1042.秘密結社クモリエル攻略作戦6
【皆さんそのままで】
通話状態の電話から、快晴レッドの声が聞こえている。
やっぱり気になったので電話して見たら、丁度今から正面玄関に向かうところだってことで、どうせならリアルタイムで現状把握するかい? と通話状態のまま向こうの会話を聞けるようにしたのである。
【ええ。正義の味方カイセイジャーです。我々の元にタレコミがありまして、ここウェザーディバインサイトカンパニーにクモリエル戦闘員が出入りしている、と】
なるほど、直接ここがクモリエルの隠れ蓑だー。というのではなく善意の第三者、あるいはいたずら電話があったんだ。念のため調べさせてくれ。の体で行くようだ。
「んー、ちょっと正義の味方としてはモヤッとするわね」
「マイネさんみたいに確定して暴れた場合は犯罪者扱いで警察に逮捕されると思うんだ」
「正義の執行なんだから邪魔させるわけないじゃない」
「この世界だと警察倒すと特殊警察来るぞ。それでだめなら自衛隊で、アメリカ軍で、多国籍軍だったかな?」
「つまり多国籍軍撃破すればいいのね?」
「さすがにもっとヤバい軍も出てくると思うからやめときな。鞍馬天狗並みにヤバいの軍にもいると思うし」
「む、それは面倒ね」
面倒だからやらない、じゃないんだよ!? もうちょっと考えて動いてくれよ。俺巻き込まれるのやだぞ!
【いや、そうじゃないさ。俺たちは君たちを疑ってるわけじゃないし国を相手にするつもりもない。ただ善意の誰かが見たという者が本当なのか、嘘なのか、それを確かめたいだけなんだ。どうか確認だけさせてもらえないだろうか? 仕事の邪魔をするつもりはない、どうかな?】
相手に配慮しているように見せて実質確認させないと疑惑を強めるぞ、という強制捜査である。
相手もかなり渋っている様子だが、帰る気配のない正義の味方たちに、疑惑払拭のためにも見せた方がいいんじゃないですか、とおそらく一般就職者たちの後押しもあって正義の味方がしばし探索する許可をもぎ取れたようだ。
「あとはこっちと向こうの直通路を探し出すだけかな」
「その辺りはチヨだっけ? 影女が知ってるでしょ?」
「まぁそうなんだけど……」
問題は、彼女と合流できるかどうか。
それと懸念事項が一つある。
「ん? ヒロキ、腐臭がするわ。こっち」
「ちょ、待った待った。シコメさんストップ」
確かに気にはなるけど今回はそっちよりもクモリエル本部への道を探し出す方が先決だろ。そっち側だと商店街方面に逆戻りだよ。
「気になるわね……」
「でも、今向かうと本部侵入がかなり後になるぞマイネさん?」
「それでも、あんたんとこのテイムキャラが動いたのよ。何かあるに決まってるわ! よし、シコメ案内しなさい!」
「了解!」
シコメさんが死人なのに凄く元気にステップ踏みながら案内し始める。
えぇ、マジで行くの?
「お、おい、いいのか?」
「ブラックさん、マイネさんこうと決めたらやらかすまで直進するタイプなんで」
「やらかすの確定なのか!?」
「その直前に止めないと本当にヤバいんでついていくしかないんすよ」
「そ、そうか」
つうわけで、一緒に来たこと後悔しながら付いてきてください。
「格ゲー少女さん、豚のレバーの炒め物君とスレイさん連れてそっちの道向かってくれ」
「え、ここで別行動!?」
「向こうで証拠見つけたら正義の味方と合流でよろしく」
「了解。まぁなんとなくこうなるかなって思ってました。マイネさんだし」
格ゲー少女も結構な頻度でマイネさんと一緒のようで、扱い方とかやらかし方とかを学んでいるようだ。
とりあえずこれで、最悪の場合を回避できればいいが。
さぁて、俺の考えが間違いであればいいんだけどなぁ。一応、格ゲー少女に耳打ちしておいたことが上手く刺さればいいんだが。
「よいしょっと。ったくなんで俺がベーヒアル背負って行かねばならんのだ」
「ベーヒアルだけじゃ移動が遅いって言ったのヒロキじゃない。しっかり面倒見るのよ」
「へーい」
ベーヒアルを背負いながら暗雲ブラックとマイネさんの後ろを走る。
この通路って走ると凄く音が響くよね。
敵からしたらいつ来るかわかりやすくて待ち伏せしやすいと思うんだ。
なので格ゲー少女たちには出来るだけ音を殺して向かう様にとは告げてある。
それでも彼らが捕まってしまったりするのなら。間違いなく……
「ヒロキ、こっち!」
分かれ道を見つけた俺たちは左側に曲がって商店街方面へと戻る。
逆方向行けばこっちからでもクモリエル本社に向かえそうだな。
「ごご、がら! 臭う」
たまにしっかりと声でるけど基本濁った声になるシコメさん。
濁らない声凄く綺麗で可愛らしい声なんだけどねぇ。
っと、ここが腐臭の終着点……うわぁ……マジか。
その光景はあまりにも酷い光景だった。
おそらく、クモリエルに逆らった商店街の人たちだろう、死ぬことも赦されずそこに存在していた。
「こんな、非道な!」
「逆らう者に容赦はしない、って見せしめかな」
「燃やすわ。さすがに、これで生還は無理でしょ。だから。燃やすの。ヒロキ、後で合流するからあんたたちは先に向かって」
決意を胸に、マイネさんは一人残る。
あえて、そこにあった非道は彼女に任せよう。
ブラックとベーヒアル、シコメさんを引き連れて、俺はクモリエル本社へと向かうのだった。




