と同じ発想だったのが恥だとでも言う気かね!
「はいはい、ヒロキステイ。もうボス直前だから、っていうかボスだから」
マイネさんの言葉と共に、玉座のあった場所の背後、カーテンのかかった場所にライトが当てられる。
お、なんかいるぞ。
テルテルボーズか?
「お前がクモリエル首領か!」
快晴レッドがカーテンを引き裂き、その背後の誰かへと叫ぶ。
カーテンが正義の味方たちに引きちぎられて消え去り、背後の、吊るされたテルテルボーズの姿を俺たちに見せつける。
ぷらんと揺らめくテルテルボーズ。
っていうか、なんかおかしくね?
「十分警戒しながら移動したまえ」
「ええ。ブルー、イエロー、ホワイト、四方に分かれてゆっくり近づくぞ」
一応、クモリエル担当はこの四人なので、代表して首領の様子を調べに向かうようだ。
んー、他に隠れられそうな場所もないし、首領以外この場所には、いないか?
でも、なんか変だよな。
尻切れトンボっていうか、何か重大なものを見落としてるというか……
「これは、まさか!」
首領の顔を見たらしいレッドが武器を手にして、首領をつんつんっとつつきだす。
「レッド?」
「……死んでる」
はい?
「このテルテルボーズ型怪人、すでに死んでる」
うわーお、スデニシンデター並みに切ない状況だ。
せっかく首領の場所まで来てボス戦だーってところで敵がすでに死んでいるとか。
「あ、せっかくだし、鑑定!」
こいつはなーんだ。んー、あ、首領さんだわ。
「バイアスロンさん、このテルテルボーズ、どうやらクモリエル首領で合ってるっぽいですね」
「なに!? ではこいつを囮にして首領が逃げたとかではないのか!?」
バイアスロンさんもまさか本物の首領が首吊ってるとは思わなかったようだ。
さすがにこれは想定外だな。でも、一応クモリエル撃破ってのは確かだな。
後は、アレについてだけか、残ってるの。
待てよ。アレがそうだとすると、クモリエル首領が死んだ理由は……




