104.肝試しイベント・そこは地獄の一丁目
SIDE:タツキ
正直、舐めてたといえば嘘になる。
体験型VRだとしてもそこまで怖い事にはなるまい、皆楽しんでるだけだろう。
そう思いながら、正面玄関へと足を踏み入れた。
すると、下足場を越えた先に、青白い何かが見えた。
先生だ。
半透明の教師が俯き加減で僕等を出迎えていたのだ。
とはいえ、見えてる幽霊なんてそこまで怖くない。
この程度で正気度が消えるはずも……
「き、きゃああああああああああああああああああっ!!」
「ちょ、ヒナギ!?」
うっわ、ヒナギの上に出てる正気度のバーが一気にレッドゾーン入った!?
しかもヒナギの悲鳴に驚いてアパポテトのバーも半分くらいになってる。
「こりゃ、二人は早々にダウンしそうだな」
「幽霊苦手だから仕方ない。タツキ、さっさと行こう。次のポイントは?」
ヒナギとアパポテトを放置することを決めたダイスケとキョウカ、そしてアミノサンが先生幽霊の間横を通って歩いて行く。
いや、先生凄く寂しそうにしてんぞ。少しは驚いてやれよ?
「もぅ、ダメェ……」
あ、ヒナギが気絶した。
おお、幽霊たちが何処からともなく寄って来てヒナギを持ち上げたぞ。
アレが正気度消失後の処置か。
あのまま自宅まで連れ帰ってくれるらしい。
「うぐ、畜生、この位でぇぇぇ、アミノサン、待っててくれぇっ」
おー、目を瞑って走り抜けた。
なるほどなぁ、それならなんとかなりそうだ。
僕とアパポテトは皆に遅れながらも廊下を歩く。
あれ? 三人とももしかして待っててくれたのか?
「遅ぇぞタツキ、リーダーだろ」
「そうだけど、二人ならさっさと次のチェックポイントまで行くと思ってたよ」
「ソレなんだけどさぁ、見てよこれ」
携帯電話? うっわ、血っぽいの付いてるじゃないか!?
「何処で拾ったこんなもん」
「どこって廊下に落ちてたのよ」
え、それ怪し過ぎ……あ、これアイテムボックスに入らない。
思った瞬間だった。着信を告げる音楽が携帯電話から流れ出す。
「うわ、着信?」
『……』
しかも通話押す前に繋がったよな今?
「も、もしもし?」
『……私、メリーさん、今から会いに行くね?』
「へ?」
うをい!? いきなり有名都市伝説来たんだけど!?
「これって、持って歩いてたらメリーさんが来るってこと?」
「と、とにかく先進もうぜ、メリーさんもこの先で会うだろうし」
僕らは少し怖いかも、と思いながら進み出す。
少し歩くと、また着信。
電話に出ないでいると、勝手に通話になった。
『私、メリーさん。今校門にいるの』
「ね、ねぇ、私気付いたんだけど」
「どうしたキョウカ?」
「この電話、充電切れてる……」
お、おいおい、そこまで忠実再現する必要あるのか?
再び着信、そして通話。
『私、メリーさん、今下足場にいるの』
あ、これあの角越えた辺りで追い付かれるんじゃ?
「おい、あの角過ぎた辺りで走るぞ」
「同感、絶対ヤバい奴」
「良いか皆、1-2教室だぞ、チェックポイントは。間違えんなよ」
後少し、もう少し、角に来た。
曲がる。全員が角を越えた。
……こない?
皆少し困惑し、つい、安堵してしまう。
角から少し歩いた時だった。
着信。
「走れッ!!」
『私メリーさん、今、真後ろにいるの』
「ちょ、皆速……あ、あぁ……はぅっ」
「え? 嘘だろ、アミノサンさんっ!? え? ぎゃああああああああああああああああああああああっ!!?」
足が遅かったために出遅れたアミノサン。どうやらメリーさんに追い付かれたようだ。
そしてそんなアミノサンに気付いて振り返ってしまったアパポテトが絶叫する。
「1-2だ! 飛び込め!!」
僕らは即座に教室に飛び込む。
ふいに、視界に飛び込んだのは黒い人型。
いや、ソレを人型と呼ぶのは語弊があるだろう。
人型のシルエットに無数のたゆたう触手がうねる姿は、断じてメリーさんじゃない。
何だアレ、ヤバ過ぎだろ。気持悪っ。
「追ってくるか!?」
「いや、多分ここまでくれば大丈夫らしい」
「あ、見て二人とも、あそこに携帯電話置けってさ」
可愛らしい丸文字で私の携帯ここに返してね。とハート付きで書かれていた。
これ、もしかしてメリーさんの文字か?
「ここがチェックポイントか。確かチェックポイントは七不思議が一人いるんだよな。誰が……うわっ!?」
おい、驚き過ぎだダイスケ、正気度半分切ったぞお前。
「あはは、ダイスケ驚き過ぎ。何でそんな……うえぇ!?」
二人が絶句するなんてよっぽどだ。
僕は覚悟を決めてそこに向う。
机の群れに隠されて、血の海が広がっていた。
そこにうつぶせに倒れた女生徒が一人、いや、小学生じゃないな、高校生くらい?
というか、上半身しかない!? 下半身どこいったんだ!?
「これ、テケテケさんだよな?」
「死体の真似でもしてんのか?」
「恐らくだが、チェックポイントのハンコを押した時点で迫ってくるんだろうな」
「じゃあそれまでは安全ね。ここで次のポイント確認して一気に駆け抜けましょ」
「それがいいか」
僕等三人は一度ここで休息することに決めた。




