1040.秘密結社クモリエル攻略作戦4
掃除を終えると、なんか見違えたくらい立派な地蔵に変化した。
こりゃありがたみが天元突破だ。
見ろよおっちゃん。これが本来の地蔵様だぜ!
「あ、ああ……ひいぃっ!」
って、なんでだよ!?
地蔵の輝きを見た瞬間、まるで恐ろしい何かを見たかのように、怯えたおっさんが自分の店へと飛んで帰って行った。
変なオッサンだな。もしかして自分のやってることの罪に気付いて怖くなったとか? まさかなぁ。
商店街の奴全員やってんだから今更過ぎるだろ。
んじゃま。パンパンッとあれ? お地蔵さんって二礼二拍手一礼でいいんだっけ?
ま、いいか、神様相手のお参りだし問題あるまい。
稲荷さんにそのうち聞いてみるか、いや、あいつ神様だから仏相手の参り方とか知らないかもしれんな。
「お、ダーリンここで稲荷寿司なのか?」
「いや、おはぎかなとは思ったんだけどさ、在庫がなかったんだよな。稲荷寿司は稲荷さん買収用にストックあるんだけど」
「そこらで買って来たらいいのでは?」
「なんだスレイさん気付いてなかったのか? この商店街、飲食物関連売ってる場所一つもねぇぞ」
「……え?」
ありゃ、気付いてなかったのか。
おそらく食事関連は買いに出る必要性がないんだろう。
多分クモリエル側からの配給があるんだと思う。
だから商店街には肉屋もなけりゃ魚屋、八百屋もありはしない。
文房具屋とか仏具屋とかはあるんだけどな。
ま、俺にゃどうでもいい話だ。
それじゃ……ん?
不意に、視界がおかしくなった。
いや、くねくねさん見ておかしくなってるからおかしくなってる状態でおかしくなったはおかしい話だがってなんかおかしいがゲシュタルト崩壊し始めてないか?
じゃなくて、えっと、なんか、視界が、砂嵐?
もしかしてまた何か巻き込まれた感じか!? と驚いた俺だったが、視界はすぐにチャンネルが合うように砂嵐が消え去った。
いや、消え去ったのは良いけど、どこよここ?
意味不明な場所に居るんだけど!? しかも俺一人!?
霧立ち込める不思議な場所だ。
足元には水。音は一切存在しない。
どこまでも無音の静寂な世界。
ふと気づけば、足元には蓮の花。
インド系イベント?
いや、ほら、インドの神様とかって蓮神聖なものだって話じゃん。
「失礼。嬉しかったのでつい呼んでしまいました」
「ん? おお!? お地蔵様!?」
後光差す蓮の花の上に立つ肌色のお地蔵様がいらっしゃった。
想定外すぎて思わずその場に膝から座り、拝んでおく。
さすがに俺だって神聖な存在過ぎる相手には敬意を表すからね!
「今までは、老婆が一人、あの地蔵を掃除していました。しかしクモリエルの謀略により、彼女も老人ホームへ入ってしまい、ここにはもう、あの地蔵を掃除しようという者はいなくなっておりました」
そうなのか。もしかしたらもっと早くこの辺り来てたら、お参りするお婆さんと出会うフラグもあったのかもしれないな。
今だともう辿り着けない過去の話なんだろうけれど。
「彼女の願いは日々の生活が健やかである様に。老人ホームでは健やかに生きられるように救済をしておきました。貴方には……少々穢れすぎではありませんか? さすがに悪人の罪は贖いを持って雪がれるべきことかと思うのですが」
え、地蔵菩薩が引く程穢れてます、俺?
「まぁ、良いでしょう。貴方の思惑はどうあれ、結果を言えば救世の行動といえなくありません。クモリエルの楔から人々を解放してあげてください。貴方の慈悲を願います」
「クモリエル突破はやる予定だけど、上手く行きますかね?」
「さぁ、なんとも。さすがに私が手伝う訳にもいきませんのでね。私は全てを救うため、六道を旅せねばなりません。先ほどまで地獄を移動しておりましたので、これからは天国の救済です」
天国に救済必要な存在居るんだ。
っていうか、つまりここって天国!?
そして先ほどスレイさんが言ってた地獄に地蔵菩薩いるって話は事実だったのか。
あ、視界が砂嵐に、ちょ、待って、まだ……
「少しだけ、貴方に加護を。クモリエル関連に関してだけですが洗脳された者の洗脳を解く権能を……」
砂嵐が酷くなる。
先ほどまで聞こえていた地蔵菩薩の声も砂嵐に消えていく。
そして、砂嵐が収まった時には、先ほどまでいた地蔵様の前だった。
「ん? ヒロキどうした?」
「え、あ、おう、スレイさん、俺どれだけぼーっとしてた?」
「ん? ぼーっとしてたのか?」
俺の顔を見ていただろうスレイさんに聞いてみたのだが、今のは一瞬の出来事だったらしい。
何か権能とか言うの貰ったようだけど。使えるモノなんだろうか?
まぁここで貰えたってことはイベント用のスキルだと思うんだけど。




