103.肝試しイベント・とある少年、地獄へ
SIDE:???
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
「ひぃっぃぃぃぃっ」
「いやああああああああああああああああああああああああっ」
学園のそこかしこで無数の悲鳴が響き渡る。
僕らのパーティーもまた、その肝試し会場前にやって来ていた。
噂が噂を呼んだようで、この普通小学校の肝試しイベントには長い行列が出来ていた。
皆恐怖体験だっていうのに大盛況である。
「ひえぇ、大丈夫かな?」
「はは、ヒナギは恐がりだもんな」
「何よダイスケだって震えてんじゃん」
「キョウカはガサツ過ぎんだよ、あの阿鼻叫喚の地獄に今から行くんだぜ?」
「あ、あああ、アミノサン、僕から離れないように、ね?」
「アパポテト近づかないで、キモい」
僕らのパーティーは六人パーティー。皆同じクラスだったからってことで良く行動することになったメンバーだ。
男性アバターは僕ことタツキ、大柄な体格のダイスケ、目隠れ系華奢少年アパポテト。
女性アバターは大和撫子なヒナギ、赤髪ポニテの強気なキョウカ、みつあみ眼鏡で大人しそうな毒舌娘アミノサンの六人がワイワイしながらいろんな所を探索しているエンジョイパーティー勢である。
今回はダイスケとキョウカがイベントに付いて話してる間にどっちが恐がりかって話になってヒートアップしたダイスケがイベント参加を宣言して、なんやかやあったことで皆で向う事になったのが今の状況である。
掲示板見てみたけど、正気度失った人たちが早速小学校の感想言い合ってる。
御蔭でどんな恐ろしい事が待ってるかはなんとなく理解したけど、これ、全てのチェックポイント回れるんだろうか?
「はい、次のチームどうぞ」
校門前に受付、と書かれた場所で行列整理しているのはここの生徒でNPCの朱莉という女の子だ。
それと、友達ということで緑香とか燦華とか呉弟栖、嗣朗という男女の小学生たちが案内や説明をしてくれている。
僕らの番になったので最前列にやって来ると、朱莉が説明を始めた。
今回のイベントには正気度というバーを皆が持っていて。学校内で受けた衝撃で心拍数の上昇があった場合にその驚きに合わせて数値が減っていくらしい。
そして数値の回復は無く、数値が全てなくなった時点で気絶。本日の挑戦が失敗となる。
逆に、数値が残ったままなら全ての学園で肝試し突破を一日で行うことだって可能なのだ。
まぁ実際無理なんだけど。
幽霊への攻撃はイベント中無効。幽霊からも攻撃は無く脅かすだけ。
だから皆すっごく気楽だった。子供だましで驚くか、といった具合である。
僕らは事前に渡された地図の進行ルート通りに通って全ての恐怖体験をしながらチェックポイントでハンコを押して行く。
七不思議の起こる場所で七つのハンコを押し終えればクリアとなる。
説明を終えて、最初のチェックポイントである校庭の一角へと向う。
丁度入口からは死角となっている場所だ。
「ま、待ってタツキ君、足速い」
「ヒナギが遅いだけだろ。タツキ、先行っとくぜ」
ダイスケとキョウカが競うように第一チェックポイントへと向かう。
ホントあいつ等は、確かにパーティーさえ組んでれば一人がハンコ押せば共有されるらしいけども。
あそこ、か?
チェックポイントのハンコ台側にちょこんとおすわり状態の犬が一匹。
ただ、その顔はどう見ても中年のおっさんだ。
「おう坊主ども、こいつらどうにかしてくれ、俺の姿見て散々コケ降ろしてきやがんだ」
しかもダイスケとキョウカにコケにされて困った顔している。
「ひえぇ、何アレぇ」
あ、ちょっと、ヒナギ正気度減ってるじゃないか!? アパポテトも!?
「じ、人面犬だ、こ、こえぇ」
「……登場の仕方にもうちょっと工夫した方がいいと思う。お座りは、ない」
アミノサンは辛辣だと思う。
まぁ、確かにおっさんの顔をした犬がハッハッと舌出しながらお座りして待ってたら気持悪いよな。でもそれだけだ。
唐突に出現した方が恐怖感は凄い。肝試しをするというのならそういう行動をした方が良いはずだ。
「おいおい、俺はただこの周辺を走り回ってるだけだぜ? こんなイベントなんぞやりたくねーんだ。やる気なんてねぇっつの、ほれ、さっさと中入って悲鳴上げちまいな」
と、器用に犬の手を使って煙草を咥え、ジッポで火を付ける人面犬。
ふぅっと一吸い終えて、煙を吹かす。
「正直、俺ァ、気が知れねぇよ、好き好んで恐怖に足突っ込もうなんて考えはよぉ」
な、なんか語りだしたぞ?
「ちょっと興味でた」
「いや、さっさと行こうよ。他の人待ってるし」
そうだな。人面犬はイベント終わってからまた会いに来よう。アミノサンが話聞きたいみたいだし。
ここに留まろうとするアミノサンをアパポテトが引き連れ僕らと合流する。さぁ、校内に、行こうか皆!




