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1024.サユキさんの厄落とし6

 次にやって来たのは稲荷さんが紹介してくれたお寺である。

 ぽんぽこ寺だっけ? 狸関連なら茶釜さんも連れてくればよかったな。

 そのあたりの人選、幸運さんが選ばなかったってことはスキル貰ったりのイベントは起きないってことかな? まぁいない人のことを嘆いても意味はない。


「ここがその寺?」


「じゃの。狸共が腹鼓をいつもしとるはずなんじゃが……おらんの?」


 結構な山奥にぽつんと存在していたお寺である。

 ここにくるまで結構時間使ったからバイク神社で紹介された場所はまた明日だなぁ。あー、七不思議完全攻略はいつになるのやら。


「おーい、狸どもー?」


 深夜の寺を探索する俺たち、しかし寺の周囲は雑木林で鬱蒼としており、闇しかない。

 さらに寺の奥にはお墓の群れ。

 深夜だから地縛霊や浮遊霊、人魂などがふよふよしている。


「狸、居ませんね?」


「シャー?」


「じゅるー?」


 せっかく覚えたので狐の窓で周囲を見回してみるものの、狸らしき姿はない。

 あ、ちょっとそこの人魂さんこっち来ないで、一瞬なんかいた! とか思っちゃったじゃん。

 

「救世主様、あそこ浄化してきましょうか?」


「可哀想だからやめたげて。戦いに来たわけでもないんだから」


「とりあえず境内の中に誰かいませんかねぇ」


「ローリィさん神社じゃないからってやる気なくなってない?」


「そもそも最初からやる気ないですよ? 家でゆったりしてたいですし」


 なるほど、ヒキコさんとしては外に出られること自体が面倒だったか。

 まぁ神社巡りするほどスキル覚えるらしいから頑張って。

 コトリさんに無理矢理引きずられていくがいいさ。


「しかし狸のたの字も見当たらないな」


「境内にもおらへんでー」


 ふむ、一匹でもいればよかったけど一切いないとなると、さすがにイベント起きる状態にならんぞ。

 状況把握もできないし。


「稲荷さん、なんかいい方法ない?」


「そうは言われてものぅ」


「シマエさん、せっかくだしちょっと上空から狸っぽいの周辺にいないか探してくれる?」


「チュン」


 チュン!? スズメの鳴き真似っすか!?


「んー。ふーん。あーっ、みっけ」


 シマエさんを空に飛ばした後だった。

 目玉しゃぶりさんが周辺を見回していたのだが、何かを発見したようだ。


「何見つけた?」


「縁の下に一匹残ってるわ。私、目が良いのよ」


 ただ目玉しゃぶるだけの妖怪に目の良さ関係ないと思うんだけど。お、確かに狸が一匹いらっしゃる。

 しかも普通の狸じゃなくて信楽焼の狸の置物っぽい容姿の狸だ。

 ツチノコさんがするっと縁の下に入り込んで様子を見に向かってくれる。


「そういやこの寺、和尚さんもいねぇな」


「ぽんぽこ寺の和尚は狸じゃぞ。隠神刑部狸が和尚をやっとるんじゃ」


 たしか808匹の狸を従えてたんだっけ?


「シャーッ」


 っと、ごめんごめん。手伝うよツチノコさん。

 わざわざ咥えて引っ張って来てくれたようだ。

 私一人に仕事させんなっと、お怒りのツチノコさんに謝りながら助けた狸を外へと連れ出す。


 意識はないけど生きてるっぽいな。

 おーい、起きろー。

 ぺしぺしと頬を叩いてやると、そいつはようやく意識を覚醒させた。


「ウワーン……」


 うわん? まさかうわんとかいう妖怪って狸の鳴き声だったのか!?


「どしたんヒロキさん? そんな戦慄したような顔して?」


「……なんでもないっす」


 ここはゲーム。そうゲームだから現実の実際の話とは違うんだ。ここで得た知識なんてほとんど意味はないはずだ。うん。気付いちゃったかもしれない都市伝説とか妖怪の実際の姿とかは多分運営の想像でしかないんだ。


「ここ、は?」


 狸、普通にしゃべるんだな。


「うむ、ぽんぽこ寺じゃ。主は縁の下で気絶しておったんじゃが、何があったか分かるかの?」


「こ、これは稲荷殿! 何があったか、それは……」


 慌てて体を起こした狸は正座を始めて稲荷さんに向き直る。

 

「寺に妖怪が出ました。仲間たちを襲って食らい、夜な夜な一匹づつ殺されて行ったのです。最後まで隠神刑部様が残っていたはずですが……私は怖くなって逃げてしまい……」


「そして誰もいなくなった、と。ふむ……聞いた感じじゃとガゴゼじゃな」


「元興寺だったか、だっけ? 寺の名前の妖怪」


「もともとは元興寺に出てくる霊、と呼ばれておったんじゃ。小僧どもを喰らう霊じゃったが、道場法師が髪を引きちぎってな。道場の奴は知っておるか? 雷神の力を持つ子供じゃったんじゃ。生まれた時に頭には蛇が巻きつき、頭と尾を後頭部に垂らしているなどという姿の赤子だったそうじゃが」


 そんな奇怪な赤ん坊は知りませんが?


「アレかアレに居た妖怪か……ともかくまだ狸を求めておるならこの者を求めてくるやもな」


「霊体だろ? だったらもうルルルルーアにお任せで良いんじゃね? 瞬殺しちゃっていいよ」


「はい、悪霊なら天に滅っさねば!」


 狸見つけて情報手に入れたし、そろそろ怪異とやらが来る頃か?

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隠神刑部狸ときてガゴゼと聞くとぬらり◯ょんの孫を連想してしまう
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