1022.サユキさんの厄落とし4
次にやって来たのは稲荷さんがおすすめして来た神社である。
こっちはどんな神様祀ってんだ?
雰囲気は……田舎小学校近くの神社だからか、周囲は田んぼ、ひっそりとたたずむ一般的な神社といったところか。苔むした石畳を歩きながら鳥居をくぐり、神社本殿までやって来る。
「ここは何の神社だ?」
「うむ、ここにあることは知っとるんじゃが、何がおるかわからんのでな、一度来てみたかった神社じゃ」
厄落とし関係ねぇ!?
ま、まぁ稲荷さんが来たかった神社ってことだし、神様祀ってる場所なんだろ。社は……社が、ねぇ!?
え、何もねぇんだけど!? 鳥居潜ったら空地とか、まさかまた変な場所に放り込まれた!?
一時間以内に脱出する系か!?
「あー、安心せいヒロキ。ここに社はないんじゃ。何しろ、空気を祀っておる神社じゃからな」
空気? 空気って、このそこら中にある酸素とか窒素とかの混合物?
「そうじゃ。なんでも現実でも祀られとる神社らしいが近代的な神社らしくての。御利益があるのかどうか見たかったんじゃ。天空神とかがおるんじゃろうか?」
その確認の為にここに来たんかい。
えーっと、神的な存在も巫女さん的なもんもいないな。
皆、どうよ?
「どやろか? ウチは見えへんかな。ってか今気づいたんやけど」
なんだいサユキさん?
「今回プレイヤーさん誰も来とらんな」
そういえば。UFO前で基本待ってるはずなんだけど今日は居なかったな。
ま、問題はないか。
皆忙しかったんだろ。
「誰かなんか気配感じたりしてねぇ?」
「シャー」
「ジュルル?」
「残念ながら、ここから神聖な感じはしませんね」
「でも呪詛系も感じないわね。目玉も警戒してないみたいだし」
口の中で転がしてる目玉が警戒したりするのか、それはそれで凄い能力だな。
「ふーむ。なんぞおるかと思ったんじゃがのぅ」
「うーん、何もないかな。魔力も感じないわ」
全員何も感じないかぁ。
あ、そうだ。ダラさんがやってた狐の窓やってみっか。
えーっとけしょうのものましょうのものか正体現せー、だったかな?
結構難しいけど、ここから覗けばいいんだよな。えーっと……
そこらじゅうを見ていくと、目の前の広場、その中央に風が渦巻いている。薄い緑色に見えるそれは、女性の形をとっているように見えた。
「いるーっ!?」
え、マジでいるんですけど。
狐の窓で覗かないといるのがわからないとか、なんですかこれぇ。
「失礼、俺の眼の前にいる風っぽいお姉さん。お話しは可能です?」
―― よくわかったね、せっかく隠れてたのに――
そんな声が念話で聞こえた、次の瞬間。
俺たちの前に風が巻き起こり、ソレは現れた。
―― 我は風の精霊シルフ、よくぞ私を見つけたわ人間さん ――
まさかの四大精霊がここにいた。
いや、確かに空祀ってるなら風の精霊が居てもおかしかないが……
せっかくなので他の精霊たちに連絡してみる。
俺の腰にあるポーションに出現したディーネさんがポーション瓶から出現。
時を同じく地面から現れるノームさん。
―― あら? ――
「おー、ほんとにシルフがいる!」
「おーーーーーひーーーーーーさーーーーー」
ノームさん、のんびりなのに来るのはすっげぇ早かったな。
もしかして出待ちしてた?
それとも大地の中だから一瞬で来れるだけか?
―― なんと、他の精霊もいたのね ――
それからしばし、精霊たちによるお話合いが始まった。
蚊帳の外なので俺たちは何もない場所でしばし時間を潰す。
しかし、神社なのに神じゃなく精霊かぁ。
「さすがに空気の神なんぞおらんかったんかな?」
「いやいや、でも大気とかならワンジナとか天空神とかシューとかいるんじゃね?」
「ここにはおらんようじゃな」
少しの時間ゆったり過ごすと、風の精霊シルフがテイムされたことを知らされた。
俺なんもしてないのに精霊同士の話でテイムされちまってるし。いいんだろうか?
「とりあえずここはもう何もないだろうし、次行こうか?」
「次? 儂の勧めたぽんぽこ寺か?」
「猿田彦さんから天狗の神社紹介されたんだ。ここもかなり変わってる神社らしいけど、お祓いできるんんだろうか? まぁ行くだけ行ってみよう。寺はその後な」
「いつの間に……」
―― あ、そうそう。これあげるわマスターさん ――
俺と稲荷さんが次の場所を相談していると、シルフさんが近寄ってきて透明なナニカを手渡してきた。
見得ないながら正方形と思しき何かが俺の両手に乗せられる。
なんぞこれ?
―― プネウマだって。少し前までここにいた神様が誰も来ないから帰るっていなくなる際、誰か来たら渡してほしいっていわれてたの ――
あ、神様一応居たんだ。あまりに人が来ないから神社捨ててどっか行っちまったようだけど。
せっかくだし板にここの情報流しておくか。
そのうち誰かがちらほらと探索なされることだろう。




