1044.秘密結社クモリエル攻略作戦8
「この卑怯者ぉーっ!!」
「まさかあんな罠にかかるとは……」
まさかの失態にブラッククラウド将軍も飽きれている。
マイネさん、せっかくカッコよく突撃したのに即行捕まるなんて……
間抜け以外の何物でもないぞ。
「さてヒロキ君、残念だが君の布石は失敗らしい」
「なるほど。でもブラッククラウドさんや、俺さ、マイネさんが布石だなんて一言も言ってねぇよな?」
「……何?」
ブラッククラウド将軍が怪訝な顔を向けた時だった。
マイネさんが開いたままだった入り口から、ムチが飛んできた。
マイネさんを拘束していた縄を引きちぎり、パンっと音を立ててベーヒアルの拘束まで引きちぎる。
「こういうことだブラッククラウド。久しいな」
「なん!? 馬鹿な!? 貴様等は外に居るはず!」
ゆっくりと部屋に入って来たのはカルカさん。
さらにすぅっと壁側から出現した祝さんにより捕まっていた格ゲー少女や豚のレバーの炒め物君、スレイさんの拘束が解かれる。
スレイさんは即座に怪人化して周囲の戦闘員に電撃浴びせ、格ゲー少女の回し蹴りが戦闘員たちを吹き飛ばす。
豚のレバーの炒め物君は……なんでそれ武器にしたの!? でぇぇいっと振り回しているのはどっかの工事用看板。
工事現場のオジサンがお辞儀している黄色い看板を振り回し、戦闘員たちを薙ぎ払い始めた。
意外と強い武器かもしれんな、アレ。
しゅぱっと舌が伸びてきて、俺の拘束もついに解かれる。
蛙娘さんナイス!
天井からくるりと落下して来た蛙娘さんが俺の真横に着地。
手を握って親指立てると、どういたしまして、と手を振って来た。
「うりゃーっ」
そしてブラッククラウド将軍に落下してくる茶釜が一つ。
超硬質の歩く要塞の一撃は軽々避けられるが、反撃の一撃が金属質の音を奏でる。
「く、なんだこの硬さは!?」
茶釜さんは危険と判断したらしく、ブラッククラウド将軍は彼女から距離を取る。
そこへ、マンホールを振りかぶったマイネさんが吶喊。
「ちぃっ!?」
「策士策に溺れるってねぇ! ブラッククラウド将軍、私が討つ!」
「貴様程度が図に乗るな!」
「私も忘れてないか?」
ブラッククラウド将軍がマイネさんの一撃をギリギリ剣で受け止めた瞬間、無防備の背中に襲い掛かる鞭。うっわ痛そう。
「ぐぬぅっ!? 正義の味方として卑怯だと思わんのか貴様等!?」
「おいおい、私は悪側の元首領だよ? 正義の道理を説かれてもね」
「卑怯? 貴方知らないのね。こういう言葉があるのよ、勝てば官軍負ければ賊軍ってね!」
マイネさん流の正論なんだろうけど、なんで彼女が告げると悪人が吐き散らした言葉にしか聞こえないんだろう?
卑怯だろうが勝てばいいのだ。という言葉が見え隠れしている。
というかもう隠れてすらいない気がしないでもない。
「掃討完了!」
「ぎゅいあ!」
おー、ベーヒアルが意外と活躍しとる。お前戦えたんだな。変な部屋に追い落とすだけじゃなかったんだ。
あのバックルーム送り、今回は使わねぇの?
「ヒロキさんこっち片付きました!」
「こちらも完了です!」
「うっし、ダーリンこっちもおっけーだ!」
「うぅらぁめぇしぃぃぃっ」
残るはシコメさんと戦っている戦闘員くらいか? アレもすでに鶴みたいに手を摘まんだ状態で相手を突っついているシコメさん優勢だから助っ人に行くほどでもないだろう。
となると、残るはブラッククラウド将軍だけか。
「形勢逆転だなブラッククラウド将軍」
「ふん、だが考えれば全員纏めて倒す機会がそちらからやってきたようなもの。むしろこちらとしてもありがたい。いでよ我が精鋭の怪人たち!!」
げっ、ここでさらに戦力投入かよ!?
しかもさっきまでの戦闘員じゃなく怪人が何十体も現れた。
「ちょっ!?」
マイネさんもカルカさんも、新たに現れた敵に妨害されてブラッククラウド将軍から遠ざけられる。
そして、ブラッククラウド将軍がゆっくりと、敗軍の将とは思えない程堂々として俺たちの前を歩きながら敵陣中央で俺たちに振り返る。
「こいつらとでも遊んでいるがいい。その間に地上部隊は壊滅だ!」
「あ、それについてもすでにチヨさんが地上出て彼らと合流済みだぜ? 証拠もばっちり、これから皆でクモリエル討伐開始ってところさ!」
「馬鹿な!? 私の電話にはそのような言葉は……」
自分でもレッドたちの動向を知るために通話状態にしていたようだ。
残念だがあんたの聞いてた話はレッドたちの演技だぜ。
実際に交渉を行っていたのはキカンダーさんたちさ。
先にジェイクが正攻法の場所からチヨさんのいる場所へと向かい、合流した後証拠を提出して一般社員に周知。変な動きした奴を片っ端から捕縛して貰い、ウェザーディバインサイトカンパニーの方もこちらの勝利になってんだよ。この時の為にあんたに秘密でスレイさんに電話して貰ったからな! 他の正義の味方を呼び込んであるんだよ! あんたも一度来たのに警戒すらしてなかったな。俺の家の施設には正義の味方たちが集まる場所があるんだよ!




