1033.ノーデンス神殿
ノーデンス神殿の説明をしよう。
黒い石を積み上げて作られた窓のない建物だ。
年代を経たことで緑色となっている青銅製の両開きの戸は常に開かれており、光が漏れている。
建物の高い屋根の上には七体のナイトゴーントが並んでおり、建物の素材に擬態しているらしい。
当然、俺はこいつら全員打ち抜いておいた。
襲ってこられてもムカつくしな。先手必勝ナイトゴーント滅ぶべし。
ちなみにこういったノーデンス神殿は地下世界にはいくつもあるらしい。ここもその聖堂の一つで、部屋は一つしかないそうだ。
神殿の中には、えーっとなんだっけ、ヌグス=ユグさんとやらが一人で住んでいるらしい。
こいつはめっちゃ強い設定らしく神殿と自分を守れるだけの実力があるのだとか。
あまり喧嘩を売るメリットはなさそうだ。
ただ、問題が一つ。
ノーデンスの擬人化した姿が描かれるらしいんだが、その腕に三叉槍で翼ある蛸を串刺しにしてるらしい。そう、翼ある蛸。つまりクティーラさんを差す。
テイムした以上、俺たちとノーデンスは確実に敵対していると言っていいようだ。
「お、見ろヒロキ、旧神の印があるぞ」
「ノーデンスの奴だろニャルさん。自分ので上書きしときなよ」
「あ、それいいね。んじゃあちしの印をちょちょいっとなーっ」
と、印を変えた瞬間だった。
何もない空? から唐突な雷撃がニャルさんを襲った。
「みぎゃーっ!?」
「姉貴天罰受けてんじゃんざまぁーっ」
「おのれノーデンス! この恨みはらさでおくべきか!!」
死ぬほどの一撃じゃなかったようだ。
多分何してんだニャルラトホテプが! という怒りの一撃だった様子だが、ダメージだけで殺すほどの威力はなかったか、殺す気がなかったか。
「とりあえず入ろうぜ」
「旧神の印がある場合、敵対者を弾くらしいぞ」
「さっきのニャルさんみたいにか? でも普通に入れるぞ?」
「そりゃそうさ。上書きしてやったもんね!」
ああ、ニャルさんが上書きしたおかげで俺たち普通に入れるようになったのか。
さすがはニャルさん、よ、はいよる混沌!
「それヨイショしてる感じ全然ないんだけど!?」
「ニャルさんの凄さは分かってるって。はい、これいつも世話になってるプレゼント」
「お、おお!? な、なんだよヒロキぃ、あちしにまでそんなことして惚れさせる気かい、まったくもー、しょうがないなー。這い寄っちゃうぞまったくー」
「あ、これテインさんとマイノグーラさんにもお世話になってます」
「ほぅ、全員分買ったのか」
「ドリームランド産だからこっちでしか装備できんな。まぁいいか」
女性陣全員に配って行く。
ニャルさんがなんか凄い顔してるけど、どったの?
「純情をかえせー、ばかーっ」
えぇ、何怒ってるんだよニャルさん!?
あはは、ごめんごめんわざとだって。
「ふえぇー、マイノグーラぁ、純情汚されたぁー」
「はいはい、冒涜的な存在だからすでに穢れてんだろ。諦めろ」
「それもそうだった。穢れたあちしがデフォルトじゃん!」
なんだそのコント?
「あのー、結局あなた方は何をしに?」
当然、こんな賑やかに離しながらノーデンス神殿へと入って行けば、内部にいたお爺さんが困惑気味に尋ねてくる。
「あ、こんちゃっす。ヌグス=ユグさんで合ってます?」
「う、うむ、そうだが、貴方方は?」
「ただの観光っす。ドール見に来たんだけど、ナイトゴーントのクソ野郎共にテント代わりのUFOをナスの谷に落とされてさ、アレの上司であるノーデンスに苦情言いに来た」
「お、おぅ……」
ストレートに毒を吐かれたヌグス=ユグさんは気圧され気味に頷く。
「これがノーデンス神の神像?」
「そ、そうですが、あの、壊さないでいただけると……」
「えー、まぁいいか。ノーデンスさんよ、あんたんところのナイトゴーントどものせいで俺のUFOが一つ破壊されちまったよ。だからさぁ、ナイトゴーント駆逐しても問題ねぇよな? とりあえず何の返答もなければ遠慮なく駆逐する勢いで潰すことにするよ。んじゃ」
とりあえず祈り、というよりは確定事項の宣告だけを行い。俺は他のメンバーに場所を開ける。
「やっほー、ノーデンス見てるー、ニャルさんだよー。ちょっとサイン上書きしちゃったけど別にいいよねー」
「これノーデンスの奴見てんのか? しかし相変わらずしけた面してんな。お前んとこのナイトゴーント、ヤベェのに目付けられちまったから数日中に全滅すると思うが、あいつらの自業自得だ、新しい眷属作り出すこと考えとけや」
次々にノーデンス神像に一言告げていく外の神たち。
猫たちにまで俺の敵扱いはマズいぞ、とか言われるのどうなんだ?
まぁいいや、とりあえず全員挨拶終わった?
「挨拶っつーか宣戦布告だな。まぁノーデンスさんや。ヒロキの持ち物ぶっ壊した以上はナイトゴーント滅ぶ勢いで減らされるから、覚悟しといてくれ。いや、これ冗談とかじゃなく、あいつがやると言ったら間違いなくやるから」
「ヌグス=ユグさんは放置で良いよコトリさん。とりあえずトォーク山脈とあの回廊、それとこの周辺にコトリバコ設置していこう。呪い対象は夜鬼で」
「うふふ、旦那様に頼られちゃいました。私、全力で頑張りますね!」
「あ、これマジでヤバい奴だ……」
「地下世界自体がヤバいはずなのに、コトリさんが動くってだけで地下世界の方がヤバい状況に……」
「取りいだしたりますはコトリバコ。はい、はい、はいはいはい! さぁどんどん設置していきましょう。世界に呪いが蔓延しますよーに。呪ふふふふふ」
コトリさん、高揚しすぎて笑いがおかしくなってますよ?




